■連載/綿谷さちこのクレカの強化書
コミュニティ通貨サービス『まちのコイン(アキコ)』が、2022年1月26日から秋葉原地域に導入された。利用できるのはSEGA秋葉原4店舗、神田明神、秋葉原ワシントンホテルなど約30か所。このコイン「アキコ」でいったい何ができる?
『まちのコイン(アキコ)』記者発表会にて。
そもそも『まちのコイン』って何?
『まちのコイン』は面白法人カヤックが提供するコミュニティ通貨(電子地域通貨)サービス。2019年9月に神奈川県「SDGsつながりポイント事業」で採択されて以来、神奈川県小田原市や鎌倉市、福岡県八女市などの地方自治体に加え、民間事業者による導入も含めて、今では1都6県の14地域で利用されている。
14地域、982スポットで導入されている(2022年1月23日時点)。
通貨とは言うものの円に換金することはできず、地域のコミュニティとのつながりを促進するために活用される。例えばコインを使うことで、利用者は自分好みのオリジナルカクテルを作ってもらえたり、シェフに料理のコツを教えてもらえたりと、お金では買えない特別な体験ができる。このような体験を提供することでお店のファンが増え、地域経済の活性化につながる。
利用者はコインを得るために、マイバッグやマイボトルを持参したり、海岸のゴミ拾いをするなど、地球環境に配慮したり、街の活動を手伝うなどの活動を行う。人や街、地球にいいことをしたいと思っても、なかなか活動に移せないものだが『まちのコイン』アプリを使うことでゲームのように楽しみながら、SDGsに取り組んだり、地域の社会課題の解決に貢献できるのも利点だ。
『まちのコイン』アプリ。チャレンジ項目があったり、スタンプが貯まったり、レベルが上がったりとゲーム要素を設ける。
『まちのコイン』は地域内の人のつながりだけでなく、地域外の人のつながりを作ることにも役立つ。例えば鎌倉市では、『まちのコイン』を使ったツアーを実施。一般的な観光地巡りとは異なり、地域のお店や施設で常連のようなサービスを受けられることで、リピーターにつなげる。
鎌倉観光協会の『まちのコイン』を使ったツアーの例。
カヤックの代表取締役である柳澤大輔氏は、『まちのコイン』の体験を街の個性や課題に合わせた設計にすることで、「人と人のつながりを増やし、地域の社会課題の解決や地域経済の活性化に役立てることができます」と言う。
カヤック 代表取締役 柳澤大輔氏。
このような取り組みは一般的には持続が難しいとされるが、『まちのコイン』のコインに換金性はなく、原資が必要ないので継続しやすい。しかもコインを一定期間(最大180日)使わないと失効するので、利用者はコインをもらっては使うを繰り返すことになり、コインが循環し続ける。なお『まちのコイン』の利用料は初期費用無料で、1地域に付き月額10万円。加盟スポットにおいては利用無料だ。
コインには有効期限があり、循環する仕組みになっている。
秋葉原のコイン『アキコ』では何ができる?
地域社会に貢献できる『まちのコイン』。アミューズメント施設を運営するGENDA SEGA Entertainmentによって、1月26日からは秋葉原地域にも導入された。
導入の背景として同社の親会社であるGENDAの代表取締役社長 申 真衣氏は、「昨年10月に長野県上田市の店舗に導入したところ、早々にお客様からとてもいいフィードバックがありました。店側からも『まちのコイン』が集客に貢献しているという話があり、他のエリアでも導入を進めました」と語る。
GENDA 代表取締役社長 申 真衣氏。
今回の秋葉原は同社が4店舗を構える重要な場所。コロナ禍で厳しい状況が続く中、みんなで集まって街全体の価値を上げることを目指して導入に至った。「『アキコ』が秋葉原に訪れるきっかけになれば。目標は今年中に加盟スポット100か所、ユーザー数3000人です」と語る。
『アキコ』の加盟スポットは30か所(1月24日時点)。GENDA SEGA Entertainmentが運営する「セガ秋葉原」の4店舗では、100アキコの支払いでUFOキャッチャー1PLAY無料(1号館)や、ゲームプレイ後に筐体清掃をしてくれたら50アキコがもらえる(3号館、1日限定5件)など、店舗によってさまざまな体験を提供する。
「秋葉原ワシンホテル」では朝食ブッフェ(6:30~10:00、1650円)を食べにきてくれたら200アキコがもらえる。朝食ブッフェの料理が大幅に余った場合、その料理をお弁当に詰めた『TABETE』の購入で100アキコがもらえるなど、食品ロス削減にも努める。
お弁当はフードシェアリングアプリ『TABETE』で随時提供。10種類くらいの料理が入って450円。100アキコももらえる。
「秋葉原ワシンホテル」では外来利用の場合、通常1時間1000円の「コミック読み放題(セルフコーヒー付き)」が500アキコの支払いで利用できるのも魅力。休憩スポットとしても活用できそうだ。
『進撃の巨人』、『弱虫ペダル』、『ONE PIECE』、『鬼滅の刃』など人気タイトルが揃う。
閲覧スペースとなるレストランは12:00~21:00に利用可能。コーヒーが飲み放題。
氷の国をテーマにしたメイドカフェ「リリアンプリアン」では、500アキコの支払いで持参した神田明神の「勝守(かちまもり)」に特別なおまじないをしてくれる。
雪の妖精メイドが「勝守」におまじないをしてくれる。
徳川家康が関ヶ原の戦いに臨んだ際、神田明神の神職に戦勝祈祷をしたところ見事勝利した。そんな江戸時代の由緒にあやかった「勝守」。
そのほか、「秋葉原工作室」では作らないプラモデルを寄附することで500アキコがもらえたり、アニソンダンスパフォーマー「リアルアキバボーイズ」のYoutubeチャンネル登録で100アキコがもらえるなど、集客やファンの拡大、SDGsに貢献するさまざまな体験を提供する。
秋葉原の街の魅力の拡大に『アキコ』がどのように貢献できるのか、今後の展開にも期待したい。
まちのコイン
https://coin.machino.co/
取材・文/綿谷禎子