
■連載/大山即席斎の“三ツ星”インスタント麺
昨年2021年は相変わらずコロナが収束しない中、東京オリンピックはなんとか開催されて新種目で若い力が躍進し、メジャーリーグで大谷翔平が異次元の大活躍をしてMVPに輝くなどの明るい話題もあった。
そんな中、インスタント麺は2020年と同様、いざというときに頼りになる存在であることを継続して証明した。
しかしインスタント麵メーカーも密を避けるためにいろいろと制約があったためか、新規性のある新商品の発売は例年よりも少なめではあった。今回は、そんな一年間に出てきた商品を分類しつつインスタント麺業界を振り返ってみたい。
今回、昨年気になった商品の画像を眺めていて出てきたのは、「2021年のインスタント麺業界は画期的な新商品をほとんど生み出せなかったのではないか?」という疑問である。
一昨年までにもインスタント麵業界ではいろいろなブームがあった。激辛、花椒のしびれ、台湾ラーメン、ラー油そば、にぼし、にんにくなどだ。昨年はそれらに匹敵する大きなブームやトレンドはなかったと感じる。
あえてトレンドと言うなら、ヒットしつつある分野の商品を継続的にプッシュし続けるのがトレンドであろうか。一昨年までに出た商品の再登場が多かった。
主な再登場商品たち。
パッケージデザインほぼそのまま再登場したものだけでなくマイナーチェンジして再登場したものもある。
ただ、インスタント麺業界が新しい物をあまり生み出せなかったということは否定的に考える必要性はない。
料理界全体を見ても、未知の国の定番料理<例 ジョージアのシュクメルリ鍋>を発掘することで新味を出しているが、「おいしくなくてはならない」を前提とするとそうそう画期的な新しいおいしさなど出てくるわけがない。新規性を狙うがあまりに液体窒素や炭酸ガスを使うといった奇をてらった方向に行きがちである。
個人的にはむしろ新商品をいたずらに乱発するよりも、これまでに出したものの中から見込みのある商品を定番に昇格させる努力をしてほしい。
ブームらしいブームのなかった2021年だが、数少ないながら話題を呼んだ新商品もあった。
一蘭とんこつ <エースコック製造>
500円近い高額なのにあえて具なし、という衝撃で話題になったのが一蘭とんこつ<エースコック製造>だ。お店と同じ赤い秘伝のたれが絶品だ。
明星も同様なコンセプトの具なしカップを出している。
日清スーパー合体カップヌードル
カップヌードルの定番8商品を正中線でぶった切って張り合わせたようなコンセプトの4商品。
意表を突いたパッケージだけでなく、味もうまくミックスされていて話題となった。2商品の味をミックスしているわけだが、どの比率でミックスするかが商品化のキモだ。
Sio+カップヌードル=シップードル
シーフード+カレー=シーリー
欧風チーズカレー+チリトマト=チーチリカーマト
豚骨+味噌=とんそ
やおきん日清カップヌードル味うまい棒。
これ、もし単体で買えるのなら一本30円でもジャンジャン大人買いするところなのだが、カップヌードル2個で一本もらえる方式だったので8種類をワンセット入手するにとどまった。そのせいで慎重に食べすぎて味がいまいちわからなかったのが残念。もう一度食べたい。
ペヤング巨大カップ
ペヤングは業界に衝撃を与えた「超超超超超超大盛りのペタマックス」以降も超大型カップを出していて、店の展示スペースを異様に占拠していた。ペタマックスが通常の超大盛りとフタサイズが同じだったのに対して、この年の巨大カップはそれを上回るもので、売れないとかなり邪魔になりそうだなぁと心配になるものだった。大食いユーチューバーなどは喜んだかもしれないが、コレクターとしては保管場所も取るし、かなり悩ましい一品ではある。
カップヌードルのフタのタブがWタブに
SDGs的観点からカップヌードルの底についていたフタ留めシールが廃止され、それに伴いフタのタブがひとつからふたつになった。
タブをミミに見立ててフタ裏にニャンコの絵が描かれていたのも話題で、レアキャラとしてチベットスナギツネもいる。
星野源・新垣結衣結婚
これもインスタント麺業界の大ニュースと言えるかもしれない。
星野源がどんぎつねを振って、チキンラーメンのCMをやっていた新垣結衣を選んだ、と話題になった。その後CMが〔どんぎつね単独→新パートナー→星野源復帰〕となってファンを一安心させた。
鬼滅の刃ブームの広がり
鬼滅の刃の映画が超超ヒットとなったのは2020年だが、インスタント麵のコラボ商品は2021年に多数登場した。
キメツラーメン・鬼滅一丁・キメツラーメンの油そばは同時に13品を出している。特殊パッケージはコレクターとして嬉しいのだが、種類が多くて集めるのが少々しんどいのも事実。
鬼滅の刃以外にも多数のコラボ商品が登場
八村塁
キングダム
ウルトラマン
ユニクロヒートテック
味に関しては大ブームとまではいかないが、すき焼き味等、甘口商品が多めだった。
あとUFOとどん兵衛の味を交換したのも話題となった。
まとめ
昨年も攻めの新商品を出したのは日清とペヤング。ほかの会社はやや守りの商品ラインナップであった印象。
ただ、日清にしても純粋に新規性のあるものもあったが、定番の商品をを合体させたり味を交換するなどしてフルに活用することで目新しさを出そうとしていた。
純粋な新商品や新しいブームが出にくくなっているように見えるインスタント麺業界であるが、それでも貪欲なこの業界のことだ、今後もまた新たな味やブームを生み出して消費者を楽しませてくれることだろう。
最後に、自分的に2021年のお気に入り商品を挙げておこう。
・日清スーパー合体カップヌードルシーリー
カップヌードルシーフードと同カレーをミックスした一品。つゆの味はカレー味が少し優っており、旨みもチキンやポークの肉系がメイン。あさりだしや、かやくのかに風かまぼこといかでシーフード風味を出している。
・ペヤングオムそば風やきそば
ソースは屋台のやきそば風な濃厚で粘度が高めのソースになっている。さらにマヨネーズをかけて出来上がり。かやくはオムレツを意識したたっぷり卵とキャベツ・ニンジン。お好み風の味だ。
・エースコック一蘭とんこつ
麺は意外にも太めのちぢれ麺で。ガッシリシコシコした食感。共に後入れの粉末と液体スープで作るつゆは油の量は多いけど、くどくならない程度にこってり濃厚なとんこう味。最後に真っ赤な「秘伝のたれ」をいれて出来上がり。辛みはけっこう強い。唐辛子の辛さにより油っこくても食べやすくなっている。麺とスープをしっかりと味わってもらいたいため、あえて具なし。
文/大山即席齋