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「国際基準」は誕生するか?サステナビリティのあるべき姿

2022.02.12

シュローダー「サステナブルファイナンス規制について」

アセットマネジメント企業・シュローダーは、2021年第4四半期のサステナブル・インベストメント・レポート「サステナブルファイナンス規制について」を公開した。

アナスタシア・ペトラキ氏
サステナビリティ インベストメント・ダイレクター

もし今、世界中で次々と現れるESG規制の全てについていくのに悪戦苦闘しているなら、それはあなただけではない。新しく登場するルールの多さに圧倒されたり、もはや脅威を感じる人もいるだろう。

こうした規制の目的を思い出してみよう。経済をより持続可能なものするために必要な投資が確実に行なわれるようにすることだ。

多くの場合、この取り組みは各国がネット・ゼロ目標を掲げるところから始まるが、その実現には相当のコストがかかる。各国政府が新型コロナウイルス対応に関わる巨額の公的債務に直面する今、プレッシャーは民間投資家に降りかかる。

これこそが「サステナブルファイナンス」の本質だ。政策立案者の課題は多岐にわたるが、狙いは常に次の3つ。

投資家が資本を配分するために必要な情報を確実に入手するための企業の情報開示。

どの商品ならサステナブルな活動またはサステナビリティに向かうための活動に資本を配分できそうかを簡単に見分けられるようにするための投資商品に関する情報開示。

何を「サステナブル」とみなすのか、各市場に共通理解を形成するための「タクソノミー」。このレポートでは世界の現状をまとめる。

最も大きな注目を集めているのが、世界に先駆け主に情報開示と報告に基づくサステナブルファイナンスプランを立てたEUだ。

どのような活動を持続可能と認定するかを定義した「EUタクソノミー」が定められている。

企業はこのEUタクソノミーに基づき、コーポレート・サステナビリティ報告指令(CSRD)に従って事業活動の持続可能性を報告することになる。

資産運用会社は企業が報告した情報に基づき、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)に従って商品の持続可能性を報告することになる。

そして、ファイナンシャルアドバイザーは資産運用会社が報告した情報に基づき、MiFID(金融商品市場指令)適合性テストに従って最終投資家と話し合い、その顧客の「サステナビリティ選好」を見極める。

従って、規制の展開はこの順序で行なわれるべきと考えるのが自然だ。

だが、EUタクソノミーはさまざまな理由で遅れが生じている。原子力やガスを環境的に持続可能な活動に分類するのか、加盟国間で激しい議論が繰り広げられていることもその一因。

企業報告への適用開始は2023年以降に持ち越される見通し。資産運用会社が自社商品の持続可能性について報告する方法に関するテクニカルな詳細も、適用されるのは2023年以降だ。

だが2022年1月時点ですでに、資産運用会社はまだ完成していないEUタクソノミーと、自社商品の適合性を、まだ存在していないタクソノミーに則った企業データに基づき、数値で示さなければならない。

そして2022年8月からは、ファイナンシャルアドバイザーが、資産運用会社が報告する、不完全または全く存在しないデータに基づく情報を使って、顧客の嗜好を見極めることになっている。

サステナビリティ情報の流れ:あるべき姿と将来の姿

興味深い点がもう一つある。一部のEU加盟国がEUの規則に独自の工夫を加えたり、追加規則を設けている点。フランス、ドイツ、ベルギー、スペインにこうした動きが見られ、それ以外の国も追随する可能性がある。

ある意味では、遅延が続き、明確になっていないEUの規則を、より分かりやすく解釈しようとする努力の結果とも言える。それぞれの国内市場の違いを明確にしよう(そして、おそらく保護しよう)とする試みと一部は紐付いている。

しかし理由がなんであれ、おそらくこれが行き着く先は(EU規則が本来防ごうとした)市場の細分化だ。

その一方で、英国は企業と金融機関を対象とした気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に沿った報告義務を導入している。

TCFDがあれば、市場はどこで最も多くの炭素が排出されているのかを知ることができ、それに応じて資本を配分できることが原則。

だがサステナビリティは気候変動よりも幅が広く、よって英国の規制当局はサステナビリティ要素を含む形で(ただし定義は未定)TCFDの報告範囲を効果的に拡大するサステナビリティ情報開示要件(SDR)を定める計画も明らかにしている。

英国版サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)とも言えるが、サステナビリティ情報開示要件(SDR)には、EUの政策立案者が意図的に避けたサステナブル投資商品のラベル導入が含まれる点がSFDRと異なる。

