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3Dプリンターの普及は宇宙ビジネスにどう影響を与えたか?

2022.02.15

3Dプリンターは様々な分野で活用されている。自動車、航空などの製造業分野はもちろんのこと、そして医療分野、料理などの分野でも活用されている。そして、もちろん宇宙ビジネスの分野も同様だ。今回は宇宙ビジネス分野において3Dプリンターが活用されているシーンを紹介しながら、3Dプリンターの導入によって、なにがどのように変わったのか、今回は、そのような話題について触れたいと思う。

https://www.relativityspace.com/headlines-news/2021/relativity-from-awakening-to-action-october-2021

宇宙の与圧環境下で用いる3Dプリンター

宇宙ビジネス分野において、「3Dプリンター」と聞くとまず何を思い浮かべるだろうか。まず先駆者として、忘れてはならないのは、Made In Spaceだろう。Made In Spaceは今現在RedWireの傘下であるが、国際宇宙ステーションISSにて、与圧下、微小重力環境下で部品、工具、装置など200以上を製造した実績を多数持っている。この装置は、AMF(Additive Manufacturing Facility)といい、宇宙空間の真空環境下での製造実績は聞いたことはないが、将来のスペースステーション、スペースコロニーなどでの人類の宇宙を舞台とした活動や惑星探査におけるニーズを満たすなどを目的としている。地球からわざわざロケットというコスト高な輸送機を使って部品、工具、装置などを運ぶことをせずとも、原材料だけがあればこの3Dプリンターで製造できるのだ。

将来もっと大型な3Dプリンターができれば、一度宇宙へと運んでしまえば、今以上に多種多様な部品、工具、装置の製造が可能となるだろう。

Made In Spaceの3Dプリンター
(出典:RedWire)

実は、宇宙の与圧環境下で使われている3DプリンターはRedwire(Made In Space)だけではない。他にも、NASAは、「Fabricator」という3Dプリンターを開発している。これは、様々なサイズや形状のプラスチック原料を再利用し、プラスチックの積層造形を作ることができるというもの。Tether Unlimitedという企業とSBIRプログラムで開発した※1。また、ESAでもSonaca Space GmbHと共に開発した3Dプリンターもある※2。

ロケット製造にも3Dプリンターが活用されている

ロケットを製造する際に3Dプリンターを活用している代表的な企業といえば、Relativity Spaceが思い浮かぶだろう。第1段の燃料タンク部分を3Dプリンターで製造しているシーンをよく目にする。実際に動画も公開されているのでぜひご覧いただきたい※3。実は第1段部分以外にロケットの構造全般、エンジン部分も3Dプリンターを活用しているという。Relativity Spaceによると、3Dプリンターによる活用で従来型のロケットよりも100倍少ない部品で済むという。Relativity SpaceのロケットのエンジンであるAeon1、Aeon R、Aeon Vacについては、エンジン燃焼室、点火装置、ターボポンプ、姿勢制御スラスターなどにおいても3Dプリンターが活用され、部品数を減らすことができるので、ミッションの信頼性を高めることができているという。これは、製造工程においても簡素化されるだろう。Relativity Space は60日以内に、ロケットの製造を完了することができるという。

Relativity Spaceの3Dプリンターによるロケット製造
(出典:Relativity Space)

他にも、米国Rocket Labでも主力ロケットElectronのRutherfordエンジンにも3Dプリンターが活用されているのは有名だ。

日本では、IHIは、ロケットエンジン部分の製造に必要な3Dプリンター技術を開発した※4。IHIによると、従来の金属加工の技術で諦めていた複雑な形状の設計が可能になり、軽量化する究極の設計が可能になるという。そして,製造コストはもちろん,製造期間も劇的に短縮でき、一つのエンジンを開発するには少なくとも5年を要するのが現状だが、部品の製造が1週間でできてしまえば,エンジンの開発期間を1年以下にすることも視野に入ってくるという。現在の世界のロケット製造の潮流として、3Dプリンターが積極的に活用されているといっても過言ではないだろう。

