
いつでもモチベーションを上げられる人の秘訣
新しい仕事に取り組むとき、「最初こそ一生懸命取り組んでいたものの、時間とともにやる気が下がってきた」経験はありませんか?その一方で、「ゲームに夢中になりすぎて、気づいたら朝になっていた」「小説にハマって、昼も夜も食事を忘れて読み続けた」。そんな体験をした人もいるのではないでしょうか。
「人が何かの活動に没頭する」状態のことを、心理学用語で「フロー」といます。この「フロー状態」にあると、モチベーションを長く維持することにつながります。これまで5000社以上のコンサルティングや取材を経験している、マネジメントコンサルタントの川嵜昌子さんにモチベーションとフローについて話を聞きました(以下、川嵜さん寄稿)。
「モチベーション」を生み出す2つの要因
「モチベーションを自由自在にコントロールできたらいいな」と思うことはありませんか? 実際、モチベーションをうまくコントロールできる人もいますが、反面、「難しい」と感じている人が多いのではないでしょうか。
モチベーションは、いったいどのように生まれるのでしょうか。実は、ここには2つのポイントがあります。1つは、ゴールや目標が「いつまでに、何が、どうなっていればよい」と具体的であること。もう1つは、自分自身が「これならできそう、やってみたい」と思うこと。この2つがそろうことで、モチベーションが生まれます。
カナダ・ビクトリア大学のピンダー教授によると、このモチベーションを発生・継続させるには、その対象や目標に対して「いつまでに、何が、 どうなっていればよいのか」具体的なゴールが必要だといいます。
たとえば 「いつまでに〇〇試験に合格する」といった明確なゴールがあれば、人はそれに向かって努力できます。逆に、ただ漠然と「頑張れ」と言われても、何に対してどう頑張ればよいのかわからないため、なかなかモチベーションは上がりません。
“ちょうどいい”目標を立てればモチベーションもアップする?
「仕事でモチベーションが上がらない」といったときの原因の1つに、「なにをやったらいいかわからない」ことがあります。たとえば、売り上げ目標や納期は決まっているものの、具体的に何をやるかが明確になっていない時です。新卒や転職したばかりなど、これまでのやり方を知らない人にとっては、何をどうすればいいのかわからず、行動できなかったりしますし、これまでのやり方でクリアできそうにない目標や納期の場合も「なにをやればいいの?」と動けなくなります。
「やるべきことが明確でない」場合は、上司や前任者、仕事のできる人に相談して、具体的な方法を明確にしましょう。さらに、ゴールからやるべきことを導き出し、タスク化することが大切です。その際、「頑張れば達成できる」レベルにまで落とし込むこと。高すぎる目標は「自分には無理だ」とやる気をなくしてしまうことにもつながります。逆に簡単すぎる場合も、「単調でつまらない」と感じて、モチベーションが上がらないということにもつながります。
逆に、今自分ができるレベルよりちょっと上で、頑張ればできるものに設定することで、タスクをこなし、それがきっかけでモチベーションがあがり、さらには「フロー」に持っていくことができます。
レベル47の僕、あと少しでアイテムゲット!これを仕事に取り入れるには?
「フロー」を最初に提唱したのは、アメリカのクレアモント大学院大学・心理学の教授チクセントミハイ氏。彼の著書『フロー体験入門――楽しみと創造の心理学』(世界思想社)によると、フローは「遊びの性格をもつ何かをしているときにこそ、最も楽しく、わくわくし、さらには有意義である体験が起こる」と説明しています。
実は、このフロー体験はハマるゲームの特性と共通しています。 フロー体験は、「目標が明確で、迅速なフィードバックがあり、そしてスキル(技能)とチャレンジ(挑戦)のバランスが取れたぎりぎりのところで活動している時」に起きます。
たとえば、ロールプレイングゲームをしているとき、現在のレベルが47で、レベル50になったら新しい武器が手に入るとします。そうなった場合、「面倒だな」と思っていた作業にも集中するようになり、レベル50になるまでゲームをやり続けるでしょう。このとき頭の中でフローを体験しているのです。仕事もゲームと同じです。仕事のタスクをゲーム化し、フローに乗ることができれば、いつも以上にサクサク動けるはずです。
チームの士気を上げるために真っ先に上司がやるべきこととは?
この「フロー」状態をできるだけ長く維持するためには、「迅速なフィードバック」や「すぐに結果が手に入る」ことが重要です。フィードバックがあれば、何がよかったのか、もっとよくするためには次に何をしたらいいか。逆に、悪かった場合は、何を改善すべきかがわかります。
もしも、これを読んでいるあなたが管理職の立場だった場合、部下に即座に何らかのフィードバックを返すこと。また、顧客や取引先からもなるべく早くフィードバックを得られる仕組みにするとよいでしょう。
逆に、フィードバックをしないと、部下のモチベーションが下がることにもつながります。たとえば、「ゲームで目標レベルにまで到達したけれど、もらえると思っていたアイテムがいつ手に入るかわからない」場合、「本当にこの方法でよかったのだろうか」と不安になるでしょう。また、次の目標に対しても「がんばったところで、ご褒美のアイテムがもらえないかも」と思えば、モチベーションは下がってしまいます。
逆に、あなたが部下の立場であれば、必ずしも上司が常にフィードバックをくれるとは限りません。そんなときはどうしたらいいのでしょうか。
「上司が評価してくれない」ときの対処法
「せっかく仕事をがんばっても、上司が何の評価もしてくれない」「フィードバックがないため、この方向でよかったのか。努力した甲斐があったのかわからない」という人もいるでしょう。こんな時、どうしてもモチベーションが落ちてきますよね。しかしながら、実際の仕事の現場などでは、よくあるケースです。そんなときに「周囲のせい」にしていたら、いつまでたってもステップアップできません。こんなときは自分自身でフィードバックをしましょう。
たとえば、いつもやる作業はどのくらいの時間がかかっているのか、改善したことによってどのくらい速くなったか。売上目標があれば、最終目標に対して今はどのくらい売上げているのか。「先月」「1年前」と比べて、完成度合いはどの程度上がったかなど、自分でデータを取って記録してみます。
そうやって、自分の仕事を自分自身で可視化して、評価できるようになると、他の改善点なども見えてきて、積極的に取り組めるようになります。それにより自然と仕事のレベルがアップしていくのです。
ここまでできるようになれば怖いものなし。つねにモチベーション高く、フロー状態を作り出せるため、上司や職場環境に頼ることなく、どの会社でどんな仕事をしても高い結果を出し続けることができるようになるのです。
文/川嵜昌子
マネジメントコンサルタント。長崎市生まれ。東京のベンチャー企業の創業期メンバーとして立ち上げに携わり、自社の急成長、東証一部上場という経験を得た後、独立。5000社以上の経営者に取材およびコンサルティングを行なう。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会参事。著書『自分をサクサク動かすセルフマネジメント』他。
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