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コロナ禍で浮き彫りになった都市分断、未来の都市の在るべき姿とは?

2022.01.17

現代において、価値観の違いや、性別、人種などによる分断や差別が社会課題となっているが、さらにコロナ禍で深刻化しているといわれる。中でも、問題になっているのが、都市の在り方だ。パンデミックに際して弱さを見せた都市。都市から地方へと人々は移動しつつある。一方で、進むスマート化。今後、都市はどのように進化すべきだろうか。

先日、三井不動産株式会社、一般社団法人 UDCKタウンマネジメントが中心となった柏の葉イノベーションフェス実行委員会主催のイベント「柏の葉イノベーションフェス 2021」が開催された。千葉県柏市において進められている「柏の葉スマートシティ」という課題解決型のまちづくりに関するイベントだ。そこで行われたクロストークの一つ「FUSION of people より良い未来の共創へ、都市にできること。」の内容と、三井不動産へのインタビューをもとに、現代、問題となっている分断や分断への対策、未来の都市の在り方についてみていこう。

コロナ禍で浮き彫りになる現代社会における大きな「分断」

慶應義塾大学 環境情報学部教授 ヤフー株式会社 CSO 安宅和人氏

クロージングトークに登壇した、慶應義塾大学 環境情報学部教授で、ヤフー株式会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)を務める安宅和人氏は、現代社会における「分断」について、次の多くの課題があると述べた。

●分断

1.貧困…無産層 or not
2.Gender…female、male、non-binary
3.教育層 or not
4.Generation…シニア層 or not
5.Disabled or not
6.富の創出…GDP vs Capital
7.産業…Old, New, 第三種人類
8.AI-ready or not
9.都市 vs 疎空間
10.Desaster-ready/pandemic-ready or not
11.異人 or not

現代においては、貧困やジェンダー、教育などさまざまな分断があり、途方もない問題だと述べた。

そのうち、都市と疎空間の分断は、世界中で起きているという。疎空間がなくなる。都市にしか向かわなければ都市しか残らなくなる。これは良いのだろうか? という問題がある。

新型コロナウイルスだけでなく、これからもパンデミックはやってくる。それに対応するために、都市において密に行ってきた人類は、どうしても開放に向かう必要がある。いま、逆分断が起きている状況だ。

これらのさまざまな分断に対して、多様性と捉えてどう価値に変えていくのかが問われている。

●分断を乗り越えるには?

さまざまな分断が紹介されたが、分断の課題に対して、今後、どのようにとらえていけばいいのか。そして、どのように意識を変えていけばいいのか。

これに対して、安宅氏は、「障害を持った人などはマイノリティではなく、リードユーザーである」「いろんな人に対応するものを作ることは、社会のアップデート。当たり前のように富ががんがん、生まれるはずなんですよ」「異質を取り込むことで社会をよくするという圧力は、今爆発している。その技も増えている。そこをどんどんやっていくと素敵な未来になるというそれだけの話だと思います」と述べた。

これからの都市の在り方とは?

都市は、分断やコロナ禍の問題を受け、今後どのような在り方を目指していくべきか。

これから、都市づくりについては、どのような考え方や視点が必要になるか、について安宅氏は「都市はめちゃくちゃ効率がいい。とにかく効率がよくなるようにできている。ただ、明らかに2つ問題がある」と、次の2つの問題を挙げた。

1.パンデミックに超弱い

根本的に、都市とパンデミックは相入れないという。都市は圧倒的に密に作られていて、パンデミックに弱い。

2.ディザスターにも弱い

温暖化にともなって台風が増えているが、滝のような雨が降るなどのことが爆増するという。100倍級のものが起きてもおかしくはないという。そうしたディザスターに対して、都市は弱い。

これらの問題に対して、真剣に対策を考えなければならないという。

新しい都市づくりが進行中「柏の葉スマートシティ」とは

トークの中では、現在、開発が進められている柏の葉スマートシティについて紹介された。

●柏の葉スマートシティとは

柏の葉スマートシティとは、「世界の未来像」をつくる街として、未来の課題解決型まちづくりを推進するもの。この地球にどこまでもやさしい「環境共生都市」、日本の新しい活力となる成長分野を育む「新産業創造都市」、すべての世代が健やかに、安心して暮らせる「健康長寿都市」という3つを軸に進めている。

