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賛成のドコモと反対の楽天モバイル、電波オークションをめぐる現状と課題

2022.01.25

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は携帯電話用周波数の割り当てをオークション方式にするべきか否か、話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策を行っております

総務省の割り当て方に不満が出ていた

房野氏:総務省は「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」で、周波数の割り当てに対してオークション方式を検討しています。これについて解説していただけますか?

房野氏

石川氏:デジタル化が進んで送受信されるデータ量がますます増えていく中で、電波がまだまだ足りない、周波数を整理して割り当てましょう、という話になっています。6G時代に向けて電波を割り当てる状況の中で、電波オークションが注目されています。まぁ、昔から議論はありましたが、欧米のようにオークション方式を導入するかという方向で進んでいます。検討会ではまず、各携帯電話会社へのヒアリングが行われて、ドコモは「いいんじゃないか」という反応です。

 オークションって、過去、3Gが始まる前は欧米などで採用されていたんですが、金額が上がってしまい、オークションでお金を使ったキャリアは設備投資ができなくなり、その結果、3G導入が遅れたという経緯があります。そういったことから、日本ではやめた方がいいという機運が続いていたんです。ただ、欧米もだいぶ変わってきて、オークションできる金額の制限である〝キャップ〟を最初に入れることによって、それほど高額にならずできるようになっています。無理がなくなってきたので日本でも取り入れてはどうかということで、現在はNTTドコモが賛成側に立っています。一方、それに対して反論しているのが楽天の三木谷さん。「そんなことをしたらNTTドコモが強いに決まっている。ウチは大変なんだ」と……。

楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長最高執行役員 三木谷 浩史氏

石川氏

房野氏:さすがに、そこまではおっしゃってないのでは……(笑)

法林氏:いや、それに近いニュアンス。行間には本当にそう書いてある(笑)

法林氏

石川氏:日本の周波数割り当ては、その周波数帯がいくらの価値があるかというのを各キャリアが試算して、値付けをして、それによって審査されて決まるというプロセスがあるので、半分オークション的な感じにもなっているんです。なので、今のままでいいんじゃないかという意見もある。

石野氏:ドコモの主張の行間を読むと……行間どころか資料からもありありと思いが伝わってきたんですが、「総務省が一社を贔屓しているんじゃないか?」という考え方がすごく伝わってきます。

石野氏

石川氏:過去にも、「このタイミングだと、この事業者に割り当てられるよな」という、なんとなくの雰囲気があって決まっていくということが多々あったんですよ。UQコミュニケーションズ対Wireless City Planningとか。

石野氏:携帯ではなく放送ですが、NOTTV対MediaFLOとか(ともに携帯電話向けのマルチメディア放送サービス)。

房野氏:ありましたねぇ。

石川氏:ということがあったりして、総務省の意向通りにコトが進んでいる。例えば、「このタイミングではA社に電波が割り当てられるので、C社さん、ごめんなさい」みたいな感じになるんだけど、次のタイミングではC社に割り当てられて、「A社さん、ごめんなさい」みたいになっている。いいタイミングで電波が割り当てられるという、この状況がおかしいんじゃないかっていう声が上がり始めている。だから、それをどうしようかという議論をしているところです。判断する際に金額設定の比重を重くするのかとか。今も金額は設定するけど、評価項目もあって点数付けするという形になっているので見直そうという話です。

オークションにも懸念点がある

法林氏:競争環境を作るというお題目があるので、それはそれでいいと思うんですけど、最初に石川君が説明したように、ヨーロッパはオークションのせいで、いわゆるナショナルキャリアと2番手が財務的にボロボロになってしまった。それを立て直すのに10年近くかかっている。オークションは競争するという意味合いではやる価値があるだろうけど、それでキャリアの体力が落ちて、「携帯電話料金が来月から値上げです」となったらどうするのかという懸念もある。これ、実は正解がないんです。今のような、審査項目をチェックして選ぶ方式がいいのかというと、審査内容に不透明な部分がある。ちょっとやり方が難しい状況ではある。

