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【深層心理の謎】なぜ高額な商品を選ぶ時ほど鑑識眼が働くのか?

2022.02.18

 見つけてしまったからには行くしかない。70~80メートルほど先だろうか。我ながら貧乏性が甚だしいともいえるのだが、そうすることが正しいと確信してしまっているのだからやむを得ない。

20円安い買い物をして明治通りを歩く

 原材料費や物流コストの高騰などをはじめ、複雑な要因が絡み合ってあらゆるモノの値段が僅かずつ上昇してきているのはご存知の通りだ。そのほとんどの値上げ分は単独で見ればたいしたことのないものだが、身近なあらゆる商品やサービスの価格が時を同じくして上がるのはなかなか厳しいともいえる。

 東新宿界隈の明治通り沿いを歩いていた。新宿三丁目での用件を済ませ、電車には乗らず少し歩くことにしたのだ。本格的な冬の寒さが続いているが、日差しが眩い快晴の午後は気分も晴れる。コロナ禍で一時は都内の車の通行量も少なくなってきていたが、徐々に回復してきているようで通りには車も多い。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 モノの値上げに関することで、1本10円の価格を42年もの間維持してきたお菓子が12円に値上げをするというニュースがあった。わずか2円であるし、どれほど好物であったとしても1日に何本も食べるようなものではないだろうから懐が痛むということはないだろう。むしろ40年以上にわたってよく10円で販売してきたものだと感心すると共に微笑ましくなる話題ともいえそうだ。

 しかしわずか2円の値上げなのだが、10円が12円になったのだから20%の価格アップである。金額はほとんど問題にならないにしても、2割の価格上昇ということであればそれなりに意味を持つ出来事ということになるのかもしれない。

 肩にかけているトートバッグから小さいペットボトルを取り出し、歩きながら水をひと口飲む。冬は冬でけっこう喉が渇くものだ。このボトルウォーターは今さっき買ったものだが、コンビニではなく通り沿いで見かけた某小型スーパーで購入したものだ。

 もちろん最初はコンビニで買おうと考えたのだが、思いついた時には某コンビニ店の前を通り過ぎてしまっていたのだった。引き返すのもなんだか億劫なのでそのまま歩き続けていると通り沿いにそのスーパーを見つけて、これ幸いにと入ることにしたのだ。

 このスーパーではドリンク類がコンビニよりも総じて20~30円ほど安く販売されていて、最近では都内でもあちこちで見かけるようになっていて個人的には重宝している。このボトルウォーターもそこではコンビニより20円ほど安く売られているのだ。このスーパーが増えたことでコンビニに行く回数は以前よりも確実に減ってきている。

 我ながら貧乏性を体現しているような話にはなるが、目に見える範囲内にあればコンビニではなくこのスーパーを利用するのが正しいのだと自分で納得してしまっているのだから仕方ない。いろんなモノが値上がりしている中にあって、ささやかな防衛策ということだろうか。

 倹約の話題となると牛乳や玉子など10円でも5円でも安い店で買う主婦の話などが出てくるが、その倹約の目的は場合によっては後の家族旅行だったり家族での奮発した外食だったりもしているようだ。だとすればその家族旅行やリッチな外食でも10円、20円の価格差にこだわるのだろうか。きっとそんなことはないように思える。

 100円レベルの買い物なら10円の価格差はけっこう大きく感じられるが、1000円レベルの買い物なら10円の価格差はあまり気にならないかもしれない。これは「ヴェーバー‐フェヒナーの法則(Weber-Fechner Law)」と呼ばれる価値観の基本法則で、「ものの大きさの感覚」には常に背景にある文脈の影響を受けている現象のことである。ミネラルウォーター1本買う時には20円安い店を選びたくなるが、たとえば3000円くらいの予算でセーターを買おうかと思っている時には、気に入ったものが2800円でも3200円でもその程度の差額はあまり気にならなくなるのではないだろうか。そういえばセールで安くなっているセーターを2枚ほど買おうと思っていたのを思い出した。夜にでもネット通販サイトをチェックしてみることにしたい。

高額商品選びのほうが素早く“鑑識眼”が働く?

 広い交差点の信号を渡る。そういえば今日はまだ何も食べていなかった。どこかで何か食べてもいいのだろう。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 交差点をドイツの某高級SUVが通り過ぎる。決して珍しい車ではないが、富の象徴であることは間違いない。車両価格が2000万円はゆうに超えるモデルだ。2円や20円のことを考えている時にあまりにもスケールが違い過ぎる話である。

 100円もしないミネラルウォーターと2000万円超えのSUVでは話のレベルが違い過ぎて苦笑せざるを得ないが、「ヴェーバー‐フェヒナーの法則」に従えばSUVの購入を検討する際には数万円から数十万程度の価格差ならあまり気にならないのだろうか。

 しかし最新の研究では意外にもそこに疑問が投げかけられている。価値があると感じている高価格商品については、我々は実に正確に、素早くその価値を推し量っているというのである。自分にとって価値のある高額商品については、我々は僅かな価格の差を敏感に把握しているというのだ。


 研究者は(これまで)アイテムの全体的な価値が上がるにつれて、人々は価値の変化にあまり敏感ではないと長い間考えてきました。

 たとえば5000ドルの車と10万ドルの車の違いよりも、5万ドルの車と5万5000ドルの車の違いを見分けるのは難しいようです。価値の差は同じですが、高価格帯のほうの車では差額の割合がはるかに小さく、気づきにくいと思われます。

