小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

【今月の一冊】深緑野分の紡ぐ物語たちに震撼する傑作「カミサマはそういない」

2021.12.29

『カミサマはそういない』

 深緑野分はすばらしい。2013年に、短篇集『オーブランの少女』でデビュー。15年には『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補に。アメリカ人コック兵を主人公にしたのも斬新なら、ミステリー仕立てのリーダビリティー高き物語の中に戦争の愚を描ききり、反戦と反差別の意志を明確にした姿勢も凜と美しく、受賞を逃したのが無念でなりませんでした。でもって第2弾が、第160回直木賞にノミネートされた『ベルリンは晴れているか』。

 舞台になっているのは1945年のベルリン。17歳の少女アウグステが、恩人の不審死をめぐる謎を解くために、ナチスのプロパガンダ映画が製作されていた撮影所がある地へと赴きます。その道中を描く間に、アウグステの誕生から敗戦間近に至るまでの物語を挿入。善と悪、罪と罰、正義と不義、真実と虚偽のグレーゾーンを描くことで人間の多面性を伝える筆致が見事な小説で、直木賞を受賞できなかった結果が納得できません。

 一部の選考委員が今でも日本人が主人公じゃない小説は認めないらしいのですが、つまらない純血主義で日本文学の可能性を狭めないでいただきたいものですねっ。

SFやミステリー、ホラー、そして希望を描く

 最新刊『カミサマはそういない』も超オススメ。深緑野分という作家のポテンシャルの高さを示す、異なる読み心地の7つの短篇が収録されています。

 負け犬ループからひとり抜け出した仲間に向ける憎悪のありようが、ヒリヒリするほどリアルな手ごたえで迫ってくる「伊藤が消えた」。神無月をモチーフにした怪異譚「朔日晦日」。終わりなき戦争の実相が判明した時の絶望と虚無感が圧倒的な「見張り塔」。ネット社会の闇を、アクロバチックな構造で描いた「ストーカーVS盗撮魔」。年に1回放たれる太陽の厄災によって生じる時空の歪みを、レトロSFのタッチで描いた「饑奇譚」。

 スティーヴン・キングが読んだなら大絶賛の帯文を寄せるに違いない傑作ホラーが「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」です。無人の遊園地。観覧車のゴンドラの中で目覚めた14歳の〈僕〉が発見する4つの死体。追いかけてくるピエロ。フラッシュバックする自分の死の光景。永遠に出ていくことができない恐怖のループ。……あまりの怖さと見事なストーリーテラーぶりに、トヨザキ感服つかまつり候の巻なのでありました。

 最後に置かれた「新しい音楽、海賊ラジオ」は清々しい読後感を残す逸品です。50年前の〈災厄〉で多くの陸地が海に沈んでしまった列島に生きる少年〈僕〉。ラジオから聞こえてくるのは陸府放送やニュースで、配信される音楽は陸民の好みを分析したものばかりという状況に倦(う)んでいた〈僕〉が、オリジナル楽曲を流す〈海賊ラジオ〉の存在を知り、発信地を探しにいく。その冒険を描く中、自由と多様性を志向することで閉塞感を打破しようとする若者の姿が頼もしく立ち上がってくるんです。ああ、今のわたしたちに必要なのはこの希望なんだ。そう思わせてくれる上々の物語になっています。

 深緑野分はすばらしい。もっと多くの人にこの作家の魅力が伝われば……。それもまた、希望。

『カミサマはそういない』

著/深緑野分 集英社 1540円

『カミサマはそういない』

豊﨑由美
飲食店でアルコールを供してもよくなったので、早速、いきつけの店に行って、おいしいつまみと焼酎を堪能してきました。しっかり予防を続けるので、どうか「第6波」が来ませんように。

あの世界の始まりと終わり【編集部イチオシの3冊】

『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』

原案/下駄華緒 漫画/蓮古田二郎 竹書房 1210円

『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』

■ いつか来る最期の様子を予習?

「人生最後のしめくくりをしてあげられる素晴らしい仕事」ではあるが、その裏側は全く知られていない。そんな火葬場での職体験のコミックエッセイ。人の焼ける様子、火葬場での人間模様、霊体験……衝撃の連続だ。

『ビートルズ』

著/北中正和 新潮社 858円

『ビートルズ』

■ いつか彼らを超えるために

解散してから50年近くたっても、いまだに支持され続けているビートルズ。楽曲はもちろん、地理的、歴史的なルーツもひもとき、改めてその人気の理由と歴史的意味を探っていく。入門書としても楽しめる1冊だ。

『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』

著/別所宏恭 クロスメディア・パブリッシング 1628円

『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』

■ 変わらなければ成功はない

すでに日本のビジネスは「高品質で安く」の時代ではない。「いかにして高く売るか」へと舵を切るべしと説く著者。そのための質の高い情報の集め方、生かし方などを丁寧に解説し、次世代のビジネス成功者へと導く。

文/編集部

※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2021年10月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。

興味のあるジャンルを登録して@DIMEをもっと便利に!話題のコーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」やAmazonギフト券が当たるキャンペーン実施中

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2021年12月16日(木) 発売

DIME最新号の特別付録は「10インチデジタルメモパッドPRO」! 特集は「ヒット商品総まとめ」、「2022トレンド大予測」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。