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在宅医療や介護領域のDXが社会にもたらすメリットと未来

2021.12.28

各業界で進むDX(デジタル・トランスフォーメーション)。在宅医療介護領域でも同様だ。

在宅医療介護の現状課題に対して、データやデジタル技術はどう解決に役立つのか、そして働き手やサービスを受ける側にとって、どのようなメリットが生まれるのか。

日本で在宅医療介護領域のDXの先端を走る企業、株式会社ウェルモの代表インタビューや、最近の在宅医療介護テックの新トピックスを紹介する。

在宅医療介護DXの必要性

(画像はイメージ)

DXとは何か。2018年12月に経済産業省が発表した「デジタル・トランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」において、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている。

少子高齢化や人口の減少が進む日本において、持続可能な社会の実現には、一人一人の生産性を向上させることが必要不可欠であり、そのためにICTや先端技術の活用が求められる。

●介護事業者の課題

2021年11月30日、在宅医療介護領域でAI・IoTを活用したDXプラットフォームサービスを展開するウェルモが、20.4億円のシリーズC資金調達、東京海上・凸版印刷との資本業務提を発表した。

厚生労働省、経済産業省、総務省、文部科学省にて講師や委員等を務めた経験もある、株式会社ウェルモ 代表取締役CEOの鹿野佑介氏は、介護業界の課題や、その解決を目指すための自社の事業について、記者会見で次のように述べた。

【取材協力】

鹿野 佑介氏
株式会社ウェルモ 代表取締役CEO
一般社団法人日本ケアテック協会 代表理事。東京大学 高齢社会総合研究機構 共同研究員。大阪府出身。ワークスアプリケーションズにて人事領域のITコンサルタントとして勤務。その後8か月間にわたり、仙台から福岡まで、約400法人超の介護事業所にてボランティアやインタビューを実施し、福祉現場の働きがいに課題を感じて2013年ウェルモを創業。Forbes JAPAN 2018 NEW INNOVATOR 日本の担い手99選出。 経済産業省主催ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2019にて最多受賞。

介護業界は事業所数と種別が多いという「複雑さ」が課題だ。全国の介護事業所数は約22万件で、コンビニの約4倍。その運営主体の推定90%程度が中小企業であり、54種に渡るサービスの複雑さも相まって、経営効率の悪さや情報の不透明性へとつながっている。

中小介護事業者の特性を活かした地域密着のサービス提供は重要ではあるものの、人事機能を有しないことによる人材採用・育成の遅れや業務の属人化、情報システム部門を有しないことによるICT化対応への遅れなどの課題が目立つことも事実である。

また、今後は高齢者人口が減少に転じる社会への備えと、社会保障費の抑制という観点から、政府による「施設から在宅へ」「病院から自宅へ」という政策転換が推進されており、病院のベッド数削減および在宅介護のサービス量拡大の傾向が強まっていくと考えられる。

この在宅介護の要となる専門職であるケアマネジャーも大きな課題を抱えている。ケアマネジャーは、約11兆円規模の在宅介護サービスの利用プランを作成する重要な役割を担っているが、 厚生労働省の調査結果では、「自分の知識・能力に不安がある」と感じている割合が64.0%にも上る。また、年々資格試験の受験者数が減る中で、平均年齢は50.6歳を超えており、人材不足も深刻化している。

●介護事業所等の地域資源情報のデータベースを提供

こうした課題を受け、ウェルモは、介護の地域資源情報を集約するプラットフォーム「ミルモネット」を中心に、介護事業所が抱える経営課題・運営課題の解消、ケアマネジメント業務のDXにつながるソリューションを開発・提供している。

ミルモネットは、約15万9,000件の介護サービス情報が掲載された、ケアマネジャー等専門職向けのWEBサイトだ。同サイトに掲載されている介護サービス事業所は、管理用アカウントを取得してユーザー事業所となることで、写真やサービス詳細情報を追加する機能を無料で使用することが可能となっている。

ユーザー事業所は、主要展開エリアとなっている政令指定都市(福岡市、横浜市、札幌市、大阪市、堺市等)と東京都の一部を中心に、現在、全国333自治体に広がっており、累計1.6万件を超えている。

特にコロナ禍では、利用者のインターネットだけで細かい情報を確認したいというニーズが高まり、事業所内の各部屋やトイレの写真までもが網羅されていることも功を奏した。月間の新規登録件数も急増し、新型コロナウイルス感染症の発生直後半年間と比較すると、直近は10倍近いスピードになったという。

これまで、介護事業所のデータベース化は他企業もチャレンジはしてきた。そうした中、ウェルモはなぜ成功したのか。

鹿野氏は、「現場に寄り添うことを大事にした」と述べる。システム開発にあたっては、仙台市から福岡市まで、約400事業所へのボランティアやヒアリングを重ね、展開にあたっては、各地域において中心的役割を担っている現場の方々と対話を繰り返し、介護事業所を集めた説明会で丁寧に質疑に応じる等、人の命を預かっている介護事業所で働く人たちの深い思いを理解しながら進めていくことを重視したという。

●介護職の就職支援サービスも

ウェルモは、このミルモネットのデータベースを活用し、介護職に特化した人材サービス「ミルモわーく」の展開も進めている。

厚生労働省の「平成27年 第4回社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会」で提出された資料によると、「過去働いていた職場を辞めた理由」は、1位「結婚、出産・育児 31.7%%」、2位「法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった 25.0%」、3位「職場の人間関係に問題があった 24.7%」となっており、2~3位は、介護事業所のマネジメント課題だ。

