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古くからある滋賀県の発酵文化を発信する長浜市の注目スポット「湖のスコーレ」

2022.02.13

東京であっても消滅可能都市とされるエリアが出るほど、人口減少への危機感は都市部であっても持たなくてはならない時代。いかに「魅力的な街づくり」を行うかは、人口の大小を問わず向き合い続けなくてはならない課題です。

滋賀県長浜市での試みは、街づくりの成功事例のひとつとして広く知られています。

1983年に明治時代から「黒壁銀行」の愛称で親しまれていた古い銀行がマンションに建て替えられることに地元有志が反対。保存・活用を目指して第三セクター株式会社黒壁を設立し、「黒壁銀行」を活用した「黒壁スクエア」という商業エリアを1984年につくり、空洞化していた長浜駅前エリアを活性化。オープン前は長浜市への観光客は年間でも1万8000人程度だったのが、ここ10年は年間200万人超が訪れる人気スポットへと変貌しています。

黒壁スクエアの誕生から35年を経て、2021年12月23日にオープンしたのが新たな商業施設「湖(うみ)のスコーレ」です。

湖のスコーレの正面。

「湖のスコーレ」は、長浜市の中心部、多くの観光客を集める長浜曳山博物館の正面に位置する一等地に建てられています。土地は地元の商工会議所の土地所有者が地域の更なる活性化のために提供を協力し、実現しました。

この試みについてついて商工会議所の会頭も「単にモノを売る時代は終わっているのではないか」と発言し、新しい集客の考え方の理解が共有されています。

施設内には空間コーディネーターの石村由起子さんが主催する奈良県の「くるみの木」が、 湖のスコーレのために全国から集め、 また新たに開発した商品が並ぶ「ストア」や、新旧のセレクトされた本が並ぶ「図書印刷室」を展開。 環境に配慮した米糠油のライスインクを使った「リソグラフ印刷機」を設置した印刷室では子どもたちのためのワークショップも実施しています。

図書印刷室2階のギャラリーでは、 日本発のアウトサイダーアート集団としても注目される「やまなみ工房」の協力のもと、ユニークな作品の展示と販売を実施。この場を通じて滋賀県内外のさまざまな地域や福祉施設とも連携した活動を目指しています。

並んでいる商品も木や竹など、自然由来の素材を使ったものが多くを占める。

滋賀県やその近郊のものを中心に、選び抜かれた生活の道具が並ぶ。

オリジナルブレンドのコーヒーも販売。

2階の「やまなみ工房」のアーティストの作品が並ぶギャラリー。

やまなみ工房 山際正己さんの作品。

環境や発酵文化について学べる身近な場に

琵琶湖という日本最大の湖をふところに抱えた滋賀県では、 親しみと敬意を込めて 琵琶湖のことを「うみ」と呼んでいるそうです。そこに、商品を作る人も、 買う人も、 売る人も、 何かを感じることができる小さな学びのきっかけがある場となる、商業開発ではなく文化事業開発を目指す。そこから、ギリシャ語で「学校」を意味する「スコーレ」をつけた、「湖のスコーレ」と名づけられました。

琵琶湖は大都市大阪までつながる関西の水がめ。大阪府出身の筆者も、小学校の頃から琵琶湖周辺の人は合成洗剤を使わないなど規制があり、水源を美しく守ることが生活に根付いている地域だと教えられてきました。環境を守ることにただ意識を向けるのではなく、 この大きな循環の中に自分の暮らしがあると認識することが、 琵琶湖の生態系や身近な環境を良くすることへと繋がっている。それを感じられる仕掛けがこちらの施設では用意されています。

ひとつは、施設の中に食品の製造室を持ち、施設のスタッフ自身が作り手として、 ものの良さを伝えていくこと。 長浜の醸造家のハッピー太郎さんが拠点をこちらに移し、新たなスタートを切った「醸造室」では、麹室で手作りした完熟糀から、 味噌や甘酒を製造。原料には地元の志高く次世代につながる自然派農業を行う生産者の米を使っています。 酒造免許の取得し、どぶろく醸造を行うために実施したクラウドファンディングは目標を早々に達成。今回のオープンに対する期待の高さを伺わせています。

