
スパイス料理研究家として各種メディアで活躍する、印度カリー子さん。
スパイスカレーのレシピ本も何冊か出しており、「印度カリー子 = カレーオンリー」かと思っていたら、実はそうではない。カリー子さんの守備範囲は、もっと広いスパイス全般にわたる。なので、和洋中問わずスパイスを使うものなら、なんでもOKなのだ。
先般発売された『印度カリー子のスパイススープ 』(世界文化社)は、「カレーでないカリー子さん」のレパートリーを知ることができる貴重な1冊。
辛くはない、ご飯とセットではない、これまでとは一味違うレシピを、本書から3つ紹介しよう。
「にらのエスニックスープ」
本書に収載の約50点のレシピのほとんどには、「胃腸を休める」「整腸・デトックス」「美肌」といった効果がうたわれている。
こちら、「にらのエスニックスープ」の効果は、「風邪のひき始めに」。メインの食材のにらには、アリシンという殺菌作用のある物質が含まれており、にんにくやしょうがには抗酸化作用があるという。そして、スパイス料理の定番ターメリックは、「老化や美肌、血管を若々しく保つための抗酸化物質を多く含む」そうだ。
ほかのスパイスとしてクミンシードを使うが、これは「テンパリング」する。テンパリングとは、ホールスパイスを油で熱して香りを出すこと。油で熱するタイミングは、(具材を加熱する前の)最初の段階、または(食べる直前の)最後の段階のいずれかとなる。このスープでは、最初にテンパリングを行う。
【材料(2人分)】
A[テンパリング]:
油…小さじ1
クミンシード…小さじ1/4
B:
にら(5mmに切る)…1束(100g)
おろしにんにく…小さじ1/2
おろししょうが…小さじ1/2
塩…小さじ1/2
こしょう…小さじ1/4
ターメリック…小さじ1/4
水…250ml
【作り方】
1 [テンパリング]フライパンにAを入れて中火で熱する。
2 クミンシードが泡を立てて全体的に浮かんできたら、Bを加えて中火で1分ほど炒める。
3 水を加えて、ひと煮立ちさせる。
「さつまいものポタージュ」
こちらは、「整腸・デトックス」と銘打たれたスープ。さつまいもは、食物繊維を豊富に含み「腹持ち抜群なのにヘルシー」。ターメリックの色とあいまって、食欲がそそられる。シナモンパウダーは、「スムージーやポタージュなど甘味のある料理と相性がよい」とのことで使われている。
【材料(2人分)】
A:
さつまいも…1本(150g)
ターメリック…小さじ1/4
水…50ml
B:
無調整豆乳…200ml
塩…小さじ1/4
シナモンパウダー…小さじ1/4
【作り方】
1 [下準備] さつまいもは皮をむいて5mm厚さの輪切りにする。
2 Aを耐熱容器に入れて、ふんわりラップをかけて電子レンジ(600W)で4分加熱する。
3 Bを加え、ハンドブレンダーでペースト状にする。
4 さらに電子レンジ(600W)で1分ほど加熱する。
「牛肉のパプリカスープ」
「もぐもぐ食べるごちそうスープ」の1つが、牛肉をふんだんに使ったこのスープだ。グヤーシュというハンガリー料理に、複数のスパイスを加えてアレンジしたという。
牛肉は必須アミノ酸が豊富。そして、ビタミンの宝庫であるトマトと相性がいいとのことで、この2つの食材が主役。使用するスパイスは4種類。クミンシードはテンパリングする。パプリカパウダーはアンチエイジング、ベイリーフは代謝促進、ナツメグは整腸作用があるそうだ。
【材料(2人分)】
A(テンパリング):
オリーブオイル…大さじ1
クミンシード…小さじ1/4
B:
玉ねぎ(くし形切り)…1/2個(100g)
にんにく(スライス)…1かけ
塩…小さじ1
C:
牛肩ロース肉(一口大に切る)…200g
トマト(ざく切り)…1/2個(100g)
ベイリーフ(ローリエ)…1枚
パプリカパウダー…大さじ1
ナツメグ…小さじ1/8
こしょう…小さじ1/8
水…400ml
Kiriクリームチーズ(お好みで)…適量
【作り方】
1[テンパリング] フライパンにAを入れて、中火で熱する。
2 クミンシードが泡を立てて全体が浮いてきたらBを加え、中火で5分ほど炒める。
3 玉ねぎが薄茶色になったらCを加え、1分ほど炒め合わせる。
4 水を加え、沸騰したらふたをして弱火で20分ほど煮る。お好みで、小さくちぎったクリームチーズをのせる。
ここで取り上げたものに限らず、本書のレシピはどれも簡単に作れて、かつおいしい。スパイスをひととおり揃えたら、日常の食生活に取り入れてみよう。
印度カリー子さん プロフィール
1996年11月生まれ、仙台出身。2021年3月、食品科学の観点から香辛料の研究をしていた東京大学大学院を修了。スパイス初心者のための専門店 香林館(株)代表取締役。スパイスセットの商品開発・販売をする他、大手企業とのレシピ開発・マーケティング、コンサルティングなど幅広く活動。公式サイト:https://indocurryko.net/
本書の料理写真/武藤俊介
文/鈴木拓也(フリーライター)