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自動運転社会の実現は何年後?通信キャリアが示すコネクテッドカーへの道筋

2022.02.15

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は通信業界との関わりが強い、EV産業の進化について話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策を行っております

ソニーがEV参入を本格検討! 勝機はある?

房野氏:ソニーが、「ソニーモビリティ」を立ち上げて、EVに本格参入するという話ですが、詳細を教えていただけますか?

ソニー「VISION-S 01」

ソニー「VISION-S 02」

房野氏

【参考】ソニーグループポータル|VISION-S

石川氏:いよいよソニーが本気になってきたというのが、CES(アメリカで開催される家電製品見本市)で明らかになりました。もともと2021年12月の段階で、ソニーの関係者から含みのある話を聞いていたので、蓋を開けてみたらEVだった、という形です。

 2年前のCESの時には、あくまでセンサーを売りたいというビジネスモデルだったのが、自分たちでやろうという方向に変わっている印象です。新会社を作って、本格検討という段階ですね。一歩進んではいるけど、ソニーが車を本当に作るかというと、100%ではないかな。

 現時点では、ソニーと車メーカーの考えにまだ乖離があるので、もう数年は様子を見ないといけない。面白いのは、「5GAA」という、5Gを使って車同士を通信しようという業界団体にソニーがいるのはもちろん、アップルもいる。いろいろ噂が出ている中で、アップルも片足を突っ込んでいるので、今後の動向に注目です。

ソニー「VISION-S 02」

ソニー「VISION-S 02」

石川氏

法林氏:結構前だけど、中国の深センに行った時に、僕らがあまり知らないような車メーカーのEV車がたくさん走っていて、すごいなと感じた。

法林氏

石川氏:もしかしたら、EVじゃなくて「コネクテッドカー」というテーマにすべきかもしれませんね。

法林氏:とはいえ、基準はEVじゃないと話は進まないと思うよ。EVが出てきた時に、「部品になっていくから、誰でも作れるようになる」という話があったけど、EVで何をするかを考えた時に、コネクテッドカーが出てくる。すると当然、電気に強い会社が出てくるという流れは、日本や中国、海外でも同様でしょう。

 ただ、石川君の話の通り、方向性の違いはあって、多数のメーカーが同じ方向に向かった時に、「うちは関係ありません」となると困るので、アップルも手を付けているのでしょう。現実的に考えると、車として売るためにはいくつもハードルがある。安全性の話や、ボディ、販路はどうするなど課題はまだまだあるけど、10年後には今と全然違う市場が形成されている可能性もあるでしょう。

 逆にいうと、例えば僕のように、エンジンカーに乗りたいという人も当然います。人それぞれなので、問題はその余地をどこまで残すのかですね。モバイル業界としては、通信の話なのでもちろん関わるけど、どちらかというと「車内エンターテインメント」を狙っている印象もあります。

石川氏:そうですね。例えば、車が半自動化すると、高速道路では運転する人が前を向いていなくても良くなるかもしれない。カーナビに映画を流しても良くなれば、高速道路に乗る2時間で、運転席でも映画が1本見れるようになるかも。であれば、よりいい音で聞きたい、より高画質で観たいという話も出てくるので、ソニーが入っていける余地はあると思います。完全自動化は難しくても、半自動になるだけでこれだけチャンスが出てくるし、EVになって車の構造がシンプルになると、ソフトウエアの話にもなってくるので、ソフトウエアを作れる会社が強くなるかもしれません。

ソニー「VISION-S 01」

石野氏:ソニーがソフトウエアに強いかといわれると、一抹の不安を覚えるところもありますが……(笑)

石野氏

石川氏:ソニーだけだともしかしたら難しいかもしれないけど、PlayStationが絡んでくると面白いかなと思っています。「グランツーリスモ」みたいにいろいろな車の走行データを持っているとなると、それこそソニーの「VISION-S」にフェラーリのようなパッケージを入れると、フェラーリに似たような走行体験ができるとか。かなり難しいとは思うけど、こういう想像が広がるのは面白いですかね。

ソニー「VISION-S 01」

法林氏:だいぶ石川君の希望的観測は入っているけどね(笑)