ハッピー太郎さんによるクラウドファンディングのページ

「醸造室」で作られたものを販売する「ハッピー太郎醸造所」。

「ハッピー太郎醸造所」のメニュー

「チーズ製造室」では、竜王町の古株牧場による監修で自家製チーズを製造・販売。

発酵カレーなど伝統食をカフェメニューにて提供

味噌やチーズなど館内で製造したものは商品としての販売だけでなく、館内のカフェ「喫茶室」やテイクアウト専門の「発酵スタンド」で販売する商品にも使われています。

喫茶室のメニューには独特の風味で知られる鮒ずしの飯をアレンジしクリームを添えた発酵カレーや米麹を使ったチーズケーキなどが並んでいます。これは長い歴史のなかで培われてきた発酵文化を現代風に取り入れ、苦手意識を持っている人でもチャレンジできる内容になっています。

「伊吹山発酵カレー」(サラダ付き) ¥1300

「米麴と緑茶のチーズケーキセット」¥680と「ハッピー甘酒いちごスムージー」¥1000

200年前の古民家の木材を使い、10年20年と続く場所をつくる

施設デザインは幅広い世代が訪れ、地元の人が日常に溶け込むような場所を目指し、「空間というよりは風景になるように」と地元の自然な素材をふんだんに使っています。

カフェの床やレジのカウンターなどには、独特の風合いが美しいけやきやアカマツを活用。実はこれらは長浜の200年前に建てられた古民家などの古材を製材しなおし、再利用したものです。長浜の地にいた木を10年20年と受け継いでいく。また違う木の色、壁の色が変わっていくことを感じられる。長くこの施設が続いてほしいという想いも込められています。

喫茶室の店内。

地元・長浜の人たちが日常的に訪れる場所に

今回の事業会社として設立された株式会社湖北ライフスタイル研究所がまずプロデューサーとして招へいしたのは、空間コーディネーターで多くのファンを持つ奈良のカフェ「くるみの木」オーナーの石村由起子さん。そして、石村さんから「滋賀出身なのにこのプロジェクトに参加しないでどうするの!」と声をかけられたD&DEPARTMENTの相馬夕輝さんが携わっています。D&DEPARTMENTで地域の魅力をどうやって発信していくのかなどを20年近く研究してきました。

長浜市は豊臣秀吉が織田信長から戦功により拝領した地に築城した長浜城を中心に歴史ファンが訪れるスポットがあるエリアに位置しています。一方で、「黒壁スクエア」の誕生で観光地として他の地域からの誘客はできていても、地元の若い世代にとって魅力ある場所ではなかったといいます。

「正直なところ僕ら世代は、長浜の市街地にそんなに行くことはありません。土産物店が多くなっていて、観光で来ている方々に向けられている場所だと認識されています。僕はそれは非常にもったいないと思っています。この街並み、お客さんがいなくなった日が暮れてから夜になる、誰も歩いていない光景がとっても素敵なのです。その時間の魅力というのはどういう風にしたら伝わっていくのか、地元が親しみを持っていくにはどういう風に変わっていけばいいのか。観光で来る方々に支えられていきながらも、地元の人たちがちょっと立ち寄れる、特別ではなく日常になっていく場所であると長浜の人たちに思ってもらえるように、育てていきたいと思っています」(D&DEPARTMENT 相馬夕輝さん)

本プロジェクトを主管する株式会社湖北ライフスタイル研究所 代表の月ヶ瀬義雄さんも、コロナ禍に阻まれ延期を経てオープンしたことを想い、感極まった様子で語る。

「この場所が長浜の、そして県外に向けて、5年10年、30年と続いていく場所となることを目的に、そういう場所ってどういう場所なんだろう? 僕のなかでは、“デザインをしないデザイン”というのをコンセプトにやってきました」

湖のスコーレを訪れ、 ここで作られたものを使い、 味わい、 体験することを通して、 それぞれの生活に投影していく。ただ商品を買うのではなく、滋賀県に古くからある発酵文化についてもより一歩深く知ることで、 さらに知りたい、学びたいという想いが生まれていくのでないか。

『「魅力ある地域は魅力ある人々を呼び、その魅力ある人々はこの地域をより魅力ある場所にしていく」というスパイラルアップを念頭に、この湖のスコーレを地域の住民や訪れる人々とともに発展させていきたい』(株式会社湖北ライフスタイル研究所 代表 月ヶ瀬義雄さん)

滋賀県長浜市の銘酒「七本槍」で祝いの鏡開きが行われました。

湖のスコーレ

住所:滋賀県長浜市元浜町13番29号1階
https://www.umi-no-schole.jp/

取材・文/北本祐子

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