小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

初めて訪れた街に行くと「馴染みの店」が目立っているように感じるのはなぜ?

2021.12.04

 そういえばここにもこの書店があった。久しぶりに来た場所だけに、いろんなことが“再確認”されてくるというものだ。この駅前に来たのは何年ぶりになるだろうか。

久しぶりにやって来た有楽町駅前界隈を歩く

 JR有楽町駅の駅前を歩いていた。すでに日は暮れ、師走を感じさせる商業ビルのイルミネーションが眩い。小雨が降ったりやんだりの生憎の天気だが、所用で近くに来たので駅前を少し歩いてみようと思った。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 別にいつでも訪れることのできる場所ではあるのだが、こうして駅前を歩くのは5、6年ぶりになるかもしれない。こうして実際に訪れて歩くと確かにこういう場所であったと“再確認”されてくる感じだ。駅前の商業ビルのテナントに某書店が入っていたことも、こうして直接目視することで再び確認することになる。

 普段あまり歩かない街はもの珍しくもあるが、その一方で馴染みが薄く親しみが感じられない側面もあるのだろう。もう何年も前に何度か仕事で来たり、知人とこの界隈で飲んだこともあった。しかし残念ながら街に親しみが感じられるほどの思い出はない。

 同じ商業ビルの1階には北海道物産のアンテナショップもあった。このショップは池袋にもあるのだが、ここにもあるとは知らなかった。いや正確には、以前にも目にしていたのかもしれないがまったく記憶には残っていなかった。

 馴染みが薄い街では自分が知っている店や施設に視線が向かいがちになるのかもしれない。ちょっとした安心感が得られる親しみのあるものを無意識に探しているということだろうか。たとえば海外旅行などで初めて訪れた異国の街で某コンビエンスストアを見つけて、少しホッとした気分になったという人は少なくないかもしれない。

 そしてこのアンテナショップに視線が誘われたのも、池袋の店に2年ほど前に1度入ったことがあるからだろう。もし利用していない店であったなら、視界に入ったとしてもそれはほかの馴染みの薄い店と変わらぬ“景色”の1つでしかないともいえる。

 それはそうと、どこかで「ちょっと一杯」やってみてもいい時間帯だ。どこか敷居の低そうな店を探してみようか。この界隈でかつて入ったことのある店がどんな店でどこにあったか、今やまったく忘れてしまっている。事実上、初めて来た街としてどこかよさそうな店に入ってみたいと思う。

 高架橋のガード下にやってきた。こうしたけっこう低い鉄道の高架橋は新橋や御徒町などにもあるが、東京の街の歴史を感じさせてくれるという“史跡”に近い存在でもあるだろう。周囲がどんなに再開発されてもここだけは昭和から時間がストップしたままだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 高架橋の端には線路沿いに延びる細い通りの商店街がある。入口の天井から「有楽町高架下センター商店街」という表示が下がっていて、その上には数々の飲食店の店名が記されている。面白そうだ。通ってみることにしよう。

初めて訪れた街で見る“馴染みの店”は“浮いた”存在

 トンネルのような商店街を進む。ここもかなりの“史跡”感がある。クールで無骨な格好良さもあり、映画のセットだとしてもおかしくないほどだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 こうして馴染みの薄い街を歩けばさまざまな新たな発見があるのだが、初めて見る店の数々もまた親しみは薄く、どうしたって先ほどの駅前の書店とアンテナショップという、ほかの場所ですでに知っている店の存在感には及ばない感じはしてくる。

 最新の研究では、我々の脳は別々の場所にある同様のものについて、その場所にあるほかのものよりもさらに異なったものとして認識していることが突き止められていて興味深い。たとえば初めて訪れた場所にあったよく利用しているチェーン店などは、その場所のほかの店から“浮いた”存在として我々は認識しているというのだ。


 研究者たちは脳が空間環境、特に類似したもの(同じスーパーマーケットチェーンの2つの店舗など)をどのように記憶するか、そして脳が混乱を回避する方法、またはしない方法を理解するのに長い間苦労してきました。

 アリゾナ大学の心理学者による新しい研究は、脳が同様の環境を、共通点がない一対の環境とはさらに異なるかのように扱う可能性があることを示唆しています。この概念は、脳科学者には「反発(repulsion)」として理解されています。

 調査結果は、脳卒中やアルツハイマー病などの状態が失見当識や空間記憶の低下などの症状を引き起こす理由を、科学者がよりよく理解するのに最終的に役立つ可能性があります。

※「University of Arizona」より引用


 アリゾナ大学の研究チームが2021年10月に「Nature Communications」で発表した研究では、実験を通じて我々の脳が別の場所にある同様の存在をどのように認識しているのかが検証されている。我々の脳は同様のものであればこそ、その違いに敏感になっているというのである。

