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アパレル産業をより持続可能なものにする商品戦略「マスカスタマイゼーション」とは?

2022.02.24

 極論すれば自分の身体だって結局最後は燃やされてしまうのだが、身の回りに燃えるゴミばかり増やしてしまうことが残念でならない。しかしどれほど遺憾に思ってみても、着たい気持ちが完全に消え失せたシャツには二度と腕を通すことはないのだろう――。

きっと捨てることになるシャツのことを考えながら巣鴨駅前を歩く

 どこで買い物をしてきたのかが一目瞭然の紙袋を手に提げていた。今までまったく気にしてこなかったが、その事実にあたらめて気づくと少し気恥ずかしさを感じないこともない。とはいえ外に出て街を歩けば、程度の差こそあれ誰もが何らかのメッセージを発しているものだ。

 用件を終えて巣鴨駅前を歩いていた。予想していたよりも時間がかかってしまい、もう夜7時近い。どこかで「ちょっと一杯」には格好の時間帯だ。荷物が多い時に飲食店に入るのは気が進まないほうだが、本日はもう急ぎの用事はないので何もしないで帰るのはなんだかもったいない。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 今日の昼過ぎには池袋にいて少し空き時間ができたこともあり、駅ビル内にある某ノーブランド系ショップに入ってみたのだが、なかなか良さそうな白シャツがあったので急遽購入を決めたのである。しかもきっとまた買い足すのではないかという気がしてきたので、同じものを2枚買うことにした。したがって今手に提げている紙袋の中にはシャツが2枚収まっている。

 巣鴨駅北口側の駅前ロータリーに沿って歩く。ビル1階にある書店はなかなか賑わっているようだ。一見どの街にもありそうな駅前の中規模書店なのだが、実は昭和の時代からある老舗の本屋であることは知っていた。店先に並ぶ雑誌を眺めつつ歩みを勧め、駅前に並んで建つ飲食店が数多く入る雑居ビルの前を通り過ぎる。

 衝動買いに近い勢いで購入したこの白シャツなのだが、実はすでに似たようなシャツを2枚持っている。ネット通販で買ったシャツなのだが、着初めの頃は気にならなかったものの、裾を外に出して着るとやや着丈が長いのが徐々に気になってきていた。それ以外には不満は何もなくて、実際に普段から良く着ているシャツである。

 しかし今日、偶然に見つけたこのシャツは着丈もやや短くシルエット的には理想的な品に思えて“衝動買い”となってしまった次第だ。明日以降にこのシャツを実際に着てみて、印象通りであったとすれば今持っているそのシャツは残念ながら用済みとなってしまうだろう。品質的には何の問題もなくまだまだ着れるのだが、着ようという気がまったくなくなってしまうのは明らかだ。

 Tシャツやスウェットシャツならば、着なくなれば部屋着や寝間着にするという手もあるが、ボタンのあるシャツを部屋着にするのも面倒だ。まったく本意ではないのだがそのうちに処分することになってしまうだろう。そうなれば燃えるゴミを増やしてしまうことになり、地球にやさしくないことはいうまでもない。

アパレル産業をより持続可能にする“マスカスタマイゼーション”

 前に何かの記事で読んだのだが、アパレル産業全体が焼却処分している余剰在庫品は世界の温室効果ガス排出量の10%を生み出しているという。特に昨今は“ファストファッション”に代表されるような大量生産、大量消費の産業構造がより強まっている傾向もある。

 メーカーが抱える売れ残りの衣服に加えて、今回の自分のようにある時点で着なくなってしまい処分される服も相当あることは想像に難くない。誰だって服を買う時点ではその服をそれなりの期間着ると考えているはずであろうが、実際に着てみるとその“賞味期間”はまちまちだ。買って1、2回着た後にほとんど着なくなる服もあったりするかもしれない。

 そしてその着なくなる理由というのも、自分と同じようにほんの少し着丈が長いなどといった些細なことが圧倒的に多いのだろう。そもそもS、M、Lなどで大ざっぱにサイズ分けしている既製服に無理があるのだという話にもなってくるわけだが、そこでにわかに浮上してくるのが「マスカスタマイゼーション(mass customization)」という戦略である。

 完全なオーダーメードとは異なり、マスカスタマイゼーションの場合は顧客の要望に限られた範囲で応じつつも大量生産を実現するという相反するニーズを同時に満たす製造方法のことだ。つまり自分好みのカスタムができて、そのうえ安価なものが欲しいというニーズに応えるものである。

 簡易的なオーダーを可能にしつつ、できるかぎり低価格に抑えるという消費者の“わがまま”なニーズを満たすマスカスタマイゼーションという難しい課題に、多くのアパレルメーカーは難色を示しているのだが、最新の研究では適切な運用管理によって、マスカスタマイゼーションがより高い利益を生み出し、加えて環境にダメージを与える廃棄物を大幅に削減できることが示唆されている。つまり企業の高収益と環境保護が両立できるというのだ。


