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平野歩夢選手が異議を唱えたオリンピックの判定、AIなら数値化できたのか?

2022.02.17

【連載】もしもAIがいてくれたら

【バックナンバーのリンクはこちら】 
第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第38回:セブン-イレブンの「触らないレジ」の先にある「人が居ないレジ」の未来

スノーボードの採点基準に「明確な基準はない」

スポーツ競技での審判や採点については、しばしば疑義が生まれますが、オリンピックのような平和の祭典では、疑義が生じない公平性・透明性が特に強く求められます。

スノーボード男子ハーフパイプ2月11日の決勝2本目(全3本)で、平野歩夢さんは出場者でたった一人、トリプルコーク1440(後方縦3回転+横1回転)など高難度の技を5本も決めましたが、91.75点という低評価になり、2位にとどまりました。誰もが平野さんの1位を確信した演技への低評価には、ライバルのショーン・ホワイト(4位)を擁するアメリカと、スコット・ジェームス(2位)擁するオーストラリア、スノーボード界のレジェンドであるトッド・リチャーズも、「審判はおかしい」、と激怒しました。

平野さんは、3本目も、2本目と同じ構成の演技で臨み、96.00点を出して、逆転金メダルを獲得しました。平野は、12日の記者会見で採点について言及し、「全部を計れる新たなシステムを整え、しっかり評価してジャッジすべきだと思う」と述べています。

明確な基準や決まりがない、という現状に、驚いた方は多いのではないでしょうか。

NHKの解説員によると、6人の審判が、それぞれ100点満点で選手の滑走を評価するようです。得点は、最高と最低を除いた残りの4人の平均になります(これは人間による評価ではよくとられる方法です)。「エアの高さ」「技の豊富さ」「難解さ」「創造性」「着地、滑走の構成」などを総合的に判断するということです。

これらを肉眼で、総合的に判断しているとは驚きです。タイムを競う競技の判定が肉眼で行われることはないですし、球技など複雑な動きを扱う競技の判定にもAI技術が採用されています。テニスやサッカーなどの球技で採用されている「ホークアイ」は、数台のハイスピードカメラから得られる様々な角度からの映像をAIがリアルタイムで解析し、正確で公平な審判するために欠かせない技術となっています。

AIには「創造性」の判断が難しい

様々な角度からの映像をAIがリアルタイムで解析する技術が採用されれば、平野さんが求める「どこを見て、採点したのか、説明すべき」という要望に応えることができます。

ただし、テニスで実装されているホークアイをそのまますぐにスノーボードに採用することはできないので、採点基準をAIに学習させる必要があります。「エアの高さ」や「滑走の速さ」は、機械的に計測さえできればよいですが、技に関する評価は、競技者のモーションキャプチャなどによる映像と、人間の審判員による採点結果のデータをもとに、AIに学習させる必要があります。技が多種多様である点は、評価が難しいところかとは思いますが、「板の向き」「回転の方向」などで構成され、その豊富さや難解さがあるようなので、点数化できるのではないかと思います。

しかし、「創造性」という観点は、AIには数値化が難しいかもしれないため、AIだけによる審判を行う必要はないと思います。人間の審判員とAIの評価によって総合的に判断できるようにすることは、何をすれば高得点が出るのか手探りの中で、選手が命がけで高難度の技に挑むという現状を打開するために、必要なのではないかと思います。

坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。

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