衛星製造にも3Dプリンターは活用されている

ロケットで3Dプリンターが活用されているのであれば、衛星にも活用されているのではないか、そう考えるのが自然な発想だ。

現在、衛星でも通信衛星のアンテナ部分で3Dプリンターが活用されている事例が多い印象だ。例えば、最近ではSpace System Loralは、37個のチタンノードと80個以上のグラファイト支柱を備えたアンテナタワーの製造に3Dプリンターを活用している。

日本では、三菱電機が、JAXAの革新的衛星技術実証2号機において、フィルターと一体型の金属製アンテナを3Dプリンターで開発している。また、次世代宇宙システム技術研究組合でも、小型衛星の大部分の構成部品において3Dプリンターを活用しているという。

そして、驚くべきニュースがある。オーストラリアに100%完全3Dプリンター製造の小型衛星を手がけるベンチャー企業が登場したという。彼らは、FLEET Space※5。この100%完全3Dプリンター製造の小型衛星は世界初となる。その衛星は「Alpha」という。ケンタウルス座の中で最も明るい星「α星」が由来らしい。100%と言っても、詳細は不明だが、太陽電池パネルやEEE部品レベルなどは3Dプリンターで製造はされていないだろう。まず、彼らは、小型衛星用の金属製3Dプリントパッチアンテナを世界で初めて製造し、衛星1kgあたりの処理能力を10倍に高めるなどに成功。そして、その技術を活用して、100%完全3Dプリンター製造の衛星「Alpha」を開発したという。「Alpha」では、すべてのアンテナに金属製3Dプリントパッチアンテナを搭載し、デジタルビームフォーミング技術で通信をするという。

FLEET Spaceの100%完全3Dプリンター製造の小型衛星 ALPHA
(出典:FLETT Space)

月や火星での3Dプリンターハビタット

月や火星の移住を構想し、住居(ハビタット)の建設も計画されている。このハビタットの製造には3Dプリンターを活用するという。NASAでは、3D-Printed Habitat Challengeというコンペティションを開催。このハビタットの製造において、モデリング、ソフトウェア、材料、建設について審査されている。例えば、円筒型に作られたハビタットに水を注ぎ、漏れないかという実際に宇宙で必要条件となる気密のテストも行われている。

SEArch+の火星でのハビタットイメージ
(出典:SEArch+)

前半部分で紹介した3Dプリンターは、すべて国際宇宙ステーションISSなどのような空気がある与圧環境下での3Dプリンターであるが、船外の真空状態で稼働させようとする3Dプリンターも存在する。例えばMoonFibreの月のレゴリスから繊維を生産するもの。Orbital Compositesは、アーム状のロボティクス技術を活用した3Dプリンターを開発している。現在は産業用としてだが、今後宇宙用のものを開発していくという報道がある。他もMAGNAPARVAやUnited Space Structureなども類似した計画を有しているようだ。

いかがだっただろうか。宇宙ビジネスといっても分野は多岐にわたるのだが、地球上で製造するロケットや人工衛星で3Dプリンターが活用されている理由としては、高信頼性、低コスト、短納期というQCD(Quality Cost Delivery)の観点が挙げられる。

そして、宇宙空間で製造する目的の3Dプリンターは、宇宙地産地消を目指した地球からの重量、サイズなどに起因する輸送コスト削減が目的と感じる。まだ、宇宙ビジネス分野での3Dプリンターの活用は途上かもしれないが、このような取り組みがいつか開花するときが来ることを期待したい。

※1 https://www.nasa.gov/mission_pages/centers/marshall/images/refabricator.html
※2 https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2020/02/3D_printer_for_space
※3 https://www.youtube.com/watch?v=Xx9TUOZNDaM
※4 https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/1d20a032eefedbc40d3508783ea37775.pdf
※5 https://fleetspace.com/

文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は各メディアの情報発信に力を入れている。


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