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偶然をテーマにした短編3本をまとめた濱口竜介監督のベルリン銀熊賞受賞作「偶然と想像」の見どころ

2021.12.12

■連載/Londonトレンド通信

 今年のロンドン映画祭に、濱口竜介監督作は2本参加していた。『ドライブ・マイ・カー』と、今回ご紹介する12月17日公開『偶然と想像』だ。

 毎年10月、世界中から数百本の映画を集め開催されるロンドン映画祭は、ここでお披露目される作品のほか、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンなどでお披露目済みの話題作が一堂に会する、その年の映画ショーケースだ。カンヌ4冠の『ドライブ・マイ・カー』、ベルリン銀熊賞の『偶然と想像』とも、外せないところだろう。

 濱口監督は、もやもやとわだかまる感情を描き出す。それは、多かれ少なかれ私たちの中にもあるものだ。そんな感情が掬いあげられ、表現されることに、ある種の快感がある。

 『ドライブ・マイ・カー』では亡くした人に対する想い、悲しみだけではない、憤りに近い強い感情を描きつつ、一筋の光を見せて胸を打った。対して、今回の『偶然と想像』では、ストーリーテラーとしての上手さが光る。オムニバス形式で、監督自身が手掛けたオリジナル脚本による偶然をテーマにした短編3本が、バランスよく連ねてある。キャラクターの感情を観る者にまですんなり共有させる筋立てといい、心の内を明かす嘘のない台詞といい、見事だ。

 第一話「魔法(よりもっと不確か)」は恋の話、誰もが身を乗り出すであろう恋バナで入りやすい。

 元恋人に新しいパートナーができるのは嫌、自分からふった相手なのに悔しい、ずっと自分だけを想っていてほしい。理不尽だが、わかる気がする嫉妬めいた感情が描かれる。

 思ったことを言い、行動するモデルの芽衣子(古川琴音)のエキセントリックさを推進力に展開していく。芽衣子に惹かれた元恋人(中島歩)と、芽衣子と仲の良いヘアメイクのつぐみ(玄理)が、同じように優しく穏やかな常識人風なのも、いかにもと思わせる。つぐみが芽衣子に打ち明けた出会いの相手が、芽衣子の元恋人だったこの物語の結末は、最後まで予想できず、ハラハラする。

 第二話「扉は開けたままで」はちょっと色っぽい。ここで描かれるのは、臍を噛むような運命のいたずらだ。ささいな偶然が、全てを変えてしまう。

 教授で作家でもある瀬川(渋川清彦)の大学の部屋に、瀬川を逆恨みするかつてのゼミ生(甲斐翔真)から、色仕掛けを頼まれた同級生(森郁月)が訪ねてくる。だが、瀬川は、セクハラ、パワハラの疑いをかけられないようにドアを開けておく用心深さを持っている。

 もちろん、そんなことを頼むゼミ生と頼まれる同級生は深い関係にあるのだが、その濡れ場以上に、ドアを開けたままの部屋で、言葉のやりとりだけで進む、誘惑者と、それを察知しながら失礼にならないよう言葉を選びつつ対する作家のシーンが、濃密にセクシーだ。

 第三話「もう一度」(冒頭写真)は、二転三転しながら、最後には暖かい気持ちにさせる、締めを飾るにふさわしい作品だ。

 20年ぶりとなる偶然の再会を喜ぶ2人(占部房子と河井青葉)、近くにある片方の家で、当時の様々を語り、思い出をたどっていく。そこには大きな勘違いも含まれているのだが、それが失望とはならず、思いがけない着地を見せる。

 女学生が、妻、母になっている長い年月を感じさせながら、妻、母となった女性の中にさえまだ女学生がいることをも表現する。恋、憧れ、言葉にできなかった気持ち、当時の片付かなかった想いも成仏しそうな、清々しい後味を残す。

 三話とも悲喜劇の要素があり、引きつける。本領発揮とばかりに、心の綾を演じあげたそれぞれの役者も素晴らしい。

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com


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