 27人が参加した実験では、よく似た3つの仮想都市を1人称視点で歩くビデオを繰り返し見て街のレイアウトと特色を記憶してもらう課題が行われた。3つの仮想都市にはそれぞれ6つの店舗があるのだが、そのうちの3店舗はどの都市にも共通して同じ場所にあり、ほかの3店舗はその都市にしかない独自の店舗であるか、あるいはほかの1都市のみと共通する店舗であった。

 こうした店舗の種類や位置情報を含め、参加者は3つの仮想都市のレイアウトをビデをを何度も見ながら把握に努めた。その後、参加者の脳活動をMRIスキャナーでモニターしながら、それぞれの仮想都市のレイアウトを問う質問が行われた。

 質問に回答する際の脳活動はおおむね似通ったものであったのだが、3都市間で共通する店舗についての質問では、ほかの質問とは顕著に異なる脳活動のパターンを見せていたのである。これはつまり脳は3都市に共通する店舗を、ほかの店舗とはより異なった印象的なものとして認識していることを示唆しているのだ。

 初めて訪れた街で見る“馴染みの店”は、より印象的でより親しみやすく、周囲のほかの店から“浮いた”存在になっていることになる。駅前の書店とアンテナショップに思わず視線が誘われてしまったのも無理はないといえる。

ガード下にあった勝手知ったるチェーン店で飲む

 頭上を通過する電車の走行音が響く通りを進む。初めて見る飲食店ばかりだったが、かなり歩いたところでよく知っている居酒屋の看板が目に入る。“アウェー感”の強い街で見る“馴染みの店”であるだけに、やはりより親近感が湧いてくるというものだ。迷うことなく入るしかない。

 この看板の店は東京を中心に千葉、神奈川に展開しているチェーン店で、個人的には池袋や巣鴨、新宿の店をよく利用している。ここの店は立地がガード下ということもあり、店の前の広い区画は高架橋を屋根にした半屋外とでも呼べるような飲食スペースになっている。ほかの店舗にはないユニークなレイアウトだ。

 店先のテーブル席で酒を酌み交わしすでに盛り上がっている人々を横目に店に入る。入ってすぐの場所が立ち飲みのカウンター席になっていて、ここで飲ませてもらう目算だ。タイミング的にカウンター席が空いていたこともあり、すぐに案内されてカウンターに着く。ちなみにカウンター席での立ち飲みは会計時に10%割引になるという特典がある。一人で飲むならカウンター席しかない。

 普通のジョッキの2.5倍の量があるという“デカジョッキ”でハイボールを注文し、豚肉の鉄板焼きなどのおすすめのメニューをいくつか頼んだ。屋外同様、店内のほうもお客で賑わっている。外にいるよりは響いてこないが、それでも時折、頭上を電車が通り過ぎる音が響く。ガード下ならではのBGMだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 ずっしり重いジョッキを持ち上げてさっそくひと口飲む。ともかく今宵もこうして飲むことができたのは幸せなことだ。

 カウンター目当ての一人客が続けて入店してきて、立ち飲みエリアは満席に近くなった。気づかなかったが屋外のエリアにも立ち飲みカウンターがあるようだ。今度はそっちで飲んでみても面白いかもしれない。

 有楽町は銀座にも近く、いわゆる“銀ブラ”するのであればむしろ有楽町駅を使ったほうがJR利用客には便がいいともいえる。そういえば銀座にも久しく訪れてはいなかった。以前は仕事関係の映画の試写会で銀座界隈の映画館に行くこともあったのだが、最近はそういったこともほとんどない。決して今回のコロナ禍のせいではなく、個人的な仕事の変化である。

 試写会などの特定の用件がなければ、個人的にこの界隈に来る理由がほとんどないことは明らかで、やはり自分にとって“アウェー感”の強いエリアであることは間違いない。今日のように意識的に降りてみないことには、再び訪れるのもまたずいぶん先のことになるだろう。

 カウンターに立てかけられているメニュー表の1枚に「有楽町限定」の文字が見える。おでんだ。せっかくなので頼んでみたい。ハイボールも残り少なくなったので日本酒もお願いした。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 おでんが運ばれてきた。大根と巾着だ。大根は想像していた以上に大きく、実際に食べ応えがある。注文して正解だ。

 馴染みの薄い街でこうして勝手知ったる店に入るのは何かと安心なのだが、それでも少しはここに来たからこその体験も味わいたいというのは、わがままではあるがそれも人情だろう。そこでこうした限定メニューがあるのは単純に嬉しいものだ。

 さて徳利のほうも尽きそうだ。ここに来るまでに気になる店もいくつかあったのだが、それは次回の課題にしてしておきたい。次にこの界隈に来られるのがいつのことになるのか、まったく見当がつかないことではあるのだが。

文/仲田しんじ

興味のあるジャンルを登録して@DIMEをもっと便利に!話題のコーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」やAmazonギフト券が当たるキャンペーン実施中

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2021年12月16日(木) 発売

DIME最新号の特別付録は「10インチデジタルメモパッドPRO」! 特集は「ヒット商品総まとめ」、「2022トレンド大予測」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。