石野氏:総務省は政策を進めたいのか、電波を公平に割り当てたいのか、ちょっと目的がぼやけている感じで、「だったら資金力で解決したい」というドコモの言い分は、気持ちとしてはわかるんです。ただまぁ、法林さんや石川さんがおっしゃっている通り、欧州での失敗の歴史がある。キャップを設けて、「同じ轍は踏みませんよ」と言っているんですけど、「ホントかなぁ」という不信感も、ちょっとある。結局ドコモが常勝しちゃいました、ドコモの電波だらけになっちゃいました……ということにもなりかねない。

 ドコモとしては「一社を有利にするな」っていう牽制の意味があるのかなという気がするんですよ。一方、楽天にしてみれば、「携帯電話事業に参入したばかりなのに、資金力で決められたら勝ち目がないじゃないですか」と三木谷さんが怒る気持ちもわからないではない。

法林氏:わかるよね。体力勝負になったら、ドコモというか、NTTグループに対して勝ち目はないわって思うよ。

房野氏:世界的な潮流はオークションが主流なんですか?

石川氏:先進国はオークションが多いんじゃないかな。アメリカはゴリゴリにオークションです。

法林氏:キャップを付ける(オークションの金額の上限を設定する)ことは、結構、カギにはなると思うんだけど、じゃあキャップのラインにみんな並んじゃった時はどうするの、みたいな話もある。キャップを付けて、必要以上に高騰しないようにするというのは当然あると思うんですけど……ルールとか再設計するのは最終的には総務省。その状況において、「じゃあ、ハイ、オークションをやりましょう」と言って「うん」と言えるのはNTTさんだけ。KDDIは無駄なお金を使いたくないから、まぁ、どちらでも対応できるみたいな感じだし。

房野氏:ちなみに、電波使用料は税収になっているのですか?

法林氏:もちろん。

石川氏:今は総務省が電波を割り当てる強い立場なので、キャリアは逆らえない。なので、総務省に「携帯電話料金を値下げしろ」と言われたら従うしかない。電波を割り当てるところでの主従関係がはっきりしちゃっている。ただ、これが本当にオークションになったら、「電波を買っているのだから口出しするなよ」という風になり、それは健全なのだろうかって気もしている。キャリアは、「お金を払いたくないから言うことを聞きますよ」みたいな感じもある。この関係性が変わってくると、面白いなと思います。

 先日、法林さんと一緒に業界関係者と会って話していた時に思ったのが、国際ルールに則ってきっちりと日本の電波をキャリアに渡さないと、メーカーが困るというか、独自仕様になってしまうと非常に大きな影響が出る、ということ。典型的なのが、バンドn79と呼ばれている4.5GHzの周波数帯。あそこは日本で1つのキャリア(ドコモ)にしか割り当てられていなくて、海外の端末メーカーがその周波数に対応することを渋る、という話をしていました。だから、海外でいい端末が出ても、n79に対応しないことが起きてしまう。結果として、いい端末が日本に入って来にくくなる。国際的に使われている周波数を、複数キャリアに渡していくことが重要なんですけど、総務省はあまりそういうスタンスになっていないような気がします。

房野氏:各国で、利用している周波数は違いますよね。

法林氏:基本的に、各国が周波数免許を発行しています。ヨーロッパもEUが発行してるわけじゃなくて国が発行している。でも、例えば、A国はこの周波数を携帯電話で使っているけれど、隣のB国では無線LANに使っていましたって訳にはいかない。

房野氏:でも、そういうことはありえますよね。

法林氏:だからこそ、3Gの時に「みんな、3Gで使う電波は2GHz帯で統一しましょう」ということになった。国ごとにバラバラだった時代がある。ただし、ヨーロッパはGSMで比較的共通。それでも何種類かに分かれていた。

房野氏:ヨーロッパの国々で周波数を分けるとか、そういうことをしていたんですか?

法林氏:それは全然関係ないです。それぞれの国がそれぞれに発行していた。そうすると、「ウチはこの辺の周波数を使うけど、よそはこの辺を使う」みたいなことが起こりえる。

房野氏:国境近くだと同じ周波数で重なっちゃうかもしれない?

法林氏:国境近くは、電波が重ならないように国同士で協議する。衛星から電波を出す場合も調整が必要です。

電波オークションよりも大事なこと

房野氏:周波数の割り当て方法は、トレンドとしてはどちらに向かっているのですか?

