
DeFiが普及することで私たちの生活はどう変わるのか?そもそも、リスクが大きそうなこの新しい金融は普及しうるのだろうか。DeFiのメリット・デメリットを踏まえ、2人の有識者が解説する。
あと数年もすればDeFiが生活に入り込んでくる
日本で暮らしていると実感が湧かないかもしれないが、世界には金融サービスを使いたくても使えない人たちがたくさんいる。貧困により口座が作れない、紛争により戸籍が得られないなど、その事情は様々だ。
「国が強権的に国民の金融サービスを制限しているケースもあります。一方で、DeFiはどこの国にも管理されていないので、ネット環境さえあれば誰でも口座を開設でき利用できる金融として期待されています」
その運営方針も、金融当局の規制を受けない。「コミュニティー」によって方針が決められるDeFiは、金融の民主化に必要不可欠だと、毛利さんは〝中の人〟の視点でメリットを語る。
「ドルや円などの法定通貨の流通量コントロールは、中央銀行や、需給を把握できる金融機関が行なうこと。一般企業や民間人にはできないことです。ところがDeFiでは、仮想通貨のコントロールを投資家に委ねることができます。コミュニティーメンバーに投票権を与えて供給量コントロールの方針を決議できたりする。そういった理由から、仮想通貨のほうが法定通貨よりも民主的だと考える人がいるのです」
一方で、「既存の金融サービスは、利用者や投資家へのサポートが充実しているのに対し、DeFiにはサポートがほぼ皆無です」とデメリットにも言及する。
「わからないことやトラブルは自分で調べて解決する、というのが原則です。なので、仮想通貨取引をしたことがない初心者にはハードルが高いというのが現状でしょう。しかし、あと数年もすればもっと簡単に、かつ安全に利用できるツールが開発され、多くの人が利用できるサービスになると期待しています」
国の権力が及ばないので、金融の民主化が可能に
Pancake Swap JP Admin
毛利元優さん
普段はIoT・ブロックチェーンコンサルタントとして活躍する。DeFiが管理者不在で秩序を保つにはどうしたらよいかと興味を持ったことがきっかけで、現在ではDeFi取引所「Pancake Swap」などのコミュニティー運営者を務めている。
DeFiサービス普及の課題は〝無補償〟をどう解決するか
将来性は期待できるが、課題が多いと話す周藤さん。
「DeFiサービス中で見かける高い利回りが実現できるのは、既存の金融機能と比べてサービス提供コストが低いなどの理由があります。しかし、DeFiに限らず仮想通貨全般にいえますが、マネーロンダリングに使われるリスクがあったり、投資家保護体制が弱かったりするなどの課題があります」
また、取引を始めたら止められないのもデメリットだという。
DeFiの重要な基盤であるイーサリアムが提唱されたのは2013年11月。DeFiの最古参プロジェクト「MakerDAO」がローンチしされたのも2017年12月であり、歴史はまだ浅い。
近年、雨後の筍のように乱立するDeFiサービスだが、そのすべてが海外発のもののようにみえる。日本発のものはないのだろうか。
「取引処理が、ブロックチェーンにより分散されて世界中のコンピューターで行なわれていますから、『どこの国のもの』という点は曖昧です。法規制は、サービスや取引所が所属する国で行なうのが原則なので、金融庁も『どこからどう規制すればよいのか』ということに苦慮しているようです」
今後、既存の金融サービスとどう折り合いをつけていくのだろうか。
「金融の歴史からみて、『全く補償がない』というサービスは普及してきませんでした。これを踏まえれば、今後は『既存の金融機関がDeFiの技術を応用した新しいサービスを作る』ということは考えられると思います。既存サービスでは手数料は高いが保障がある、DeFiは取引が自動化されており手数料は安いが保障はない……その間をとって『自動化された取引を金融機関が管理する』といった、中間的なサービスが生まれるかもしれませんね」
投資家の保護体制がないのが課題です
野村総合研究所
上級コンサルタント
株式会社BOOSTRY COO
周藤一浩さん
2007年に野村総合研究所へ入社。エンジニア、中国へのMBA留学経験などを経る。2017年よりブロックチェーン、フィンテック関係の調査を行なっている。
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取材・文/久我吉史
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