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「スポーツを人々の共有の場に」Bリーグ滋賀レイクスターズ・上原仁会長が目指すスポーツビジネスの未来

2022.03.03

スポーツを人々の共有の場に!滋賀レイクスターズ・上原仁会長インタビュー

雄大な琵琶湖の前で笑顔を見せるB1・滋賀レイクスターズの上原仁会長(マイネット提供) 

コロナの影響を受けるB1・滋賀をけん引する敏腕経営者

 2022年に入るや否や、新型コロナのオミクロン株感染が拡大。2年ぶりに通常化しようとしていたスポーツ界が打撃を受けている。

 2月18日に開幕した30年目のJリーグは観客上限なしの開催を目指していたが、まんえん延防止等重点措置が出された地域は上限2万人での実施を余儀なくされている。好調な滑り出しを見せる横浜F・マリノスも7万人収容の本拠地・日産スタジアムに2万人弱の観客しか入れられず、やはり閑散とした印象が拭えなかった。

 一方、Bリーグはコロナ陽性者の出たクラブの試合が次々とストップ。B1・B2合計で30試合以上が中止になっている。延期試合の日程を組んで消化するとしているが、今後の状況は予断を許さない。

「我々も3試合が消化できず、3~5月に新たな試合日程を入れることになっていますが、過密日程になる分、選手のケガのリスクが心配です。経営面を考えても、昨年1011月にかけてようやくバスケ熱が高まり、今年に期待していた分、冷や水をかけられた恰好です。特に影響が大きそうなのがパートナー(スポンサー)営業。先行きはやや不透明です」とB1・滋賀レイクスターズの上原仁会長はやや神妙な面持ちで話していた。

2024年スタートの新B1参戦を目指している同クラブは昨年9月に上原氏が新たに会長に就任。現場・経営両面からのテコ入れを図っている真っ只中だ。

6代前からの滋賀県人で地元愛を強く押し出す

 1974年生まれの同氏は地元・滋賀県出身。新進気鋭のIT企業・マイネットを10年足らずで東証1部上場へ引き上げた卓越した経営手腕を持つ。その彼に滋賀の釜渕俊彦社長が「レイクスに力を貸していただけないか」と打診したことが、クラブに関わるきっかけだった。

「私は少し前まで沖縄に住んでいたんですが、B1・琉球ゴールデンキングスの試合に招待され、そこでレイクスの釜渕俊彦社長と会う機会を持ちました。新B1参入を目指しているものの、売上12億、観客動員4000人、5000人収容のアリーナという高いハードルをクリアしなければならないので、その手助けをしてほしいということだったんです。

 自分は6代前から滋賀県の人間で地元愛がメチャメチャ強い。滋賀県人は京都、大阪、兵庫という大都市圏が同じ関西にあるため、メンタル的に少し縮こまりがち。でも『滋賀の琵琶湖は日本一。胸を張っていきましょう』と地元政財界の方々に言い続けたところ、『上原さんに任せます』と認めていただけた。株式の一括譲渡を受け、経営権を持って取り組むことになりました」と彼は経緯を語る。

滋賀の選手を労う上原氏(マイネット提供)

 とはいえ、少年時代から生粋の剣道少年だった上原氏はバスケットボールには全くの無縁。神戸大学卒業後に入社したのもNTTで、スポーツと深く関わったわけではない。ただ、スポーツに通じる「人の繋がり」を大事に考え、「人と人とが繋がり合うための事業を作りたい」と熱望していたのは事実。その信念を持って8年間、同社で力を蓄え、2006年にマイネットを起業するに至ったという。

 2000年代後半はネット化が急速に進んでいた時代。マイネットはまずニュース・ジャーナリズム業界に着目。ニュースサイトの運営に携わった。その後、飲食、ゲームへとターゲットが移行し、201819年頃に「次なる成長の柱」としてスポーツ業界に目を向ける。同時期のJ2・FC琉球との関係が1つの布石になった。

J2・FC琉球のかかわりからスポーツビジネスの世界へ

「当時の自分はFC琉球の熱狂的サポーターで、ホームゲームもアウェイゲームも日本中飛び回ってゴール裏で声を上げていた。それくらい情熱を傾けていたので、クラブへの関与は非常にポジティブな話でした。2021年にはユニフォームスポンサーになり、物販やファンクラブ事業も手掛けるようになった。我々のノウハウを駆使して客層を分析し、セグメントごとに区分けして、それぞれのニーズに合った商品提供を行うなどの工夫を凝らしたところ、2021年は物販売り上げが大幅に伸びた。スポーツビジネスの大いなるポテンシャルを感じました」と上原氏は目を輝かせる。

