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余力のあるうちに会社をたたむ駆け込み廃業が2022年は増加の見込み

2022.01.24

「あきらめ休廃業」の割合は過去最高に 全国企業「休廃業・解散」動向調査(2021年)

2021年の休廃業・解散は前年を下回る水準が続き、前年比2.5%減の5万4709件となった。緊急事態宣言の発出をはじめとした人流抑制策は、国内の感染拡大を抑え込んだ一方で、旅館・ホテルや旅行会社をはじめとする観光業界、時短営業や外出自粛の影響を受けた飲食店などの対面サービス産業を直撃し、関連産業を含めて経営体力に乏しい中小企業でも休廃業や解散が相次ぐとみられていた。ただ、結果的には政府系・民間金融機関による活発な資金供給やコロナ対応の補助金が休廃業の発生抑止に大きく貢献している。

2021年の休廃業・解散動向 概要

2021年は5万4709件発生 コロナ前から4000件超減も、約4%の企業が退出・消滅

2021年に全国で休業・廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む)は前年から約1400件(2.5%)減少の5万4709件を数えた。2021年初頭から3.76%の企業が、休廃業などの形で同年中に市場から退出・消滅した。20年に続き2年連続で減少し、コロナ前の19年からは4000件超の大幅減少となったものの、減少率は大幅に縮小した。

休廃業・解散件数は減少したものの、大幅に減少した倒産件数(法的整理)に比べると減少率は低いほか、対「倒産」倍率は過去最も高い9.1倍に達するなど、依然として高水準での推移が続いている。

休廃業した企業の従業員(雇用、正社員)への影響は、判明するうち少なくとも累計7万8411人に、消失した売上高は同様に合計2兆2325億円に上った。全ての雇用機会が消失したものではないが、休廃業・解散で約8万人が転退職や離職を迫られた。

休廃業・解散件数 推移

2021年は前年に続き、緊急事態宣言の発出などで国内の経済活動が冷え込み、飲食店や観光関連産業では厳しい経営環境が続き、小規模事業者を中心に「あきらめ型」の廃業が増える懸念があった。しかし、政府による中小企業への迅速な資金供給策、いわゆる「ゼロゼロ融資」をはじめ資金調達環境が良好であったことが功を奏した。また、休業協力金をはじめ給付型マネーも潤沢に供給し、B to C業界を中心に、廃業へと傾きつつあった経営マインドに「待った」を掛けたことが、休廃業・解散の発生を抑制した主な要因とみられる。

資産超過で休廃業・解散する「あきらめ休廃業」の割合、過去最高の62.0%に  

ただ、休廃業・解散した企業のうち56.2%が当期純利益で黒字だった。前年の同割合を0.9ポイント下回ったものの、全調査期間で2020年に次いで2番目に高い水準となった。資産が負債を上回る状態で休廃業・解散となった企業も全体の62.0%と約6割を占め、過去最も高い。このうち、利益が黒字かつ資産超過の状態で休廃業・解散した企業は全体の16.0%と1割強を占めた。財務内容やキャッシュなどある程度の経営余力を残しているにもかかわらず、自主的に会社を休業・廃業、あるいは解散を行った「あきらめ休廃業」の割合がコロナ禍を境に高まっている。

休廃業・解散における 黒字・資産超過の割合

代表者年齢別

「 休廃業」の代表者年齢、平均が初の70歳超え ピーク年代は60代から70代へ

休廃業・解散を行った企業の代表者年齢は、2021年平均で70.3歳となり、初めて70歳を超えた。休廃業・解散を行うピーク年代も高齢化が進み、年代別では「70代」が39.9%と約4割を占めるほか、ピーク年齢も2017年に初めて70歳台に到達して以降、高止まりが続いている。対照的に、経営者のボリュームゾーンとなる「60代」「50代」の割合は、いずれも前年から低下するなど、休廃業・解散企業における経営者の高齢化が顕著となっている。事業承継への啓蒙に加え、事業承継支援の取り組み強化もあり、中小企業では事業承継が進んでいる。

こうしたなか、事業承継がスムーズに進まず、支援から取り残された企業で代表者の高齢化が進み、休廃業・解散を余儀なくされている可能性がある。

代表者年齢

代表者年代別推移

地域・都道府県別

34の都道府県で前年から減少 最も減少率の大きい県は「福井」  

都道府県別の発生状況では、件数ベースで最も多いのは「東京都」の1万2123件で、全国で唯一1万件を超えた。次いで「大阪府」(3604件)、「神奈川県」(3233件)、「愛知県」(3068件)など。全国で1000件を超えたのは合わせて12に上り、前年(14)から減少した。なお、最も発生が少なかったのは「鳥取県」(213件)だった。