実際、「やりたい職種や働きたい職場だと思って入社してみたが、期待した内容と異なり、不信感やストレスを感じて辞める」というケースは、退職理由の典型となっている。その背景として、介護業界の慢性的な人材不足によって、介護人材市場は過度な売り手市場になっている。結果的に、人材紹介事業者の斡旋によって、一度の面接のみで採用につながるケースが多く、仕事のイメージと違った現場のチームマネジメントや組織戦略の課題解決に失敗し、退職に至るケースが多い。

このような介護人材市場の課題に対して、ミルモわーくでは、ミルモネットのデータベースを活用することで、求職者と介護事業所のマッチングを図りやすくしている。具体的には、ミルモネットに登録されている対応可能な症状やリハビリテーション、レクリエーション情報等、各介護事業所に関する細やかなデータを活用することで、求職者の性格や希望に合った事業所を提案することが可能となる。

実績としても、介護人材紹介サービスを経由した介護職員の平均離職率に対して、ミルモわーくでは、1/4程度に抑えることができている。このマッチングノウハウをAI化する開発を進めているところだ。

●今後の介護サービス利用者のメリット

そしてこのほど発表されたのが、東京海上ホールディングス株式会社や凸版印刷株式会社との新たな資本業務提携だ。ウェルモが保有する在宅介護ビッグデータ×AIのノウハウや在宅介護プラットフォームと、各社が保有する技術・製品等を掛け合わせることで、新規性の高いシナジーの創出を目指すという。

鹿野氏はインタビューに対して以下のように答えた。

「弊社ではこれまで、介護の地域資源情報を集約するプラットフォーム『ミルモネット』のほか、ケアプラン作成支援AI『ミルモぷらん』等のサービスを通じてケアマネジャーを支援することで、利用者本位の最適なケアが行き届く社会を目指して参りました。これらの事業は引き続き注力して参りますが、今後は介護が必要になる前の元気な高齢者や、まだ軽度の高齢者に対して、介護予防や重度化防止の効果が得られるサービスの開発を進めています。具体的には、ミルモネットのデータや、弊社で現在研究開発中である高齢者の身体状況を予測するAIのコア技術と、資本業務提携先各社の専門領域を掛け合わせて、高齢者の生活支援におけるニーズの発掘や行動変容につながるサービスの開発を進め、利用者本位の介護の実現を目指していきたいと考えています」(鹿野氏)

●介護事業所の働き手にとってのメリット

また、DXが加速する介護事業所の働き手にとっては、どのようなメリットが生まれるだろうか。

「ケアプラン作成支援AIの『ミルモぷらん』は、厚生労働省の調査事業(※)において、新任ケアマネジャーの基礎力の底上げ、業務効率化(ケアプラン作成時間が35~40%削減)、ケアマネジメントの質の向上について、一定の効果が確認されました。

また、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の『令和3年度 ロボット介護機器開発等推進事業』に採択されている『居宅内モニタリングシステム(仮)』は、AI技術を用いた高精度電力センサーによって独居の要介護者の生活リズムを可視化することで、より実態に即した介入やケアプランの作成・見直しができるようになり、高齢者の自立支援・重度化防止や介護事業者の生産性向上の実現が期待されています。

これらは一部の例ですが、弊社では、介護の質を担保しながら、生産性を高めることができるプロダクトを開発することで、利用者に寄り添う時間と心の余裕を生み出すことを目指しています」(鹿野氏)

※令和元年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「AIを活用したケアプラン作成支援の実用化に向けた調査研究」

在宅医療介護領域DXが順調に進めば、今後、働き手や利用者にもメリットが増えていく。ぜひ今後の事業に期待したい。

在宅医療介護テックの新トピックス

在宅医療介護の分野では、他社もIoTやITを用いて様々な機能を提供している。ここでは新しい在宅医療介護テックの新トピックスを紹介する。

●パナソニック 在宅介護をIoTセンサーで支援 2022年度中の事業化へ

パナソニックは、赤外線人感センサーや扉の開閉センサーなどのIoTセンサーを利用して高齢者の生活実態を把握するシステムを構築し、そこからケアマネジャーがケアプランの原案を作成する機能を備えたソフトウェア開発を行った。すでに実証実験を行なって、2022年度の事業化を目指している。

ケアマネジャーらが生活実態を把握できれば、高齢者の状況に応じた支援を提供しやすくなると考えた。

実証実験では、IoTセンサーにより、高齢者の排せつリズムの改善や、家族の介護負担の軽減にもつながったという。

●ゼスト 在宅医療の訪問スケジュール最適化による経営改善クラウドサービス

株式会社ゼストは、在宅医療の訪問スケジュールを最適化することで経営改善をはかることができるクラウドサービス「ZEST(ゼスト)」を2019年10月より運営している。

ZESTはスケジュールや訪問ルートの単純な自動化ではなく、希望の訪問時間や訪問スタッフの性別希望といった“利用者側の要望”と、医療スタッフの技能スキルやスタッフの勤務時間など“訪問者側の事情”をすべて考慮した全体最適化技術(特許取得済)が特徴です。訪問スケジュールを自動作成でき、移動効率の最適化・訪問件数アップに貢献している。

訪問件数を2倍以上に増やすことも可能で、訪問医療の人手不足問題解消に貢献する。

そして今年、訪問診療における初めてのZEST導入が、愛知県の松前内科医院で実現した。訪問スケジュール作成をIT化し、月20時間以上の工数から残業ゼロを達成。同時に、間違えないようにチェックしていた精神的な負担も軽減した。

在宅医療介護業界の課題は山積だが、それぞれに対応するサービスも増えている。今後、さらにDXが促進され、働く側も利用側も双方が快適な在宅医療介護が実現される未来を期待したい。

取材・文/石原亜香利

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