 この成功体験を踏まえ、B1・滋賀の経営に本格的に乗り出したわけだが、2020年の同クラブの売上は5億3000万円。B1トップの千葉ジェッツが20億円程度という数字を考えると、大きな差があると言わざるを得ない。現状を認識しつつ、上原氏は「3年間で売上12億円に引き上げる」という大目標を設定。滋賀県民・パートナー・ブースター(熱心なファン)が三位一体となってチーム発展に尽力する体制を構築していく構えだ。

デジタルに精通する有能な人材を積極採用

「コロナ禍の今、パートナー収入向上は最重要命題です。テコ入れを図るため、デジタル力に長けた有能な人材を7人増強しました。彼らはマイネットや電通、リクルート、富士通などでデジタルの職務経験を積み重ねてきた精鋭たちで、採用は公式HPやツイッターの募集、エージェントの紹介など多岐にわたっています。今後もさらに5人程度は人員を増やす予定。『自分もチャンスがあれば』と考えている人はぜひ関心を持ってほしいと思います」

 上原氏は前向きに話すが、彼らが求めるレベルは非常に高い。というのも、インターネットを使ったデータ集積、数値の分析や合理的判断、戦略化という「PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクル」をごく普通にこなせる人材でなければ、この仕事は務まらないからだ。ヤフーや楽天、サイバーエージェント、ミクシィなどのIT企業経験者は有利と言っていいだろう。

「例えば、SDGsの一環として小学校にボールを寄贈するプロジェクトをパートナー企業と一緒に進めていくとします。協賛価格は30万円で年間6000万円を目標に据えるとしたら、200社との新規契約を取り付けなければいけない。法人営業の成約率は訪問の3分の1程度なので、600社に訪問する必要があります。さらに訪問アポイントの成功率は5分の1ですから、合計3000社にコールしないといけない。それを3人で3カ月かけてやるとしたら、1日15件の電話が必須になる。こういった数字を瞬時に弾き出し、アポイントのリストアップを進めるといったアプローチをIT企業の人間は日常的にやっているので、活躍の場が変わったとしても業務をスムーズに進められるんです。

 これまでのスポーツ業界はデータを駆使した営業やチーム強化というのが少なく、センスのある敏腕経営者が取り仕切って成功を収めるケースが多かったように思えます。ですが、PDCAサイクルさえ確立できれば、敏腕経営者がいなくても、誰でもそのノウハウを共有できる。そこがすごく大きいんです」

滋賀の話をする上原氏は希望に満ち溢れている(マイネット提供)

上原氏の説明は非常にクリアだ。確かにデジタル人材を有効活用した営業というのは、Jリーグなどでも遅れを取っている部分だ。元選手が引退後、クラブスタッフに転身したものの、パソコン操作がまともにできず、ワードやエクセルを使えずに四苦八苦する例も少なくない。とはいえ、クラブも一般企業と同じ利益追求型の法人である。ならば、有能な人材を集めて、プロフェッショナル集団としてやっていくことは肝心だ。滋賀の取り組みは大いに参考になるのではないか。 

スポーツ業界全体のステイタス向上に尽力

「しかしながら、スポーツ業界で働く人材の平均年収が高いと言える状況ではありません。金融やIT企業の社員に比べると3割ほど低いですし、『好きだから安くても頑張れる』と考えてボランティア的に飛び込む人が多いようにも感じます。私はそこも変えたい。デジタルの力でスポーツの価値を高め、収益率も引き上げ、働く人の待遇も上がるようなステイタスの高い業界にできるように、マイネットで蓄積してきたノウハウを最大限還元していきたいですね」(上原氏)

 ただ、同じBリーグの世界でも、千葉ジェッツや川崎ブレイブサンダーズのような強者がある一方で、発展途上のクラブもある。2021年に発足したB3・アルティーリ千葉のように、新進気鋭のIT企業・アトラエの全面支援を受けて新B1入りを目論んでいるところもある。滋賀にとってライバルは少なくないが、彼らには「日本一の琵琶湖のある滋賀県唯一のプロスポーツクラブ」という絶対的な価値がある。そこを大事にしつつ、前進し続けていくことが肝要だと上原氏は考える。

「レイクスは滋賀のオンリーワン。県や市と組んでさまざまな取り組みができると思います。全県の小学校にレイクス印のバスケットボールを配布しているのもその一例でしょう。学校でそのボールを使った子供たちは自然とレイクスに親近感を持ち、クラブの支援者になる可能性が高まります。そうやって地元に貢献し、地域活性化も促していければ、滋賀県人である私自身も本当に嬉しい。強い地元愛を持って、クラブの発展に取り組んでいきます」

 地域愛が非常に強く、人間味溢れる人柄の上原氏。こういう人物だからこそ、地元関係者やブースターに快く受け入れられたのだろう。人々の信頼を力にして、新規参入組の敏腕経営者は今後、どのような斬新な取り組みを見せるのか。滋賀と上原氏の今後に期待しつつ、温かい目で見守りたい。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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