
堅調に推移している日米のバリュー株。その背景には、どのような要因があると考えられるのだろうか。
三井住友DSアセットマネジメントではこのほど、「来るか本格バリュー株相場 金融政策の転換で変わる潮目」と題したマーケットレポートを公開した。詳細は以下の通り。
足元堅調な日米バリュー株
世界の株式市場は不安定な動きを続けているが、そんな中にあって、日米のバリュー株は堅調に推移している。2010年代は長らくグロース株優位の相場が続いたが、 バリュー株の相対パフォーマンスは一昨年の秋に大底を入れ、最近では日米ともにバリュー株の優位が目立つようになってきた。
こうしたバリュー株の堅調さの背景には、世界経済の回復を背景とした景気敏感株の復調、資源価格の高騰による関連業種の上昇、そして金利上昇による金融セクターの反転などがあげられる。
金利上昇で動意づくバリュー株
金利上昇でバリュー株が動意づく背景には、大きく二つの理由がある。まず一つ目が、業績の上振れ期待だ。金利上昇局面は経済が回復し、資源価格も上昇することが多いため、バリュー株の業績予想も引き上げられる傾向がある。
二つ目は、理論株価への影響。株価を推計する手法の一つに「ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)」がある。このDCF法を簡単に説明すると、「将来の利益を今の価値に割り引いて合算したものが企業価値になる」という考え方だ。
一般に、バリュー株は近い将来の利益の比重が高く、グロース株は遠い将来の利益の比重が高くなるので、バリュー株はDCF法で使われる「割引率」の影響が小さい一方、グロース株は影響を受けやすいとされている。このため、金利上昇はグロース株にとって、悪材料と捉えられる傾向がある。
【今後の展開】バリュー株への追い風続く、ただし米国グロース株のダイナミズムには引き続き注目
三井住友DSアセットマネジメントでは、来年の半ばまで米国の利上げ局面が続くものと予想している。このため、金融環境としてはバリュー株への追い風が、当面は続くものと予想している。
とはいえ、「投資先企業の将来性を買う」という株式投資の基本に立ち返れば、米国グロース株は今後も長期的なポートフォリオ運用の中核をなす資産の一つといって差し支えないだろう。
ちなみに、直近の利上げ局面(2015年12月16日から2018年12月19日)では、米国グロース株は約30%上昇しており、米国バリュー株を約10%アウトパフォームしている。
なお、過去20年ほどの米国株式市場の動向を見ると、バリュー株とグロース株の優劣は、おおむね長期金利の動きに沿う形で推移している。
利上げ局面にもかかわらず米国グロース株が堅調に推移した背景には、前回の利上げが比較的小幅でそのペースも緩やかであったことも一因と言えそうだ。しかし、米国グロース株の上昇にとってより重要であったのは、力強く事業を拡大し、高水準の株主資本利益率(ROE)を更に向上させた、高い収益性や盤石なビジネスモデルを背景にした力強い業績の伸びに他ならないだろう。
バリュー株への追い風はしばらく続きそうだが、米国グロース株がもつ成長性や収益力の高さにも、引き続き注目していく必要がありそうだ。
構成/こじへい