 しかし今回の新しい研究は人々が他の領域においては異なる価値に対する反応を示す可能性があることを示唆しています。

 3つの別々のコンピューターベースの研究で、同じドメイン内の低価値オブジェクトよりも、さまざまなタイプの高価値オブジェクト間の価値の違いをより速く、より正確に見分けることができることを発見しました。

※「Ohio State University」より引用


 米・オハイオ州立大学の研究チームが2022年2月に「PNAS」で発表した研究では、実験を通じて価値の高いアイテムを二者択一する際において、我々はきわめてその価値を正確に素早く見極めていることが報告されている。これは前出の「ヴェーバー‐フェヒナーの法則」に背反する研究結果になっているのだ。

 実験の1つでは実験参加者は144のスナック食品それぞれを自分がどのくらい食べたいのか0点から10点の評価を行った。その後、その中のスナックを2つのペアで見せられ、どちらが食べたいかを選ぶ2択の課題を行ったのだ。ちなみに2つのペアの中にはどちらも低評価の組もあれば、どちらも高評価のものもあった。

 回答データを分析したところ、実験参加者である回答者は総じて正確に評価の高いスナックを選んでおり、どちらも高評価のペアが提示されても、そのわずかな評価の違いを正確に素早く判断していることが示されることになったのだ。どちらも低評価のペアを提示された時のほうがむしろ正確性に欠け、回答に時間がかかっていたのである。

 ほかの2つの実験でもこの傾向が確認され、「ヴェーバー‐フェヒナーの法則」が常に当てはまる基本法則ではないことが示唆されることになったのだ。

 ではなぜ、評価が高いアイテムについての価値判断が素早く正確になるのか? 研究チームよれば我々は自分にとって貴重なアイテムを見ると脳が覚醒状態になり、それにまつわる意思決定により深くコミットするようになるからであるという。往々にして高価格商品である評価の高いアイテムは、それを入手することが喜ばしいからこそより意識的に、より注意力を傾けて勘案することで正確で素早い判断ができるようになるというのだ。

 ということは絶対的な商品の価格というよりも、自分にとって手に入れて嬉しいアイテムにはより正確で素早い“鑑識眼”が働くということなのだろう。高級SUVを手に入れることが本当に嬉しい者は、価格にシビアであったとしても確かに不思議ではない。

今年最初のタイ料理を堪能する

 通りにはSUVのほかにも高級車が普通に走っているが、車のこともミネラルウォーターのこともいったん置いておくことにして、ひとまずどこかの店に入って腹を満たすことにしよう。交差点の職安通りを西武新宿駅方向へと進む。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 ラーメン店とカレー店をはじめ、いくつかの飲食店が軒を連ねている。1階の路面だけではなく、2階や3階にもいろんなお店があるようだ。

 1階がホルモン焼き肉店のビルの2階にはタイ料理店があるようで、階段に通じる入口近くの歩道に立て看板が置かれている。そういえば今年はまだ一度もタイ料理店に行っていなかった。ここは躊躇せずに入ってみることにしたい。

 階段をのぼると鉄扉に店名を記した紙がこれ見よがしに貼られている。ロケーション的には飲食店らしくないのだが、扉に貼られた掲示物を見れば間違いようがない。架かっている小さなボードは「OPEN」の面を見せている。臆せず扉を開けてみることにしよう。

 入ってすぐのところがレジになっていて、女性の一人客がお会計を済ませているところだった。壁に貼られたポスター類も賑やかで、天井からは提灯や小さな傘のような装飾が吊り下げられている。異国情緒とは少し違う気もするが、アジアンな雰囲気を醸しだそうとしている意図はよく伝わってくる。

 入口から想像するよりも広い店内で、テーブル席に着かせていただく。外の立て看板にもあったように今はランチタイムの時間帯で、ランチメニューがテーブルに置かれていた。久しぶりのタイ料理ということで、真っ先に浮かぶのはパッタイなのだが9種類あるランチメニューには残念ながらパッタイはない。しかし「パッドタイケン」というエビ入りタイ風焼きそばがあったので迷うことなくそれを注文した。

 メニューにはサラダ、スープ、デザート、ドリンクバーがすべてついていると記されているのだが、それらはすべてセルフサービスだ。運よく自分よりもほんの少し前に来店したであろう日本人の男性客がいて、入店時にその人がセルフサービスのサラダやスープをよそっている光景を目にしていた。それに倣っていればなんの問題もない。さっそくドリンクバーでジャスミンティーをグラスに注いでテーブルに置き、さらにサラダとスープ、デザートのタピオカを器によそって持ってくる。

 このようにいろいろと自分でやることが多いこともあり、あっという間に料理が運ばれてきた感じだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 素人目にはパッタイといわれても違いはわからないビジュアルだ。でも何かが違うのだろう。小さな茶碗に入った焼きめしもついてきた。さっそくまずはそのままライスヌードルをひと口食べてみる。パッタイが食べたかった身としては何の不満もなく美味しい。このメニューを選んでよかった。

 そういえばこのメニューを迷わずに即断できたもの、パッタイに近いものを食べたいという思いがあったからだ。そういう意味では今の自分はパッタイ、あるいはパッタイに近いものが食べられることが嬉しいからにほかならない。決して高い料理ではなく、むしろ廉価なランチメニューなのだが、それでもそれが自分にとって嬉しいメニューならば迷うことなく即断即決ができるということになるだろうか。そしてその判断は、少なくとも主観的には正しい選択であるはずだ。

文/仲田しんじ


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