2021年はスマホのカメラが大きく進化した。それを牽引したのが、多くの光を取り込めて精細な写真が撮れる、1インチのイメージセンサー。最新スマホ『AQUOS R6』へ搭載したシャープに開発の背景を聞いた。
ライバル機種を大幅に上回る売り上げ!*1 国内外から久々の大反響
シャープ『AQUOS R6』
実勢価格約13万9800円(SIMフリー端末)
1インチセンサー搭載端末。約6.6インチのディスプレイには『AQUOS R』シリーズ初となるOLEDを採用した。画面の書き換え頻度を秒間1回から240回に自動で切り替えられ、省電力と表示のなめらかさを両立。指紋センサーが3D超音波式で、読み取りが速いのも特徴だ。
〈 開発者はこの人!〉
シャープ 通信事業本部
パーソナル通信事業部 事業部長
小林 繁氏
同社のスマホ部門を率いる事業部長として『AQUOS』シリーズの企画・開発に携わる。携帯電話時代からの知見を生かして『AQUOS R』シリーズの立ち上げ、『AQUOS sense』を大ヒットに導いた。
デジカメのハードとスマホの処理能力を高次元で融合!
1インチのセンサーを搭載した理由は、スマホが本当のカメラデバイスへと進化している中で、カメラの原点に立ち返ろうと思ったからです。デジカメに使われるような1インチのセンサーを入れれば、スマホのカメラがデジカメを超えられるのではないかと。当社の強みであるデジタル画像技術と組み合わせることによって、従来のスマホとは全く異なるカメラ体験を提供できるものになると考えました。
実際に搭載してみて、どのあたりが大きく変わったのかといえば、撮った写真を見ると、雰囲気や空気感まで伝わってくるようになったんです。技術的にいうと、ダイナミックレンジが広がったため、低いISO感度でもしっかり撮れます。明るい場所は明るく、暗い場所は暗いながらもつぶれない。結果として、木の陰にある葉っぱなどまで残り、雰囲気が伝わる写真になるのです。
センサーが大きくなると、スマホの本体に収めるのが大変になるのではないか……といったことも言われる中、開発初期に技術メンバーがラフに設計してみたところ、やはり全く収まりませんでした。光を正確に届けるためにはレンズの厚みが必要になります。カメラメーカーのライカカメラ社と一緒に取り組み、6枚構成のレンズを1枚増やし、薄型化しました。当社ではカメラモジュールの事業部があり、部品をコツコツと小型化できたのも大きかったですね。
ひとつのカメラで超広角から望遠まで対応する発想も、今までのスマホになかったと思いますが、超広角に1インチの全域を使うというコンセプトが決まった段階で、(通常画角の)広角はいらなくなりました。
最後まで迷ったのはズームです。もともとの画質が高いので、クロップ(画像の一部を切り出し)してもある程度はきれいに残せます。今まで培ってきた超解像の技術も生かすことで、デジタルズームでも数倍程度なら満足のいく画質で撮れるようにしました。
シャープは時々こういった大きな反響をいただくことをやります(笑)。反響がドカンとあるのは、切り口を大きく変えた時ですね。カメラの数を減らして感度をひたすら追求する、今までになかったアイデアが受け入れられたと思っています。
高コントラストでインテリジェントなOLEDディスプレイ!
1インチのセンサーは目の前の情景を忠実に収められる
センサーは高級コンデジと同サイズで、シャープの従来モデルが搭載していた1/2.55インチと比べると約5倍の面積。ピクセルピッチが拡大すると取り込める光の量が増え、暗所でのノイズが減ったり、明暗差の大きな場所でも撮りやすくなったりするなどのメリットがある。
【ヒットの方程式】
カメラの原点に立ち返りつつこれまでのスマホにはなかった新たな切り口を導入し国内外で大きな話題に!
*1 BCN調べのデータに基づく
取材・文/石野純也
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2021年11月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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