石野氏:でも確かに、PlayStationはもはやソフトウエアで成功したようなものですが、ソニーとPlayStationは若干分断されている印象もあります。ソニーは一時期「One Sony」といって、各事業の連携を強めていく方針を示していましたが、近年はわざわざ「One Sony」と唱えなくても良いくらい一体感が強まってきている。一方で、PlayStationだけはいまいちというか、まだ“Two Sony”くらいのイメージですね。

法林氏:車業界のコンピューターは組み込み型なので、汎用性のあるソフトウエアが弱かった。例えば、カーナビも初期は通信もできなかったし、今で言うテザリングのような機能にも時間がかかった。車そのものはコンピューターが組み込まれているけど、全体的にパースが遅かったので、コネクテッドカーなどで加速するといいね。ただ、車メーカーがコンピューターのソフトウエア的な進化スピードについていけるのかは疑問ですし、それをユーザーに伝えるメディアも、旧態依然としているところはまだまだある。可能性はあるけど、業界側も大きく変わらないといけないタイミングに来ていますね。

自動運転は課題が盛りだくさん!? 一般ユーザーが利用できるサービスも続々登場!

房野氏:モバイル的に見た時に、コネクテッドカーの定義とはどのようなものなんですか?

石川氏:「ネットで繋がっている」という表現をすると、かなり広義になってしまいますよね。

法林氏:そうなんだよね。例えば、車が衝突した時に、保険会社から電話がかかってくるのもコネクテッドカーと呼ぶ人もいる。かといって、テスラがやっているようなものじゃないとコネクテッドカーとは呼べないという人もいる。範囲がかなり広い単語です。

房野氏:一番先鋭的なコネクテッドカーはどういったイメージですか?

法林氏:やっぱり、自動運転じゃないですかね。

石野氏:自動運転社会実現に向けた「セルラーV2X」のように、車両間の通信をしたり、車の信号を送受信するようなものじゃないですかね。こういったものが、本来クアルコムや通信キャリアが思い描いていたコネクテッドカーですが、長くいわれ続けている割にはいまだにほとんど実現していません。

法林氏:最初に来る可能性があるとすれば、一般の人が乗るような車ではなくて、各社がやっている巡回バスのようなものや、拠点同士を走るトラックなどだと思う。運転手は毎回大変なので、リモートでやろうというのが、免許制度なども含めて整備され始めている状況なので、そのうち出てくると思います。

 その先で、例えば石野君がお子さんを学校に送って行くとか、出勤するという時に、車が自動的に迎えに来てくれるとか、帰宅する時間を登録しておくと、すぐそこまで車が走ってきているといった世界がある。

石野氏:いいですねぇ、それ。

法林氏:でしょ? でもこれを実現するには相当な壁がある。車が石野君を迎えに行ったら、事務所の前でゴミ収集車が作業していたから帰っちゃいました、といったことも起こり得る。全部変えていかなければいけないので、簡単ではないけど、通信をすることで、車同士ももちろん、車とネットワーク、車と持ち主といった関係を変えていくというのは、考え方としてある。

 とはいえこれは先の話で、僕らの生活が変わるということは、まだまだないですね。

石川氏:要は、人が歩く道と車が走る道を完全に別にしないといけない。これを実験的にやっているのが、トヨタの「ウーブンシティ」ですね。あと、先日KDDIや大成建設が発表したのが、西新宿で自動運転の車を走らせるために、トンネルの中はGPSが届かないから、壁に塗料を塗って、LiDARスキャナーを使って位置を特定するといった仕組みです。こうやって一つ一つ街づくりを変えていく必要があるので、まだまだ未来の話という感じですね。

 とはいえ、高速道路だけでも半自動化すると、運転時の疲労感もだいぶ変わりますし、そこは進めてほしい。ただ、自動車メーカー同士がそこまで仲が良いわけではないし、通信業界と車業界の温度差もある。CESでも、クアルコムがプラットフォームを作ると発表していましたが、クアルコムは毎年車関連の発表をするわりに、クルマの世界での存在感はまだ小さい。やりたいことはわかるけど、なかなか溝が埋まらないなと感じます。 。

石野氏:一応、クアルコムの技術はコックピットなどに採用される例がありますね。まだ実験といった段階でしょう。

法林氏:難しい要素としてもう一つあるのは、車の中で扱われるコンピューターはたくさんあるけど、コンシューマーにとって、もっとも身近なカーナビは、車載タイプではなくスマートフォンを使う人が多い。理由は簡単で、地図が更新される。今は新車買っても5年くらいは純正ナビの地図を更新してくれるようになったけど、その程度じゃないですか。ソフトウエア全般だけど、やっぱり課題は大きい。まずはカーナビがスマートフォンと常時繋がる環境を、車の販売価格の中に含めて作っていかないと、コンシューマー的に浸透していかないでしょう。

