
コロナ禍で非対面営業を余儀なくされている中、営業DXが加速した。一方で、各種ツールを導入したものの、思ったように成果が出ていないというケースも多発しているという。
この問題を取り上げるソフトブレーン株式会社は、先日開催した企業向けWebセミナー「これまでのやり方は通用しない!~withコロナ時代の生産性向上の法則とは」の中で、「営業DXのツールは導入しても成果が出ない」問題の原因と対策を示した。本記事では、その中から営業マンのヒントとなる情報を紹介する。
「営業DXツールを導入するも成果が出ず」約40%
コロナ禍、少子高齢化、労働人口減、「25年の崖」など、問題が山積みの中、アフターコロナ・ウィズコロナ時代の営業活動として営業DXが欠かせないことは、誰もが実感している。しかし、成果が出ていないのが現状だという。
ソフトブレーン株式会社が、2022年1月に営業 DXツールの導入を始めた企業に対して、ツールの導入実態や生産性向上の成果についてアンケートを実施したところ、約40%の企業が「総合的にみると生産性が下がった・変化なし」という結果となった。
そもそも日本の営業DXの進度は鈍化しており、問題視されている。
IT活用はあくまで手段!必要なのは「ゴール」と「戦略」
では、日本企業はどうすれば営業DXが促進するのか。セミナーに登壇した本社営業本部 営業推進室長 川上大樹氏は、次のように強調する。
多くの場合、営業におけるDXは「目的」と勘違いされがちだが、IT活用などはあくまで経営戦略達成のための「実行手段」である。
よって、「営業DX=営業変革」をしたいならば
・どんな変革をもたらしたいか?(ゴール)
・そのために何を行うのか?(戦略)
これらが決まらなければ、適切な手段を選択することはできない。
営業DXに欠かせない目標設定~重要な定量指標KGI・KSF・KPIで可視化する
つまり、重要なのは「目標設定」であるとし、川上氏は営業DXに重要な定量指標KGI・KSF・KPIを挙げる。
KGI(経営目標達成指標)
目標の達成度を定量的に表した指数。営業では、年間売上高や新規顧客獲得数、年間コスト削減金額を指数として設定するのが良い。
KSF(重要成功要素)
KGI達成のために必要な要素・要因。営業では、KGI達成のための要因として、新規顧客開拓を増やす、既存顧客からの追加案件を増やす、解約を減らす、という要素などを設定すると効果的。
KPI(重要業績評価指標)
目標に向かう過程の実施状況を表すための指標。営業ではリピート率、月間売上、月間コスト削減金額などを指数として設定するのが良い。
定量指標KGI・KSF・KPI設定のポイント
川上氏によれば、成功のポイントは、定量指標KGI・KSF・KPIを設定する際「KGIからKSF→KPI」を考える流れにあるという。
よくある失敗例として、まず先にKPIを設定して目標とするものの、KGIに対してKPIの必然性がなく、ただKPIがあふれかえるばかりで成果も出ず、といったケースがあるそうだ。そもそもKSFという「成功要因」なしでは勝利に勝てない。
まずは何よりも経営目標のKGIというゴールから考え、KSFとKPIというプロセスを踏む流れが重要だとする。
例
KGI
組織の成長、存続のために3年後にはコロナ前の150%の売上を実現する。
↓
KSF
150%の売り上げを達成するための戦略・変容
・流通、金融業界の市場シェアを20%引き上げる。
・重点商材A、Bを拡販する。
・低単価の商材C、Dは撤退する。
・流通金融セクションのメンバーへの短期育成施策を実行する。
↓
KPI
・金融/流通ターゲットのカバレッジ率推移
・商材A,Bの最新売り上げ見込み
・営業マン別商談前進率
・金融流通ターゲットへの営業マンの行動量
・商材A,Bの最新紹介行動量
・営業マン別キーマン商談セッティング数
これらの3つの指標の歯車がかみ合い、目標達成(=変革)をもたらしている状態が営業DXの実現状態であるとする。それには、効果検証のためのITサポートツール「SFA」が必要であるという。
営業マン個人はDX促進のために何をすべきか?
上記のような目標設定やSFAでの数値管理は、通常、経営者から営業マネージャーまでの立場が実施すると思われる。そうした中、営業マン各人はどのような取り組みにより、営業DXが成功に近付くだろうか。川上氏に聞いたところ、次のアドバイスをくれた。
「結論を言えば、日々の活動内容やスケジュール、ToDo、マイルストンなどをCRM/SFAに一括集約して入力を徹底することです。
営業マンは商談情報など、日々の顧客接点で得た情報を入力するだけで予実管理がCRM/SFAのダッシュボード上で行うことができ、セルフマネジメントが可能になります。また、すぐに受注につながらなくとも次回予定日を入力することで、次回以降の接点タイミング時に自動的にアラートが飛んできて抜け漏れを防げます。同時に自身の抱える案件が今月、来月どのくらいあるかも瞬時に把握できます」
一見、入力を徹底することはただの機械的な作業に思えるが、それだけではないという。
「これらは属人的な営業からの脱却を意味します。多くの企業では営業マンの入れ替わりが激しく、せっかく育った営業マンでさえ転職していくことも少なくないです。顧客との接点情報が担当となった営業マンの頭の中や個人的なファイルにしかない場合は、会社の情報資産ごとなくなりますが、それを防ぐことができます。
逆のケースもあります。トップセールスマンの行動は真似できないといわれていますが、CRM/SFAには行動履歴、商談履歴などトップセールスマンがどのように商談を進めているか見える化されています。定量的には顧客接点回数が多いですとか、メール回数が多いといったことなどがわかり、定性部分では履歴からお客様の課題の聞き出し方、ネクストアクションの切り方がわかります。それらをロールモデルにして横展開していくことで属人化営業から脱却できます」
「営業マンは、顧客接点を取ることが本業ですので、無駄な会議資料の作成や開くのが重いエクセルファイルなどに入力している時間があるのであれば、本業に時間を割くべきです。効率的な営業活動を行うことにより、属人的な営業からも脱却でき、生産性が上がれば売り上げも上がります」
CRM/SFA導入は目的ではなく、あくまで手段である。それは企業だけでなく、営業マン各人も認識すべきと言えそうだ。本業への専念、効率化のためにまずは入力やスケジュール管理を行うことがポイントということだ。営業DXは各社で加速する中、戦力となるよう各々の尽力も必須と言える。
【参考】
ソフトブレーンhttps://www.softbrain.co.jp/
取材・文/石原亜香利