「印刷技術によって立体物を作ろう」という歴史は意外と古い。1970年代にはすでに3Dプリントの基礎概念が米国の雑誌で紹介されており、80年代になると日本人技術者が新聞印刷の技術を応用して世界初の3Dプリンターを開発した。90年代には近年でもメジャーな「樹脂を薄く印刷して何層も重ねる方式」が生み出されたが、当時は1台数十万円と高額だったため消費者の手には届きにくかった。
一気に普及したのは2010年代のこと。黎明期に生み出された技術の特許が切れたことや、13年2月に当時のオバマ米大統領が演説内で「3Dプリンターが産業を変える」と触れ注目を集めたことなどが要因だとされている。
ECショップなどでも購入可能になるほど普及した3Dプリンターだが、今や〝変革期〟に直面している。他社との差別化を図るべく、個性を強調したモデルを各社が競って発表しているのだ。
もっとも王道とも言える進化が、より高精度に、細かな造形を可能にすることだろう。樹脂を射出するノズルに工夫するメーカーもあれば、左で紹介している『Snapmaker2.0』のように彫刻モジュールを先端に取り付け印刷物を削ることにより、微細な表現を可能にするモデルも出てきている。
印刷に使う「材料」にも特色が出る。業務用だが、「金属3Dプリンター」で印刷(製造)された燃料射出ノズルは、すでに民間航空機に組み込まれている。
ここ数年で研究開発が進んでおり、注目を集めているのが「食品プリンター」だ。そのうち「パンがなければ印刷すればいいじゃない」と言われる日が来るかも?
追加モジュールを使えば、彫刻のほか、レーザー刻印も可能な【精度特化】
snapmaker『Snapmaker2.0』
22万9800円(別売りロータリーモジュールは8万5800円)
全世界で年間5万台以上を売り上げる人気モデル。通常使用なら多くの3Dプリンターと変わらないが、印刷ヘッド部を変更することで、木材のカットや革製品へのレーザー刻印など加工作業にも使用可能だ。さらに別売りの「ロータリーモジュール(上写真)」を装着することで、印刷物を細かく削ることもできるなど、従来の3Dプリンターよりも幅広い〝モノづくり〟が実現できる。
弾力素材で靴も小物も作れる【実用性特化】
ATOMSTACK『Cambrian PRO』
4万2714円
スポーツ用品、自動車部品、電子機器、医療機器など様々な分野での使用が期待されている素材「TPRフィラメント」が使用可能な2.85mmエクストルーダー(ノズル)を搭載。靴本体やアウトソールなど高い弾力性が求められるものの製作に向いている。一般的な3Dプリンターで使われているPLA、TPU、TPE、ABS、PETGといった素材用の1.75mmエクストルーダーも同梱されている。
印刷に使用するワイヤ状のTPRフィラメントは、赤、黄色、黒といったラインアップが別売りで用意されている。
わずか10分。6つのステップで組み立てられる【手軽さ特化】
Creality『Ender 3 S1』
4万9900円
すでに組み立て工程の96%が終了した状態で販売されており、わずか6つの手順により10分で組み立てが可能。倍精度Z軸や超静音ドライバーを備えた32ビットマザーボードなどを搭載しており、使用可能素材も一般的なものをカバーしている。初心者向けとしては十分な性能にもかかわらず5万円を切る〝高コスパモデル〟だ。
取材・文/編集部
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