 過剰生産の解決策の1つとして、顧客が自分のスタイルの好みや寸法に合わせて作られた服を注文するマスカスタマイゼーションが提案されています。

 しかし、個々の顧客の要求に合わせて衣服を調整するというロジスティック上の課題と長い製造リードタイムにより、ほとんどの企業はマスカスタマイゼーションを採用することを思いとどまっています。

 カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者が共同執筆した新しい研究によって、彼らはその決定を再考したいと思うかもしれません。製造およびサービス運用管理の今後の調査では、適切な状況下ではマスカスタマイゼーションがより高い利益を生み出し、環境廃棄物を大幅に削減できることが示唆されています。

※「University of California, Riverside」より引用


 米・カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームが2021年10月に「Forthcoming in Manufacturing & Service Operations Management」へ投稿した研究論文では、マスカスタマイゼーションは顧客が仕上がりを待つことをいとわない場合、ファッション産業をより持続可能なものにできることを示唆している。

 研究チームは衣服の入手をカスタマイズのために長く待つようにと顧客を説得することに成功できた時、マスカスタマイゼーションの利益が明らかに増加することを突き止めた。また「H&M」のようなファストファッションブランドなどの生産コストと販売価格が低い企業においても、マスカスタマイゼーションを導入することで収益を高めると同時に余剰在庫を減らし、処分に伴う環境への負荷を減らすことができる可能性を指摘している。

「ファッション商品を生産する持続可能な方法としてそれ(マスカスタマイゼーション)を宣伝し、顧客の待つことに対する忍耐力を高めることができれば、マスカスタマイゼーションは双方にメリットがある可能性が高くなります」と研究チームは説明する。

 ファストファッションの魅力はまさに衝動買いができる程度の価格帯が最大の魅力ともいえるのだが、自分の身体に少しぐらいフィットしていなくともその安さで気軽に購入してしまう側面がある。しかしそうしたアイテムは往々にして数回着ただけであまり着なくなり、“タンスの肥やし”になるケースも少なくないのだろう。そしてその“タンスの肥やし”の多くは燃えるゴミとしていつしか処分されることになる。

 そこで限定的にカスタマイズが可能なマスカスタマイゼーションを導入することで、ある程度価格は上乗せされたとしてもそのぶん“タンスの肥やし”になり難く、ある程度長い期間着用できるということになれば燃えるゴミになる衣類の総量が減ることは間違いない。企業側は商品単価を上げることができて、なおかつ環境にやさしい企業運営ができるのだとすればまさに“ウィンウィン”ということになるだろう。

選べる「ちょい飲みセット」でほろ酔いを楽しむ

 駅前ロータリーに沿って歩き白山通りへ出てもよかったが、そのまま直進できる路地がある。ぎりぎり車が通れる道幅の一方通行の路地に足を踏み入れることにした。

 周囲にはパチンコ店やパチスロ店なども目立ち、それなりに人通りも多い。駅前にはチェーンの飲食店の看板もけっこう目につくが、この辺では昔からやっているであろう地元の店もそれなりに多そうだ。

 寿司屋の先には「ろばた焼」の看板を掲げた店がある。路地に面した焼き台では焼き鳥が焼かれていて、その脇で明らかに常連のお客さんが立ち飲んでいて、なんだかちょっと羨ましい。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 焼き鳥の店を過ぎると右手に食堂があった。ここも見るからに昔からやっていそうなお店だ。店先の立て看板の黒板にはいくつかの定食メニューに加えて「ちょい飲みセット」の記述もある。いわゆる“食堂飲み”ができそうな店である。入ってみよう。

 入ってすぐのところに置かれているスタンド型の機器で手指を消毒して長テーブルの一角に着かせていただく。コップに入った水を持ってきてくれたお店の人にさっそく「ちょい飲みセット」を注文する。お酒はウーロン茶の焼酎割り(ウーロンハイ)にし、酒の肴として選べるメニューの中からミニサイズのポテトサラダと目玉焼きをお願いした。先にウーロンハイがやってきたタイミングで店内の壁に貼られている短冊メニューの中にあった「しめさば」を単品で注文する。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 いろいろと品がやってきた。こうした素朴なメニューの数々で飲めるのは“食堂飲み”ならではである。さっそくジョッキを傾けつつ料理に箸をつける。ホッとひと息つける瞬間だ。壁の短冊メニューでほかにも気になった「ガセエビむき身」も注文する。こういう機会でもなければガセエビなんて食べることはない。

「ちょい飲みセット」で選べる酒の肴はほかにもハム、コロッケ、キムチ、冷奴、シュウマイがある。選べるというのは単純に嬉しいし、こうした少量のメニューを選べるようにしておくことは提供側にとっても無駄がなさそうである。とすれば結果的に「食品ロス」も減ることになり、ひいては地球にやさしいことにもなるだろう。自分好みにカスタイズすることで“ウィンウィン”を目指すマスカスタマイゼーションに通じるものがあるのかもしれない。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 この機会にガセエビも堪能する。舌が肥えていない自分にとっては甘エビとの違いがあまりよくわからないが新鮮で美味しい。ウーロンハイをお代わりしてもう1品何か頼んでもいいのだろう。もう少しだけホッとひと息つく時間を楽しませてもらうことにしたい。

文/仲田しんじ


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