 ただ、昔はメーターがアナログの針だったのが、デジタルパネルになってきていたり、サイドミラーはないけど周りの映像が画面に映っていたりとか、新しい技術はどんどん実装されてきていますね。日産の「インテリジェント アラウンドビューモニター」は、たくさんカメラを搭載して、周りが見えるようになった。駐車の時に、車がぶつかりそうになると音が鳴るモデルもあるけど、お客さんからすると、自分の車の状態がどうなっているのかを、パッと画面で確認したい。これがまだまだなので、変えていかないといけない部分が多いですね。

ホンダ「e」のサイドカメラミラーシステム

石野氏:そうですね。なのでどちらかというと、さっき法林さんがおっしゃったような、巡回バスとかのほうが、一般コンシューマーが体感できる部分として、有力だなと思います。

 こういったところを通信キャリアも取り込もうとしていて、KDDIはエリア内での定額乗り放題サービス「mobi」を始めています。あれは自動運転ではないんでしたっけ?

KDDI「mobi」

法林氏:自動運転はしてないね。

石川氏:運転は人がしているけど、AIでルートを選定しているといった内容ですね。

法林氏:「mobi」は、通信キャリアの知見が活きるサービスになりそうだなと思います。

石川氏:2021年に横浜でドコモと日産がやった、オンデマンド配車サービスの実証実験は、自動運転でした。運転席に人は乗っているけど、ハンドルは触らなくても動いているような状態。限られたエリアで使うのであれば、買い物難民と呼ばれるような人たちが、手軽に買い物とか病院に行けるようになるので、可能性はあると思います。

法林氏:一般の利用者が車に乗って移動する時の、自転車で移動するくらいの近い距離を狙っているサービスになります。「mobi」はオンデマンドではなくて、巡回する形でミニバンを走らせるので、定額で乗ってくださいというアプローチ。完全なルートバスではないので、通る道の選定が必要だから、AIを使う。全体の3割から4割程度いるauユーザーが、どこを、どのように、何時ごろ動いているかといったデータをマッピングする時に活かせば、時間帯でどこに人が集まるのか、捌けるのかがわかって、利用者が乗り降りする場所を決めていっていける。2022年に豊島区でこれを使ったサービスを開始しますし、これまでサービスの提供をしてきた京丹後市、渋谷区でも、エリアのチューニングなどをしていくでしょう。

 通信キャリアの強みは、人の位置情報、移動する場所の情報を持っている点で、それを車のサービスに結び付けていこうという考え方はありでしょう。

石野氏:人の流れを抑制するためだけに使うものではないデータという感じですかね。

石川氏:例えば、東京ドームでイベントが開催されているという情報がわかれば、終わるころにタクシーを多数配置すれば、みんなハッピーだよねという話ですね。ただ、ドコモのAIタクシーのサービスは終わってしまうので、必ずしもうまくいっていないのかもしれません。

法林氏:今はコロナ禍の状況で、人の流れが平常時とは全く違うから、どこまでそれをやるのかという話はあるけど、コロナを除いて考えると、通信キャリアの位置情報とか、人流のデータはかなり可能性を秘めていると思います。

房野氏:海外でも同じようなサービスはあるんですか?

石川氏:アメリカでいうと、「Uber」とかが車を使って配達をしていたり、ヨーロッパでは一昔前に「HAILO」があって、常に先をいっていますね。日本でこういったサービスをやろうとすると、どうしてもタクシー会社の反発があって、いつの間にかデリバリー配達員が広まりましたね。

法林氏:それでいうと、最近はタクシーアプリが多くあるけど、これはユーザーがどこで乗りたいのかという情報集められるメリットがある。昔は運転手の経験や勘に頼っていたものを、データ化できるので、業者によっては迎車料金がかからないものもある。タクシー業界がどこまでそれを頼っているかというと微妙だけど、タクシー内での決済サービスも、非接触が当たり前になってきているし、アプリを使えば、起動した人の位置情報を掴めます。これも車業界のIT化の一つですね。

……続く!

次回は、ドコモでんきについて、会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

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