
野菜摂取による心臓保護効果はそれほど高くない?
野菜をたくさん食べることは心臓の健康に良いと考えられている。
しかし、さまざまな交絡因子で調整すると、野菜摂取量が多いことによる心臓の保護効果はそれほど高くないことを示すデータが報告された。
特に、生野菜ではなく調理済みの野菜では、摂取量が多いことによる健康上のメリットはごくわずかなものである可能性があるという。英オックスフォード大学のQi Feng氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Nutrition」に2月21日掲載された。
Feng氏らの報告は、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」を用いた研究の結果だ。
解析対象は、2006~2010年にUKバイオバンクに登録された40~69歳の一般住民50万2,494人から、心血管疾患既往者、研究参加の同意を撤回した人、解析に必要なデータが欠落している人などを除外した39万9,586人。
平均年齢は56.1±8.1歳、女性が55.4%、白人90.9%、BMI27.3±4.7であり、自己申告による糖尿病有病率が4.7%で、41.3%は高レベルの身体活動を行っていた。
研究参加登録時に行った食事調査から把握した1日の野菜摂取量は、生野菜が大さじ換算で2.3±2.2杯、調理済み野菜が2.8±2.2杯であり、総野菜摂取量は5.0±3.4杯だった。
総野菜摂取量が多い人には女性が多く、BMIが低く、喫煙者が少なく、身体活動量が多く、教育歴が長く、居住地区の平均所得が高い傾向があった。
中央値12.1年の追跡期間中に、心血管イベントが1万8,052人に発生(心筋梗塞1万1,317件、脳卒中6,969件)。また、同12.0年の追跡で1万3,398人が死亡し、そのうち2,589人が心血管死だった。
参加登録時の野菜摂取量で全体を4群に分けて心血管イベントや全死亡のリスクを比較すると、野菜摂取量の最も多い群は最も少ない群よりも、リスクが有意に低いことが確認された。
例えば、総野菜摂取量が1日8杯以上の群は1杯以下の群に比べて、心筋梗塞はハザード比(HR)0.71(95%信頼区間0.65~0.78)、脳卒中はHR0.84(同0.74~0.95)、心血管死はHR0.63(0.55~0.73)、全死亡はHR0.61(0.57~0.65)だった。
また、生野菜の摂取量が1日5杯以上の群は1杯未満の群に比べて、心筋梗塞はHR0.78(0.72~0.84)、脳卒中はHR0.85(0.77~0.94)、心血管死はHR0.74(0.65~0.84)、全死亡はHR0.69(0.65~0.73)だった。
調理済み野菜の摂取量についても、脳卒中リスクとの関連が非有意であったことを除き、その他のイベントリスクは有意に低かった。
ところが、イベントリスクに影響を及ぼす可能性のある交絡因子を調整すると、野菜摂取量の多寡によるリスク差は大きく低下することが明らかになった。
調整した交絡因子とは、年齢、性別、民族、地域、BMI、喫煙・飲酒・身体活動量、果物・赤肉・加工肉・魚介類の摂取量、サプリメントの使用、教育歴、タウンゼント剥奪指数、高血圧・糖尿病の既往、降圧薬・スタチン・インスリンの処方、アスピリン・イブプロフェンの使用などだ。
具体的に、交絡因子調整後のハザード比を見ると、総野菜摂取量との関連では、心筋梗塞はHR0.87(0.79~0.95)、脳卒中はHR1.01(0.89~1.15)、心血管死はHR0.83(0.71~0.96)、全死亡はHR0.80(0.74~0.85)であり、交絡因子調整前と比べて野菜摂取量が多いことによるリスク低下率は、8~9割も減った。
また、脳卒中については有意性が消失した。生野菜の摂取量との関連も結果はほぼ同様だった。さらに、調理済み野菜の摂取量については、全死亡を除く全てのイベントリスクとの関連が非有意となった。
Feng氏は、「野菜摂取による心血管イベントに対する見かけ上の保護効果は、社会経済的状況とライフスタイルの違いなどによって、そのほとんどを説明可能であることが示された」と述べている。
一方、この発表を巡っては、栄養の専門家から「この結果は、『野菜を食べることをやめるべき』という意味ではない」、「野菜摂取が心血管疾患リスク因子を改善することに関しては豊富なエビデンスがある」、「観察研究では因果関係を明らかにすることはできない」、「本研究は交絡因子を過剰に調整している可能性がある」といった声が相次ぎ、早急な判断に注意喚起がなされている。
また、単一の食品や栄養素ばかりに注意を向けるのではなく、食生活全体のバランスの重要性を、複数の専門家が指摘している。(HealthDay News 2022年2月21日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2022.831470/full
構成/DIME編集部
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