
視点を変えて「深い」成功をつかめ!
新年に今年一年の目標を設定しよう、あるいは部下や新人に目標を立てさせようという人も多いだろう。SNSなどでも「今年一年の抱負は…」などと盛んに流れてくるのを目にする。
最近まで、「目標は具体的に設定するほどよい」というのが定説だった。しかし最近は、こうした具体的目標に着目する方法は副作用が多いため、目標ではなく過程に着目したマインドセットを持つほうが良いと言われはじめている。具体的目標設定の副作用を知り、過程に着目してより「深い」成功を手に入れる方法を習得しよう。
具体的な目標設定には副作用がある!
「モチベーションを上げ結果を出すには具体的に目標を立てるほどよい」という話は、どこかで耳に挟んだことのある人が多いかもしれない。具体的目標設定の効果の高さは、多くの研究で示されている。しかし、具体的に目標設定をすることの副作用も指摘されてきている。この副作用とは、ハーバード・ビジネス・スクールによる論文『Goals Gone Wild(英語の要約文はこちら)』によると以下のとおりだ(意訳は筆者による)。
組織メンバーへの副作用
・パフォーマンスを低下させる
・重要だが具体的でない目標から注意を逸らさせる
組織全体への副作用
・メンバー間の対人関係を損なう
・組織文化をむしばむ
・危険で非倫理的な行動を動機づける
この論文では、こうした副作用のリスクは、目標設定自体によるベネフィットを上回る可能性があるとしている。
具体的な目標設定に副作用がある理由
具体的な目標設定に副作用がある理由は、目標を達成することだけに注視してしまいがちになるところにある。
たとえば、「今年は手取り収入1000万円を目指そう」とガッチリ目標設定し、この目標の達成に向かって必死に努力するフリーランスの人のことを考えてみよう。
この人は、努力しても思うように手取り収入が上がっていかない場合、目標を達成したいがあまりに無理のある働き方をしたり、達成できない自分を過剰に責めてメンタルの調子を崩したりするかもしれない。場合によっては顧客を騙すような商売をする、脱税をするなどの非倫理的な行為に手を染めてしまうかもしれない。
これは極端な例だが、先に挙げた論文ではこのようなタイプの具体例が複数掲載されている。
目標の達成でなく「努力の過程」を重視しよう
では、目標設定において、目標設定の副作用のリスクをできるだけ低減しつつ、ベネフィットだけを手にするにはどうしたらよいのだろうか。
ひとつの方法として、「目標の達成という結果ではなく、『努力の過程』に目を向ける」ことがある。
目標の達成は「できた・できなかった」が明確なのでわかりやすい指標だが、同時に、目標達成に着目することは外的価値に左右されることでもある。
外的価値とは、自分の内側ではなく外側にある価値のことだ。社会、世間などから受ける評価に基づいた価値のこと。このため、社会や世間の状況が変わってしまった場合などに、外的価値に基づいている人の自己評価は大きな影響を受けることになる。昨今のコロナ禍による社会経済の停滞により、多くの人が収入や社会的成功の目減りを経験し、追い詰められた人がたくさんいたことがその一例だ。
努力の過程に着目すると、このような社会状況下でも「収入は下がった/事業はうまくいかなかったが、自分はこういったことをこれだけ努力した」といった形で自己評価とモチベーションを保つことができる。こういった態度を「内的価値に依拠する」と言う。
過程に着目するとより「深い」成功がやってくる
自分の努力の過程に着目し、内的価値に依拠するようになると、世間の状況変化に動じず、しなやかで強い態度でいられるようになる。こういった、ストレスや傷つきに対する抵抗力や回復力のことを心理学の用語でレジリエンスと言う。
「目標の達成」という結果に目を向けることをあえてやめる。そして、社会的成功よりももっと深い「自分が人生上で最も大事にしたいこと」を掘り下げ、そのために努力を重ねる毎日の過程自体を大事にしてみよう。
掘り下げの過程で、自分の出世欲の裏には、家族への愛、あるいは誰か人生上の重要な人に認められたい、などといった想いがあったことに気づく人もいるかもしれない。たとえば、「1000万円の手取り収入を達成したかったのは、そうすれば家族を十分幸せにできると思ったから/あの人に認めてもらえると思ったからだ」など。
こうした掘り下げができれば、あなたは1000万の手取り収入があってもなくても、人生から幸福を得られるようになるかもしれない。すなわち、「家族を幸せにする/人に認めてもらうにはたくさんお金を稼ぐ以外の方法もたくさんある」といったことに気づき、ありのままの自分を肯定できる。より本質的で飾らず、心身に無理のない人生を手に入れられる可能性があるのだ。
文/ヒルダ
自身の豆腐メンタルを克服しようと情報を集めまくっているうちにやたらとメンタルヘルスに詳しくなってしまったライター。