
副業が予想以上に収入が大きくなり、税負担が大きくなりそうな場合できるだけ税負担を軽減したいものだ。原稿料、印税等に該当する場合には、変動所得として税負担を軽減する制度がある。また、仮想通貨では評価方法を選択することにより軽減できる可能性がある。
副業の確定申告
最近では、インターネットやSNS等に載せる記事作成料、SNS発の漫画や音楽などによる著作権使用料等、会社員でも副業としてこのような収入を得ることができる。
本業が会社員である場合には、このような所得は副業として雑所得の対象となる。
収入が2,000万円以下で、給与以外の所得が20万円以下ならば確定申告は不要だ。
ただ、原稿料、著作権は源泉徴収(収入から引かれる)されている。
原稿料、著作権は1回の支払あたり100万円までの部分は10.21%、100万円以上の部分は20.42%源泉徴収される。
確定申告をした場合、雑所得は総合課税で本業の給与所得と一緒に課税されるため、給与所得に対する税率が上記税率より低い場合は、20万円以下でも確定申告して源泉徴収された税金を取り戻せることもある。
一方、所得が20万円超である場合には確定申告が必要になる。
ここでいう所得とは、収入のことでなく、収入を得るため必要経費を収入から差し引いた金額となる。例えば、収入が25万円あったとしても、必要経費として5万円かかり、所得(25万円-5万円=20万円)が20万円以下となるならば確定申告は不要となるし、必要経費が2万円なら所得は23万円となり確定申告が必要となる。
税負担を軽減できる対象
原稿料などその所得が安定しない所得を変動所得という。
変動所得に該当するのは、以下に限定されている。
・原稿料、作曲料
・著作権の使用料
(他にも漁獲や養殖に係る所得も該当する。)
そして、以下に該当すれば変動所得として、税負担が軽減される。
①上記の所得に該当
②【(前年+前々)×1/2】を超えている
③対象所得-【(前年+前々)×1/2】が総所得金額の20%以上
変動所得となれば、通常の超過累進課税(所得が上がるほど急激に税率が上がる)ではなく、平均課税(超過累進より税率は低くなる)による課税がされる。
例えば、インターネットで漫画を投稿し書籍化となり、100万円の著作権による所得を得た場合、前年の漫画投稿による所得が10万円、前々年が20万円、給与所得300万円(給与所得控除後)だとしたら、
①該当
②(10+20)×1/2=15<100万円
③100万円-15万円=85万円≧(300万円+100万円)×20%=80万円
e-TAXで確定申告をする場合には、所得、所得控除を入力した後に変動所得を入力するところがある。特に計算する必要はなく、前々年、前年のその変動所得にかかる所得、今年の変動所得を入力すればよい。
仮想通貨取引
仮想通貨取引も副業として行っているなら雑所得となる。20万円以下の所得であれば確定申告不要となるが、超えている場合は確定申告が必要だ。
雑所得として総合課税の対象となり、給与所得に上乗せされ超過累進課税で課税される。
また、課税は売却時だけでなく、他の通貨交換したとき、通貨のまま何かモノを購入したときも課税対象となることに注意したい。
仮想通貨は、仮想通貨取引内での損益通算、また副業していれば雑所得と仮想通貨の損を相殺することができる。ただし、先物取引に係る雑所得(FX等)、株式取引にかかる譲渡所得と相殺することはできない。また、仮想通貨での損を翌年以降繰り越して翌年の利益と相殺することもできない。
仮想通貨は、申告期限の3月15日までに仮想通貨毎に取得価額の評価方法を選ぶことができる。取得価額は所得計算時に売却代金と取得価額との差額が利益とされるので、重要な価格となる。評価方法には、総平均法と移動平均法があるが選択しない場合は自動的に総平均法となる。
・総平均法
単純に価格を数で割って計算する方法。
例)1=100万円を2コイン、1=120万円を3コイン、1=150万円で2コイン売却、1=160万円を2コイン購入(年末に5コイン保有)
(100×2+120×3+160万円×2)÷(2+3+2)=126万円(1コインあたり)
売却した取得価額は(100×2+120×3+160万円×2)-(126万円×5)=250万円
所得は(150万円×2)-250万円=50万円
・移動平均法
購入、売却毎にそのときの取得価額を移動させていく方法。計算は煩雑。
例)1=100万円を2コイン、1=120万円を3コイン、1=150万円で2コイン売却、1=160万円を2コイン購入
売却したコインの取得価額(100×2コイン+120万円×3コイン)÷(2+3)=112万円(1コインあたり)
(100×2コイン+120万円×3コイン)-112万円×2コイン=336万円
年末保有資産の取得価額336万円+160万円×2コイン÷(3+2)=131万円
所得は(150万円×2)-(112万円×2)=76万円
上記例により総平均法、移動平均法のどちらにするかにより大きく所得が変わることがある。所得が小さくなる評価方法を選べば税負担を軽減できることになる。
上記例のように売却後に仮想通貨価格が上昇したときには、総平均法によれば取得価額も高くなる。実際には売却して利益となっているため実態としては移動平均法の方が近いのかもしれないが、税負担を考えるとこの場合では総平均法の方が有利になる。逆に、売却後下がってそのとき購入すればこれと逆の現象が起きるため、計算してみてどちらが有利か考えて確定申告するのがおすすめだ。
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フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。