
■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!
職人仕様の機能性とタフさ、そして手に取りやすい価格でキャンパーを虜にしているワークマン。
これまではウエアとシューズ、グローブがその話題の中心だったが、2022年2月22日正午、ついにオリジナルのキャンプギアの発売がはじまった。
当日、メディアやインフルエンサーを集めた製品発表会が行われたのだが、そのラインナップはテント、タープからクッカー、寝袋、ライト、焚き火アイテムまでなんと130アイテム。初日から、ほぼワークマン製品だけでキャンプができるという総合キャンプメーカーとなったのだ。
ワークマンといえば、各メーカーの値上げが発表されているなかで「価格据え置き」を断言したことで衝撃を与えたわけだが、この大英断とも言える価格据え置きの理由がキャンプギア発進だという。
たとえば同じテント50張でも、10張×5種類を製造するよりも、50張すべて同じ素材で製造・販売するほうが安くなるのはご存じの通り。
開発費にせよ仕入れ価格にせよ、同じ素材を多く使えば使うほどコストを抑えられるというわけで、ワークマンではウエアの機能性素材をテントやタープなどにも採用。テントやタープのように大きな幕モノはジャケットの数着分に相当するため、価格据え置きが実現したのだという。
防虫、防融といったウエアの機能性素材をそのままキャンプギアに流用できる。これがワークマンの強さだ。
虫を寄せ付けない成分を生地に浸透させたメッシュ素材DIAGUARDと高はっ水のDIAMAGICDIRECTを用いた4人用テント「ワイドミシックドームテントAG」(1万7800円)。設営時のサイズは271×272×H171cm。グラスファイバー製フレームでコストを抑えることで、ライバルブランドでも人気の防虫メッシュ搭載を搭載してこの価格はスゴイ。
スリーブ構造のインナーテントは全高も余裕があり家族3〜4人でゆったり過ごせる。前後出入り口に大型メッシュを搭載することで通気性を確保しているものの、気になるのはインナー上部に開閉可能の大型メッシュが搭載されているのにフライシートにはベンチレーターがないという点。春先からのキャンプを見据えて開発したというが、前後入り口を閉じた状態で湿気や熱をコントロールできるかどうかがやや不安だ。
「ミシックツーリングテントAG」(9800円)は同じく防虫メッシュ搭載のソロテント。両サイドにはちょっと懐かしい吹き流しタイプのベンチレーターを搭載している。
出入り口は前のみで、後部は三角メッシュ窓で通気性を確保する。設営サイズは210×130×H116cm。収納サイズはφ16×42cmとバイクの荷台に載せやすい大きさにおさめているのはさすがだ。
フレームはハブによって前後が二股になっているので、設営も簡単。構造上どうしても頭上が狭くなるので、滞在型というよりはあちこちを転々とするライダー向きと言える。
ちなみに、テントの中に入っているのはダウンと吸湿発熱機能を持つ化繊中綿のハイブリッド寝袋「フュージョンダウンシュラフ」(7800円)。最強の防寒ダウンに使われた素材をそのまま寝袋に使われている。
「ミシックペンタゴンタープFT」(9800円)には、焚き火の火の粉が付着しても穴があきにくい防融加工を施したDIAFLAMETECTを採用している。サイズは375×382cm。スチールポール2本とスチールペグ付きで重量3.1kg。ポリエステルに加工を施しているので、燃えにくく焚き火に強いとされるコットンやTC製タープよりも軽快に扱える。
多機能ナイフは切れ味に注目
職人のためのワークマンだから、刃物は手に取りやすい価格であっても切れ味は優秀だ。
10cmのハンドルに14もの機能を詰め込んだ「ミニ14WAYツール」(780円)。鋸、ハサミ、うろこ取りなどワクワクする機能がこれだけ入って1000円以下に抑えているのがスゴイ。
その場で説明してくれた担当者によると「すべての機能を高度に追求するのではなく、少なくともナイフだけは切れ味を重視」することで価格を抑えたそう。試しにナイフブレードでトマトをカットしたところきれいにスライスできた。先端がやや丸いので、不意に刃の先に肌が触れても傷つきにくい。
「TANOSHIBI 焚き火鋸」は125mm(1900円)と180mm(2480円)の2種類。ほかに刃を繰り出して使える「ハイブリッドソー」(980円)、「TANOSHIBI 軽量ハンドアッキス」(1780円)もある。
鋸はシャークソーでおなじみの新潟・高儀製の刃を搭載。「TANOSHIBI 焚き火鋸」はカーブソーでグイグイ刃が食い込む。「ハイブリッドソー」もフッ素コート刃+上目が付いていて小刀のように繊維を断ちきるのはさすが。
販売はWEB注文で店舗受け取り
ワークマンのキャンプギアは通販ではなく、WEBで注文して店舗で受け取る方式だ。全国に店舗があるワークマンなので店頭販売や通販でもいいように思うが、キャンプギアの陳列には場所をとるし各店舗での在庫管理が大変だ。
そこで関東・関西の2拠点に絞ることでその不安を解消したという。
調査によるとワークマン2〜3店舗巡るユーザーが多いこと、そして都市部への出店も予定されていることからこのスタイルに踏み切ったそう。輸送費を抑えられるので、これも価格に反映できるというわけだ。
ワークマンのキャンプギアは、基本的にアンバサダーといわれる年間50回以上キャンプを楽しんでいる人たちの提案を丸呑みした設計で、ユーザーがほしい機能が詰まっている。
一方、アウトドアメーカーは長年に渡って培ってきた技術とアウトドア専門メーカーならではの経験と知識がある。ユーザーからおもしろいアイデアが届いても「こういう環境になるとこの機能は危険だ」「万一、こういう使い方をされると安全を保障できない」というデータがあるためなかなか反映しづらいという面がある。
ソロ用テント4900円、寝袋1500円、マット1900円、テーブル980円、ローチェア1500円、クッカー780円、カトラリー399円、ランタン780円、焚き火台2400円で約1万5000円。ユーザー目線の機能が詰まったワークマンのキャンプギアは、キャンプをはじめたい人が手に取り、キャンプの楽しさに触れるきっかけ作りに最適だ。
キャンプを楽しんでいる内に通気性や耐久性、軽さ、重厚感など、自分なりのこだわりが生まれれば専門メーカーのギアを検討すればいいし、数年後にはワークマン製のこだわりギアが登場するかもしれない。
春はすぐそこ。やってみたいけれども続くかどうかわからない人や、価格面でキャンプ道具購入に二の足を踏んでいた人は検討してみては。
【問】ワークマン
取材・文/大森弘恵