石川氏:キャリアや有識者の意見をヒアリングして、今、まさに議論しているところです。

法林氏:電波政策は、端末や基地局の仕様が、できれば世界と同じ方がいい。3Gの時にそれを目標としてやったけど、それからもう20年経っている。ローカルバンドを基本的に消していくことは、割とやられているけれど、そうは言いつつ以前ミャンマーに行った時は、300MHzとか400MHzのすごく低い周波数が使われていた。

房野氏:電波が届きやすくていいんじゃないですか?

法林氏:いや、スピードが全然出ないので善し悪しなんですよ。

房野氏:データをたくさん送ろうと思ったら、高い周波数帯を使うことになると。

法林氏:「周波数を高くすればいいじゃん」と言われるんだけど、高い周波数帯の扱いは難しいんです。40年くらい前、GHz帯を利用した一般の無線機なんて、ほとんどなかった。当時はアマチュア無線が盛んだったけど、430MHz帯の無線機が今のA4ノートパソコンの半分くらい。アンテナも含め、まだ小さい無線機というか、端末が作れなかった。それが半導体を含め、いろんな技術が進歩したことで、今はこんなに小さい端末の中に、GHz帯の電波を送受信できるようになった。そんな簡単な話じゃないですよ。

房野氏:話を戻して、日本の周波数オークションは……

石川氏:まぁ、ドコモが賛成にまわっているというのは、何かしらシナリオが書かれているんじゃないのかなと。

法林氏:そう思っちゃうよね。

石川氏:と考えると、オークションを実施する方向になるんじゃないかなという気がしています。

 ドコモが賛成している理由として言っているのが、今後の割り当てはプラチナバンド云々よりも、もっと高い周波数帯がメインになってくると。衛星からの電波を使いましょうとか、6Gに向けて特定の場所で電波を使うようになるとか、必要とする周波数帯がそれぞれキャリアの戦略によってばらけるのではないかと。なのでオークションでいいんじゃないかという意見です。そっちの方向が落としどころになるのかなって、ちょっと思っています。

房野氏:端末メーカーさんは何か考えているでしょうか。

石川氏:メーカーはキャリアが利用する周波数帯に対応するしかない。

法林氏:どこの周波数を割り当てるのかという話は、石川君が言ったようにグローバルと調整していかないといけない。日本だけ「ここの周波数が空いているから割り当てます、どうですか?」というのは、たぶんもうダメ。オークション方式自体の賛否両論が相当あると思うんですけど、周波数をどう割り当てるのかという話は、相当大事な話。

石野氏:オークションだと、あまり使い勝手のよくない周波数を割り当てようとすると、経済価値がないので誰も手を上げないとか、「ついでに(安い金で)もらっておくか」みたいな感じになる可能性がある。総務省も真剣にやらないとコントロールできなくなりますし、岸田文雄総理大臣が言っているような「2023年度に5Gの人口カバー率9割」なんて到底、不可能になる。

石川氏:オークションで周波数を割り当てても、一切活用しない、設備投資しないということが起きてくる可能性もあるので、「割り当てるからには、ちゃんと整備しなさいよ」という条件を付けなきゃいけない。電波の有効活用という面からすると、色々面倒くさいことも起こる気がします。

房野氏:電波使用料って年単位で決まっているんですか?

法林氏:確かそうです。

房野氏:1年ごとに契約更新という感じですか?

石川氏:契約更新じゃないけれど……

石野氏:周波数を利用できる免許の期限は一応決まっていますよね。今のところはケータイの契約みたいに自動更新になっているんですが、それを再契約の時にちゃんと審査して、使っていない周波数を整理したり、「使いたいキャリアがいたら、きちんと考慮しろ」と主張しているのが楽天モバイルですね。

法林氏:そこは政策の在り方だよね。電波政策とは少し切り離して、きちんとした環境を作る必要がある。デジタル庁かもしれないけど「グローバルと周波数を合わせます、端末の仕様を合わせます」ということを含めて考えていく時期かもしれません。

……続く!

次回は、スマホのチップについて会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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