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業績好調の山岡家と餃子の王将、逆境に負けない中華ラーメン店の秘密

2022.02.06

中華ラーメン店の明暗が鮮明になってきました。絶好調なのがロードサイド系「ラーメン山岡家」をする丸千代山岡家と、業界で売上高トップの王将フードサービスです。苦境から抜け出せないのが業界2位のハイデイ日高屋。そして郊外型ラーメン店「幸楽苑」の幸楽苑ホールディングスです。一時大打撃を受けた「一風堂」は戦略を大転換して復活の兆しが見えてきました。飲食店の常識から根底から覆った今、何が勝敗を分けたのでしょうか?

コロナ前の売上高を上回った山岡家

餃子の王将は2022年3月期の売上高を前期比4.0%増の838億5,400万円と予想しています。予想通り着地すると売上高は2020年3月期と比べてわずか2.0%の減少となり、ほぼ同等の水準になります。驚異的なのが山岡家です。2022年1月期の売上高を154億7,900万円と予想しており、コロナ前の2020年1月期の売上高を9.7%上回る見込みです。

日高屋、幸楽苑、一風堂の今期の売上予想はコロナ前の6、7割に留まっています。

■中華ラーメン店チェーン売上高比較(単位:百万円)

※決算短信をもとに筆者作成
王将フードサービス
丸千代山岡家
ハイデイ日高屋
幸楽苑ホールディングス
力の源ホールディングス

業績の差は本業の稼ぎである営業利益を見ると、一層明暗が鮮明になります。

■営業利益比較(単位:百万円)

※決算短信をもとに筆者作成
王将フードサービス
丸千代山岡家
ハイデイ日高屋
幸楽苑ホールディングス
力の源ホールディングス

餃子の王将、山岡家は未曽有の危機に襲われた2020年のコロナ禍においても営業利益を出しています。日高屋は2021年2月期に28億円という巨額の営業損失を出しましたが、2022年2月期はそれを上回る31億円の赤字となる見込みです。幸楽苑も赤字から抜け出すことができていません。幸楽苑はコロナ禍の2020年の夏・冬の賞与の不支給を決定しており、従業員にもその痛みが響くことになりました。

小商圏×リピーターが新常態の飲食店の常識に

各社の業績の差は客数の推移を見ると一目瞭然です。下のグラフは各社直営既存店の客数の推移です。推移をわかりやすくするため、2021年は客数が安定していた2019年との比較です。

なお、幸楽苑は2019年に客数を大きく落としており、それが2020年、2021年10月の客数を跳ね上げる要因になっています。これは2019年10月に幸楽苑の工場が台風19号による水害で操業停止に追い込まれ、150店舗が営業中止になったためです。

■既存店客数の前年比の推移(単位:% 2021年は2019年との比較)

※月次報告書をもとに筆者作成
王将フードサービス
丸千代山岡家
ハイデイ日高屋
幸楽苑ホールディングス
力の源ホールディングス

山岡家は2020年7月には客数を前年の水準まで戻しています。幸楽苑の特殊な要因を除き、2020年4月以降で山岡家の客数を上回るブランドはありません。一人勝ちになった背景には、山岡家の戦略が潜んでいます。

山岡家は全国150店舗以上展開していますが、渋谷や新宿、池袋、上野、恵比寿のような都内の繁華街には一切出店していません。東京都の店舗は新青梅街道沿いの瑞穂店だけです。山岡家は郊外のロードサイド型で広い駐車場を持つ店舗が多く、トラックドライバーや外回りの営業職といった、固定客になりやすい客層を主要なターゲットとしてきました。

また、山岡家はセントラルキッチンを使わずにすべて店内調理です。水と豚骨を長時間煮込むスープはファンが多く、やみつきになるとの声が昔から絶えません。リモートワークで都市部の人通りは途絶え、郊外型、リピート利用の多い店舗が有利になったのです。

日本政策金融公庫の「2020年10月外食に関する消費者調査結果」によると、コロナで外食の機会が減ったとの回答は全体で70.9%を占めています。外食の傾向として、「遠出せずに自宅・職場等の近くで済ませたい」が2番目、「新しいお店よりは行きつけのお店を利用したい」が3番目にきています。山岡家は正にこの2つに当てはまりました。

■コロナ禍の外食の傾向

※日本政策金融公庫「2020年10月外食に関する消費者調査結果

日高屋は繁華街を中心に出店を重ね、コロナ前にちょい飲み需要獲得を推進していました。一風堂も同じく繁華街に出店し、海外観光客の獲得に注力していました。2社の戦略はラーメン業界の常識を変えるものでしたが、コロナで裏目に出てしまったのです。

同じく繁華街に出店する餃子の王将はなぜ、集客力を落とさなかったのでしょうか?

ブランドを確実に成長させていた「餃子の王将」

政府と連携する民間団体として設立され、産業の生産性向上を図る研究団体、公益財団法人日本生産性本部の「日本版顧客満足度指数第1回調査」によると、飲食部門で顧客満足度スコア、麺類を含むカテゴリの1位は「餃子の王将」でした。特に顧客満足で高い数字を獲得しています。

■満足度調査指標別の結果

※日本生産性本部「日本版顧客満足度指数第1回調査

日高屋は、ラーメン1杯390円という圧倒的な価格軸で他社との差別化を図っていました。コロナで外食頻度が減ると、価格を抑えようという意識よりも、好きなブランド、美味しい料理を食べたいという欲望が強くなります。結果として顧客満足度の高い餃子の王将が客離れを防ぐこととなったのです。

餃子の王将には勝因がもう一つあります。テイクアウトです。王将フードサービスの2021年3月期の直営店の売上高735億円のうち、テイクアウトは246億円で全体の33.4%を占めています。2020年3月期にテイクアウトが売上に占める割合は19.1%でした。日高屋は現在でも10%程度に留まっています。王将フードサービスは人材育成に定評があり、変化に素早く対応できる組織力があります。

新たな動きとして期待できるのが一風堂です。運営する力の源ホールディングスは2022年3月期に5億4,800万円の営業利益(前年同期は9億8,000万円の営業損失)を見込んでいます。黒字転換の原動力となっているのが、低投資・早期回収の収益モデルの新型店。横浜泉、岸和田、武蔵小山、松本に出店しています。

一風堂は東京1号店が恵比寿であることから分かる通り、一等地に店を構えて回転数を上げていました。高額な家賃を客数で抑えていたのです。そのビジネスモデルを大転換して低投資型へとシフトしました。小商圏で勝負をかける姿はウィズ・コロナ時代にふさわしいと言えます。

取材・文/不破 聡

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