街づくりを担うのは、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)。その構成団体は、柏市、首都圏新都市鉄道、柏商工会議所、田中地域ふるさと協議会、東大、千葉大、三井不動産と、公・民・学が連携して行われている。

環境への取り組みでは、人と環境が共存していける未来型の環境共生都市を目指している。柏の葉ならではの豊かな自然環境を地域資源として活かしながら、「省エネ・創エネ・蓄エネ」、次世代交通システム、緑化プログラムなどの整備を通じて、災害時にもライフラインを確保する。

●柏の葉スマートシティの課題について

柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)センター長 東京大学大学院新領域創成科学研究科 研究科長・教授 出口敦氏

すでに先進的な街づくりが順調に進められている柏の葉スマートシティだが、課題についても紹介された。

柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)センター長を務める、東京大学大学院新領域創成科学研究科 研究科長・教授の出口敦氏によれば、近代都市計画として、効率がいい都市を作っていたが、それでは限界があるということがわかってきたという。例えば、オフィス街だけをつくっても、週末、人がいなくなることから、犯罪が増えるなどしたからだ。

そこで、柏の葉スマートシティでは、「働く場所」と「住む場所」と「学ぶ場所」をいっしょにつくっていこうというチャレンジャブルな課題を問おうとしているという。

現代の都市の課題と柏の葉スマートシティにおける解決

その他、都市づくりにおいて、現代ではどのような課題があるのだろうか。それを探るべく、柏の葉スマートシティ開発に関わる三井不動産の、柏の葉街づくり推進部 主事 西林加織氏にインタビューを行った。

――現代の都市には、どのような課題がありますか?

「日本に限らず、世界において先進国の最大の課題は『孤独』です。現に日本でも昔に比べて独居世帯・2人世帯が急増しており、親子・孫の3世帯同居は激減し、江戸時代以降あった町や村などの共同体文化が喪失されつつあります。これは社会経済的に見れば極めて深刻な不経済社会の出現となっています。例えば、昔の下町は外出するときは鍵をかけずに出かけており、周囲の人が部外者を自然とチェックしていました。届け物の際に留守をしていれば、隣の人に預けるだけで済んでいたのです。

しかし、現代においては監視カメラや警報装置等によるセキュリティ対策や宅配便の再配達問題等に、極めて膨大なコストがかかっています。AI・IoT・ロボティクスがなくても自然に無理・無駄のないシェアリングエコノミーが成立していましたが、現代はコミュニティの喪失による孤独や限られた資源の浪費を招いています。分断社会も深刻化し、様々な問題が起きています。これこそが、現代の都市における最大の課題と考えています」

――柏の葉スマートシティは、その課題をどのように反映し、どのように革新的な都市にしようとしていますか?

「人間社会において、無理・無駄を極力排除し、人々がウェルビーイングで幸せな日々を享受できる街をとことん追求する、それが柏の葉スマートシティです。保有からシェアリングへ、そうすることで資源の浪費は抑えられます。GDP成長率にとってはマイナスになりますが、人々の暮らしの幸せ度数は圧倒的に高くなると考えます。分断社会も、自然と解消されていきます。そういう社会を作る場がスマートシティであり、最先端の技術だけを追い求めるのがスマートシティではないと考えています。

ただしシェアリングエコノミーをより効果的・効率的に推進するには、手段としてAI・IoTの技術も必要になります。幸せな街づくりこそが真のスマートシティ。これは昔ながらの、日本の互助共助の精神に依拠しています。これらが実現することで、現代社会の課題である孤独も解消され、笑顔の絶えない新たな共同体の実現が期待できると考えています」

コロナ禍を受け、さらに都市の課題は大きくなっている。そうした折に、柏の葉スマートシティのような新しい都市の開発が進められていることは、とても期待が高まる。新しい都市の姿がどのようにできあがるのか、ぜひ注目していきたい。

【参考】柏の葉スマートシティ

取材・文/石原亜香利

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