三井物産グループのウェルタスは、フィンランド発の血液健康スコア化サービス「My Nightingale(マイ ナイチンゲール)」を提供する。同社が挑戦する「未来の健康づくり」へのアプローチを聞いた。
この年齢が何を指しているか、おわかりだろうか?
日常生活に制限なく生きられる期間の平均、つまり日本人の「健康寿命」だ。
若い読者の皆さんは、「そんな先の話は自分に関係ない」と思うかもしれない。
しかし、平均寿命と重ねるとこうなる。
人生は最期までできるだけ自由に、楽しくありたいもの。しかし現実は、男性なら約9年、女性は約12年、何かの制限を受けて生きることになる。
それだけの問題ではない。
仕事ができなければ収入は限られるし、医療費をはじめとする支出も心配だ。国の社会保障費もかさめば、子どもや孫の負担を増やすことにもなる。若いからといって、無関心ではいられない。
ウェルタスは2021年に三井物産の子会社として立ち上げたスタートアップ企業で、現在社員は4名。
「未病の見える化」「未来の健康づくり」をミッションに掲げる。
同社の吉川氏は、チャレンジしがいのある大きな社会課題だと意気込む。多くの人が病気になってからでは手遅れだと理解はしているし、健康志向も高まっている昨今だが、それでも未来の健康づくりを支援するビジネスは難しいという。
私たちは高血圧や糖尿病といった生活習慣病になっても、保険制度のおかげで、少ない出費で投薬治療を受けられる。ついつい、軽く考えてしまいがちだ。
また、生活習慣病は痛みを感じない場合が多く、ゆっくりと進行するため自分ごとになりづらい。食事や運動などを改善しても、すぐには成果を実感できないので、努力を続けることも難しい。
そこで同社は、現在の体の状態を反映する血液検査の改革に取り組む。カギは「わかりやすさ」と「楽しさ」だ。
たとえば血液検査では、コレステロールや血糖値などの数値が示されるが、その意味を理解するのは難しい。
ならば、子どものころからなじみのある100点満点の総合スコアで、まとめて表現したらどうだろう。格段にわかりやすくなるし、変化が目に見えれば達成感もやりがいも増してくる。
また、血液検査の結果とビッグデータを突き合わせれば、将来のリスクを予測できる。脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気や、透析の必要な糖尿病のリスクが見えれば、今の血液の状態が「自分ごと」に近づくはずだ。
血液の状態と将来のリスクをわかりやすくすることで、生活習慣の改善が楽しくなる。
総合スコアで点数化するには、しっかりとした学術的な根拠に基づく正確できめ細かい検査と分析が重要だ。
ウェルタスは、研究機関が保有する100万検体以上の血液を分析したフィンランド・ナイチンゲールヘルス社と提携。同社独自の血液解析技術を用いた血液検査サービス「マイ ナイチンゲール」の日本での販売を開始した。
少量の血液から得られた250項目の測定結果から、脳梗塞/心筋梗塞と、2型糖尿病のリスクを2万人以上のビッグデータを用いて評価できるというもの。リスクだけでなく、体の状態を100点満点の総合スコアで評価し、さらに5つの健康指標
で分析。健康指標ごとに特に効果的な健康習慣を提案するので効率的にスコアアップが図れる。
課題は「楽しさ」の向上。インターフェースだけでなく、インセンティブやゲーム性を加えてやる気にさせるなど、達成感を得ながら楽しく取り組むには、ダイナミックな設計が必要だ。
まずは、信頼される血液検査サービスの基盤を整え、将来的にはコンビニやスーパーなどの小売、食品メーカー、旅行会社などさまざまな外部企業とのコラボレーションを見据える。
●生活習慣病リスク検査My Nightingale (マイ ナイチンゲール)
取材・文/ソルバ!
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