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ネタバレなし!マトリックス直撃世代による新作「マトリックス レザレクションズ」レポート

2021.12.17

1999年の秋、僕は中学生だった。 

ぶらぶらと街を歩いていると、ちょうど映画館から1人の中年男性が出てくる場面に出くわした。 

その男性は、全身に異質なオーラを滾らせながら街を睨みつけ、次の瞬間、「ザシュ、ザシュ」と口で足音を鳴らしながら颯爽と雑踏に消えて行った。 

今見たばかりの映画に対する興奮が、おじさんをそこまで恍惚とさせてしまったのだ。 

一体、その映画は何なんだ……!? 

映画館の看板を見上げると、そこには黒ずくめのキアヌ・リーブスのポスターが貼り出されていた。 

映画のタイトルは……、『マトリックス』 。

それからしばらくして、僕も『マトリックス』を見た。 

まさに中二病の真っ只中にいた僕は、『マトリックス』の衝撃と影響をモロに受けて、思った。 

「おれは、ネオだ。」 

そして、近所のジーンズメイトに駆け込んで、黒いコートとサングラスを試着した。 

中坊の童顔にサングラスが似合うわけもなく、キアヌとの差に絶望したし、黒いロングコートは高くて買えなかった。 

仕方ないので、ちょっと革っぽい素材のサイバーなデザインの黒いジャケットを買った。 

家に着いたら、どう考えても自分の生活範囲で着られるジャケットじゃなかった。 

結局、ほとんど着なかったと思う。 

今でも、『マトリックス』のビル攻め銃撃戦シーンを見ると、あの時の熱狂とジーンズメイトに駆け込みたい衝動が蘇ってくる。 

そんな興奮を覚えたのは、何も僕とあのおじさんだけではなく、世界中に物凄い数のネオが生まれたのだ。 

『マトリックス』は、それくらいの熱狂を持って受け入れられた。 

 

あれから、22年。 

当時中学生であった自分も、劇中のネオの(マトリックス内での)年齢・37歳まであと少しとなった。 

そんな中、『マトリックス』の新作映画が公開というニュースが飛び込んできたのだ。 

しかもキアヌ、そしてトリニティ役のキャリー=アン・モスは続投だと言うんだから、そりゃもう世界中に激震が走った。 

『マトリックス』は、2003年に公開された続編『リローデッド』『レボリューションズ』を含むトリロジーで完結を迎え、劇中でトリニティ、そしてネオも死亡し、神話的存在へと昇華されているのだ。 

果たして、あの「つづき」を描けるのか、それともまったく新しい世界を描くのか、予測不可能な新作、見ないわけにはいかねぇ…… 

と思っていたところ、なんと幸運にも一足先に観賞出来る機会に恵まれたのだ。 

※ここからのレポートは、ストーリー上の「ネタバレなし」で書きますが、まったく何の情報も入れずに観賞したい方は注意されたし。

 『マトリックス レザレクションズ』は、 

示唆に富み、挑戦的で、そしてとても奇妙な、そう、「マトリックス的」映画体験だった。 

アップデートされたアクション(意外なところでヨン・サンホ監督『新感染』シリーズの影響も感じるシーンも)の魅力もさることながら、「かつて見たことのないような構造を持った映画を見た」という意味でだ。 

『マトリックス』トリロジーという映画史にそびえ立つ金字塔を、極限までメタ的に扱い、時になぞり、時に自ら弄ぶような「挑戦的な再消費」。 

『レザレクションズ』は、誰もが想像するような「リブート(再起動)」ではなく、『マトリックス』という世界を別のレイヤーで作り直す=まさしく「レザレクション(復興、復活)」となっているのだ。 

もちろん、シリーズのファンにはあのキャラクターやアイコンたちが思わぬ形で登場する興奮もある。 

(マトリックス未体験の方は、出来ればぜひトリロジーを予習のうえ見てほしい) 

そんな中で個人的に印象的だったのは、「とあるキャラクター」がネオ以上に重要な存在として描かれていることだ。 

ある意味で、『マトリックス』を新たに作る理由は、このキャラクターにあったとすら言えるかもしれない。 

そして、これには、ウォシャウスキー兄弟がトランスジェンダーを告白し、「姉妹」になったこととも無関係では無いだろうと思う。 

時間は進み、世界も変わっていくのだ。 

黒いコートとサングラスがクソカッコ良いのは、変わらなくとも。 

会場を出た僕は、あの日のおじさんのように足音を口で鳴らすことは無かった。 

あのサイバーなジャケットは、もうどこにやったかもわからないし、大人になった今、何事にもあの頃ほどの熱狂を感じられなくなったように思う。 

それでも、「ネオだった記憶」が、たしかにそこでじんわりと熱を持っていた。 

あの日、映画館の前で会ったおじさんも、どこかで『レザレクションズ』を見るだろうか。

『マトリックス レザレクションズ』全国絶賛公開中!

もし世界がまだ仮想世界=マトリックスに支配されていたとしたら? ネオ(キアヌ・リーブス)は、最近自分の生きている世界の違和感に気付き始めていた。 やがて覚醒したネオは、マトリックスに囚われているトリニティーを救うため、何十億もの人類を救うため、マトリックスとの新たな戦いに身を投じていく。

オフィシャルサイト:matrix-movie.jp
オフィシャルTwitter:@matrix_movieJP #マトリックス
©2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

『マトリックス トリロジー <4K ULTRA HD & デジタル・リマスター ブルーレイ>(9枚組)』発売中

『マトリックス トリロジー <4K ULTRA HD & デジタル・リマスター ブルーレイ>(9枚組)』

©1999, 2003 Village Roadshow Films (BVI) Limited. ©1999, 2003 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 

文/タカハシヒョウリ
ミュージシャン、文筆家、作家。特撮ファン。
ロックバンド「オワリカラ」ボーカルギター。
サブカルチャーへの造詣と偏愛的な語り口から、執筆や番組出演多数。
近年は円谷プロ公式メディアでも連載。
クリエイティブチーム「操演と機電」を結成し、10月には『ウルトラ怪獣もののけ絵巻展』を開催。

編集/福アニー


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