2022年に行なわれる審議プロセスの中で詳細が決まる見通し。当然のことながら、英国版タクソノミーの計画も進んでいる。EU版と若干異なる内容になると予想され、2022年に詳細が明らかになるはずだ。

米国では、バイデン政権下で劇的な方向転換が行なわれ、気候変動を重視した新たな政策が推し進められている。前政権下で2021年1月に施行された労働省(DOL)規則の見直しの結果が待たれる。

実際問題として、この労働省規則によって民間の年金基金はサステナビリティ要素を考慮した戦略への投資や環境・社会問題に関する決議の議決権行使が難しくなった。

だが新政権移行後の2021年3月、労働省は規則の施行停止とステークホルダーとの協議を発表した。その後、投資機会の評価や議決権の代理行使の際にサステナビリティ要因を考慮することを受託者に認める改正案が2021年10月に公表されている。

最終結果は2022年前半に明らかになる見込みだが、改正案と同様の内容であれば、相当の資金がサステナブル投資に開かれることになる。

この間、アジア市場も進展がなかったわけではない。単純化しすぎるリスクを承知のうえで言えば、最近の規制の動きはコーポレートガバナンス基準と企業報告の改善が中心だ。

香港のコーポレートガバナンスコードや上場規則の改定がその一例であり、2022年1月からは企業の取締役会の独立性と多様性に関してより厳しい要件が課せられる。

さらに例を挙げると、台湾は上場企業に対してアニュアルレポートにおけるESG情報開示を強化する予定であり、そしてシンガポールは企業にTCFDと取締役会の多様性に関する報告を義務付け、2022年から順次導入される。

アジア市場におけるもう一つの興味深い特徴は教育の重視。これは、香港証券取引所によるESGアカデミーの開設に表れている。

これは、企業と幅広い市場を対象にした一元化された教育プラットフォーム。一方、シンガポールはグリーンファイナンスアクションプランの一環として教育ワークショップやeラーニングプラットフォームを開始している。

関連情報を一カ所に集約する取り組みにも力が入れられている。例えば、韓国取引所は社会的責任債を専門に取り扱うセグメントを立ち上げ、香港では規制当局のウェブサイトでサステナビリティファンドのデータベースが一般公開されている。

シンガポールの規制当局はサステナビリティデータを強化するためのデジタルプラットフォームの試験運用計画を発表した。

一方、中国はEUの協力の下、サステナブルファイナンスに関する国際的な連携・協調を図るプラットフォーム(IPSF)を通じて「コモングラウンドタクソノミー」を始動させている。

これは本質的にはタクソノミーではない。どちらかと言えばEUと中国のグリーンタクソノミーを効果的に比較し、双方向に翻訳するためのツール。まだ開発段階にあるが、もしうまくいけば、グローバルな投資家にとって非常に便利なツールになり得る。

オーストラリアのサステナブルファイナンスは、情報開示よりも気候変動リスクの管理に重きが置かれている。規制当局による最近の大きな動きと言えば、オーストラリア健全性規制庁(APRA)が銀行、保険会社、年金基金を対象に発行した気候変動に関するリスクと機会の管理に関するガイダンスだ。

この点での主な懸念は、気候変動に関する事象が金融リスクとして現れないかという点。例えば異常気象による物的損害について保険会社に保険金請求が殺到するケースが生じれば、保険会社にとっての問題が他の金融市場参加者に波及し、市場をさらに幅広く動揺させる可能性がある。

国際基準の誕生はあるか?

企業報告については多少の希望がある。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の立ち上げはまさに、サステナビリティ評価項目に関するグローバルな企業報告基準を定めることが狙い。

この基準の導入時期は定かではないが、英国をはじめとする各国の規制当局がすでにこれを支持する意向を示しており、大きな期待が持てる。

それに比べると、投資商品の共通基準については期待薄。英国の新しい枠組みの詳細の一部は、すでにEUのアプローチと異なっているものもある。

各市場との開きがさらに広がっても驚くにはあたらないだろう。その一方で、証券監督者国際機構(IOSCO)をはじめとする国際的な規制当局が各国の規制当局のアプローチの統一化に乗り出してもいる。

従い、国際的に認められた基準が導入されない限り(されるまで)、私たちは各地域で独自に構築された枠組みのパッチワークに頼らざるをえない。

現時点で誰が一番うまくやっていて、その結果、誰がESG規制競争の勝者になるのか気になっている人もいるかもしれないが、その答えはおそらく誰でもないだろう。その理由は、誰もこれまでこれを経験したことがないから。

私たち全員がその向こうに何があるかわからないまま、サステナビリティ学習曲線の険しい山を登らなければならないのだ。

関連情報:https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/

構成/DIME編集部

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