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横浜ゴムが北海道の秘密基地で挑み続ける最強のタイヤ開発

2022.02.13

「凍った路面は温度によって制動距離が変わります。そこで温度にこだわった制動距離のデータの変遷をしっかりと分析し、“どの氷温域でも勝てる(=確かな性能を発揮できる)”タイヤ開発をするためのデータ取りとそれに基づいたタイヤ開発をしたかったのです」(横浜ゴム取締役常務執行役員・野呂政樹さん)。

 ユーザーがスタッドレスタイヤに求める性能の第一は、氷上での制動性能だ。タイヤメーカーは世代を追うごとに全方位で性能を高めてはいるが、ユーザーが最も不安であり、頼もしい性能を期待する氷上での制動性能の追求はつきない。

 年に数か月、それも雪が積もるような寒さの中で行なわれる冬用タイヤの開発テストは、自然、コスト、効率との戦いだ。筆者も冬になると北海道で何度か試乗を行なっている。たが、時に雪の状態がベチャベチャだったり、氷盤が溶けて水が浮いてインプレッションをするのも困難なコンディションだったり、状況は様々だ。だから、タイヤメーカーはこの時期、昼夜逆転でタイヤテストを行なうという話をよく聞く。そんな厳しい環境下で、横浜ゴムも北海道で熱いタイヤの開発を進めている。

総敷地面積91万㎡、東京ドーム19個分の広さを誇る「北海道タイヤテストセンター」

 横浜ゴムは、北海道の旭川とスウェーデンで冬用タイヤの開発を行なっている。旭川のテストコースは、より広い敷地を求めて、2015年に現在の場所へと移転。「北海道タイヤテストセンター(TTCH)」という名称になった。総敷地面積は91万㎡、東京ドーム19個分の広さを有する。

 敷地内には、雪上/氷上の登坂路、円盤のような雪上/氷上の旋回路、勾配のある圧雪コンディションのワインディング路を模したハンドリング路に加え、近年、冬用タイヤの使用速度域も上がっていることから100km/hを超えるスピード(※日本においては法定速度外)で高速走行試験ができる全長2.3kmの圧雪周回路を新設した。スタッドレスタイヤはもちろん、ウインタータイヤやオールシーズンタイヤなど、世界中の冬道を走るタイヤのテストがここで行なわれている。

 そんな施設で私が注目したのが、屋内の氷盤試験路。巨大な体育館のような建物は中央部に柱を持たずして重たい雪にも耐えられる構造や構造部材にもこだわり、乗用車3台が併走できる横幅24m、全長約100mの広さを確保している。コースの手前に立ってみると、より広さが強調され、目の前に広がる氷盤が奥まで続く様子は、やはり特別な施設であることがわかる。

 2020年11月には、アイススケートリンクのように温度調整が可能な冷媒装置を新設。こちらを訪れた際も氷盤のひとつのレーンの氷の色が異なっており、一目で温度差があることがわかった。ちなみに、この施設の規模は国内最大級だという。本当にここまで長い距離に冷媒装置を取り付けることができのだろうか? まずそこから計画は始まったそうだ。

0℃付近の氷盤はピカピカ。

-8℃付近の氷盤は白くツヤがない。

 冷媒装置は、氷盤の温度を-10℃~0℃までコントロールできるそうだ。この日は、冷媒装置を設置したレーンは-8℃で、氷面はマッド感のある白色だった。通常のレーンは自然に凍った状態で0℃付近を保ち、ピカピカだ。視覚ですぐに温度の違いがわかった。

ツヤがある氷とツヤのない氷、どちらが滑りやすい?

 ところで、どちらが滑りやすい状態なのか、ご存じだろうか? 温度の高い0℃のほうがタイヤのゴムと路面の摩擦によって、氷面に水分が発生しやすく(浮きやすく)、より滑りやすい環境を作ってしまう。タイヤメーカーは、氷の上の水分をいかに取り除いて、ゴムを氷盤に接地し、密着させるかを常日頃から研究している。ちなみに、屋外ならこの0℃付近のコンディションを保ちたい場面でも、風が吹くだけで氷の表面温度は変わってしまうから本当に大変なのだ。

-8℃付近の氷盤は白くツヤがない。

「一番滑るところ(路面)で優れているだけでなく、どの氷温領域でも性能を発揮できるタイヤ開発をしていきたいですね。スタッドレスタイヤはもちろんのこと、ウィンタータイヤやオールシーズンタイヤなど、世界で履いていただける冬用タイヤ全般の性能向上にもつながると思っています。テスト設備はどこにも負けていないと思っています」(野呂さん)。

 氷の温度をコントロールできるということはとても凄いことである。冷媒装置の採用目的は、性能テストだけではないのだ。ゴムやパターンの要素がいかに性能に寄与するかを把握するため、様々な温度領域のデータをより多く持つことで開発効率も速度も上げることができる。開発期間を早めることはもちろん、自由度を持たせることもできるという。

横浜ゴム取締役常務執行役員・野呂政樹さん。

ヨコハマスタッドレス史上最高の氷上性能

 昨年の秋に登場した横浜ゴムのスタッドレスタイヤの新商品「iceGUARD 7(アイスガードセブン)」の仕様(ゴムの配合やパターンなど)を決めるためのテストでは、この冷媒装置が活用されたという。実際に、一世代前のタイヤとの制動性能を30km/h→0km/hの速度で比較したところ、新商品のほうが制動距離が短かったことは言うまでもなく、ブレーキが効き始める時の、クッ!と氷に噛みつくような感覚や、完全停止するまでの減速感の頼もしさ、そして安心感がある。深キョンとウルトラセブンがキャラクターとして登場するCMで「ヨコハマスタッドレス史上最高の氷上性能」と謳っていることも十分納得がいくものだった。

「現時点で当社のスタッドレスタイヤは、トップレベルにあるという認識を持っています。もちろん、お客様によっていろんな路面やシチュエーションがあり、そこでは制動性能だけでなく、加速や曲がるといった性能も評価されます。どんな声にも耳を傾けて、どんな時でも当社のタイヤが『一番です』と言われるようになりたいですね。これまでは、開発優先にならざるを得なかったところもありますが、今は必死になってデータを取りまくっています(笑)。取得したデータを分析する精度としては、旧来の何倍にも上がったはずですが、それでもまだデータ取得を継続しています。データのバラツキが少なくなってきたはずなのに、それでもずっと続けています。当社の開発陣は、本当にクルマ好きで、タイヤが好きなんです」(野呂さん)。

 近年、ポルシェ、メルセデスAMG、BMWなどの高性能モデルの標準タイヤを開発しており、実際に採用されていることでも一目置かれるようになった横浜ゴム。名だたるブランドの、ハイスピードの世界で、タイヤの性能を磨いているが、一方で、極寒の旭川では今でも屋外や屋内で様々な冬用タイヤの開発が行なわれている。タイヤの性能向上に賭ける開発者の熱意はホットなままだ。

◆関連情報
https://www.y-yokohama.com/product/tire/

文/飯田裕子(モータージャーナリスト)

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