前年と比較して、休廃業・解散の発生件数が減少となった都道府県は34あった。このうち、最も減少率が大きいのは「福井県」で、前年から22.0%減少。全都道府県で唯一、減少率が2割を超えた。以下、「大分県」(11.3%)、「愛知県」(11.1%)、「徳島県」(10.1%)と続き、1割超の減少となった県はこの4県のみ。

都道府県別 前年比増減

一方、「京都府」や「青森県」など13の都道府県では前年を上回った。なかでも京都府は全国で唯一の2割増となったほか、青森県も1割超の増加となった。両府県ともに、件数が減少した20年の反動増とみられる。

発生率を表す「休廃業・解散率」では、最も高いのが「東京都」の6.05%で、全国で唯一6%台となった。以下、「神奈川県」(4.52%)「愛知県」(4.13%)と続き、「岐阜県」(4.02%)は政令指定都市を有しない県としては最も発生率が高い。最も低いのは「徳島県」の2.24%だった。

都道府県別

業種別

5業種で減少、小売業は1割超の大幅減に サービス業は2年ぶり増加

前年から減少したのは、「建設業」(6903件)など5業種。特に「小売業」(3672件)は、件数・比率ともに全業種の中でも前年に比べ大きく減少した。前年に増加した「運輸・通信業」は、2021年は一転して減少した。他方、旅館・ホテルや非営利団体(NPO)などを含む「サービス業」と「不動産業」の2業種は前年から増加した。

発生率を表す休廃業・解散率では、最も高い業種は「小売業」の2.18%となったが、前年からは低下した。全業種で最も低いのは、「運輸・通信業」の1.36%。

業種別

旅行産業で「休廃業・解散率」が急激に高まる

業種細分類では、前年比で最も増加したのは「養豚業」(11件→21件、90.9%増)だった。後継者など養豚産業の成り手不足が課題だったなかで、深刻な人手不足を補っていた外国人実習生などがコロナ禍で来日できなくなったこと、飼料高などが重なり、廃業件数を大きく押し上げた。以下、「一般写真業(写真スタジオ)」(19件→36件、89.5%増)、「機械工具製造業」(15件→27件、80.0%増)などが続く。総じて、上位にはサービス業や農林水産関連産業が並ぶ。なお、「旅館・ホテル」(131件→174件)は2年ぶりに前年を上回り、過去5年で最多となった。

業種細分俚位別

前年比で最も減少したのは「家具小売業」(64件→28件、56.3%減)となり半減。以下、「紙・文房具小売業」(42件→26件、38.1%減)、ホームセンターなどを含む「荒物卸売業」(37件→23件、37.8%減)などで、小売業や卸売業など流通産業が中心。なお、飲食店の累計(541件→494件)は引き続き減少し、コロナ前で最も多い2018年(621件)に比べて8割程度にとどまる。

休廃業・解散率では、最も高いのが旅行代理店で5.40%となり、2020年の3.39%を大きく上回る水準となった。「一般旅行業」(3.44%→4.65%)、「国内旅行業」(3.83%→4.08%)を含め、旅行産業の休廃業・解散率が急激に高まった。

「コロナ支援」岐路の2022年 余力あるうち=「駆け込み廃業」増が懸念されるシナリオ

政府による実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資などの資金繰り支援は、倒産同様に、直近の資金繰り破たん回避による短期的な休廃業の抑制に大きく寄与したとみられる。ただ、コロナ禍の影響が強く表れた20年以降、負債より資産の総額が上回る「資産超過」状態での休廃業の割合が高まり、21年は過去最高を記録。また、全体の2割近くを黒字かつ資産超過の企業が占めており、安定した事業継続が可能だった企業の休廃業が目立つ。コロナ禍が長期化するなかで、中長期的な事業の先行きを悲観し、財務内容に余力のある企業が先んじて「あきらめ型」の休廃業を選択している可能性がある。

足元では変異型ウイルス「オミクロン株」の急速な感染拡大を受け、緊急事態宣言の発出など、正常化しつつある経済活動が再度制限される可能性もちらつく。一方、多くの企業では今年からコロナ融資の返済がスタートするとみられ、先行きが不透明な状況で本業立て直しによる「収益改善」と「借入金の返済」というテーマに立ち向かわざるを得ない局面が迫る。こうしたなか、後継者問題や事業改革などビジネスモデルに課題を多く抱えたままの企業では、現状以上に借入金が増える可能性がある追加の金融支援を受けず、余力のあるうちに会社を畳む「駆け込み廃業」が2021年以上に増加するシナリオが最も懸念される。

構成/ino.

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