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コロナ禍は企業の役員報酬にどんな影響を与えたか?

2021.12.03

コロナ影響下で、どれくらいの企業が役員報酬の減額・自主返上について制度を変更したのだろうか?

デロイト トーマツ グループはこのほど、日本企業における役員報酬の水準、株式報酬制度等の導入状況およびコーポレートガバナンスへの対応状況の実態調査『役員報酬サーベイ(2021年度版)』を実施した。

本サーベイは2002年以降実施している調査で、今年度は2021年6月~7月にかけて、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社と三井住友信託銀行株式会社が共同で実施した。東証一部上場企業を中心に1042社から回答を得ており、役員報酬サーベイとして日本最大規模の調査となっている。

社長報酬総額の推移

売上高1兆円以上の企業における社長の報酬総額は中央値で9,860万円であった。前年の9,887万円と比較し-0.3%となり、社長報酬総額は微減。前年度の調査結果に続き、本調査では、一部の企業において新型コロナウイルスの影響による報酬の減額等が反映されつつあることがうかがえる。【図1】

また、東証一部上場企業における社外取締役の報酬総額水準は、中央値で800万円となっており、5年連続で上昇傾向にある。コーポレートガバナンス・コードの要請に基づいた社外取締役への役割期待の高まりが背景にあると考えられる。

インセンティブ報酬

短期インセンティブ報酬を導入している企業の割合は、72.9%(760社*1)と前年の74.2%から1.3ポイント減少した。

採用されている短期インセンティブ報酬の種類を見ると、昨年に引き続き「損金不算入型の賞与」を導入している企業が最も多く、導入企業の54.0%(393社)を占めている。「損金不算入型の賞与」を採用する背景には設計の自由度が高いことに加え、他の損金算入スキームでは要件が厳しく、採用しづらいことが考えられる。

株式関連報酬(長期インセンティブ報酬)を導入している企業の割合は74.0%(771社*2)で今後導入予定の企業も合わせると85.2%(888社)となり、定着が見られる。採用されている株式関連報酬の種類の上位2つは「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」(279社)と「業績連動型株式交付信託」(144社)であった。

また、現在株式関連報酬を導入していない会社、および現在既に何らかの株式関連報酬を導入している会社のいずれも、今後導入を予定している報酬の種類は、「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」が多く、引き続き譲渡制限付株式の導入が進むと見込まれる。

明文化された役員評価制度を有する企業、および明確な評価制度は存在しないものの何らかの評価基準が存在する企業は合わせて70.1%(730社)となり、役員の評価を実施している企業は昨年の68.2%(651社)より1.9ポイント増加した。

役員評価を実施している企業のうち、ESG指標を役員報酬決定に活用している企業は6.4%(47社)にとどまるものの、前年の5.4%からは1.0ポイント増加した。いまだ低い水準にはあるものの、わずかながらESG指標を評価に取り込む企業が増えつつあると見受けられる。

*1:「短期インセンティブの有無」において「短期インセンティブあり(導入している)」を選択した企業、および「変動報酬の固定報酬化の有無」において「あり」を選択した企業

*2:「長期インセンティブの有無」において「長期インセンティブあり(導入している)」を選択した企業のうち、通常ストックオプション、株式報酬型ストックオプション、有償ストックオプション、譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)、パフォーマンス・シェア・ユニット、信託の設定による株式付与、現金(SARs・ファントムストック 等)いずれかの株式関連報酬を導入している企業

ガバナンス体制

指名委員会等設置会社を除く1,003社のうち、任意の報酬委員会を設置している企業の割合は67.5%(677社)と前年より7.3ポイント増加し、任意の指名委員会を設置している企業の割合は60.1%(603社)と前年より6.4ポイント増加した。この背景には、2018年のコーポレートガバナンス・コード改訂に伴う、任意の指名・報酬委員会の設置要請が大きく影響していると考えられる。

任意の指名委員会・報酬委員会の設置率は上昇したものの、年間の開催回数に関しては、指名委員会等設置会社との乖離が顕著にみられる。

指名委員会等設置会社では、いずれの委員会も年5回以上開催する企業が半数以上に達している一方、任意の委員会設置企業では、年3回以下の企業が約6割(指名委員会で60.9%、報酬委員会で59.2%)を占めている。任意の指名委員会・報酬委員会では依然として形式的な議論にとどまっている可能性が高いと考えられる。【図2-1、2-2】

選解任基準の整備状況に関しては、CEOの選任基準を整備している企業が32.4%(前年比+1.2ポイント)と増加し、CEO以外の役員の選任基準を整備している企業は44.7%(前年比-0.4ポイント)にとどまった。また、CEOの解任基準においては全体の31.3%(前年比+0.6ポイント)、CEO以外の役員の解任基準も全体の38.7%(前年比+0.6ポイント)と微増した。選解任基準の整備は今後検討すべき課題の一つであるといえる。

指名基準に関連して、CEOの後継者計画を整備している企業は、全体の19.3%(前年比+0.9ポイント)、その他役員の後継者計画を整備している企業も、全体の13.5%(前年比+1.2ポイント)増加した。

マルス条項・クローバック条項の導入状況

2015年のコーポレートガバナンス・コードの適用開始以降、役員報酬制度の整備・進展に伴い、不正防止や過度なリスクテイクの抑制を目的としてマルス条項・クローバック条項の導入・検討をしている企業が見られる。昨年度において両条項を導入済の企業は、合計で8.3%であった。

一方、今年度においてマルス条項を導入済の企業が20.3%、現在検討中・今後検討予定の企業が9.2%であり、クローバック条項を導入済の企業が8.7%、現在検討中・今後検討予定の企業が10.3%となっており、増加傾向にある。米国・英国では業績連動報酬に対するマルス条項・クローバック条項の適用は一般的なプラクティスとなっており、今後は日本でも機関投資家等から導入を求められる可能性が高い。

新型コロナウイルス等による役員報酬への影響

新型コロナウイルス等による役員報酬への影響を調査した。役員報酬の減額・自主返上について制度を変更した企業は、本サーベイ回答時点で、全1,042社のうち、わずか13.3%(139社)であり、変更していない企業は86.7%(903社)であった。

制度を変更した企業のうち、臨時的に変更した企業は11.9%(124社)、臨時的かつ恒常的に変更した企業は1.1%(11社)、恒常的に変更した企業は0.4%(4社)であった。これまでは緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等により、サービス業や小売業界を中心に業績への影響に伴う報酬減額の対応が見られた。

しかし今後はワクチン接種の進展やコロナ治療薬の開発により、企業業績の正常化が進むことで役員の減額措置も減少していくことが予想される。

取締役の多様性

全取締役に占める社外取締役の人数割合を1/3以上確保している企業は65.0%であった。また、社外取締役として女性取締役あるいは外国人取締役を採用している企業は51.9%であり、女性取締役のみ一人以上存在する企業は43.9%、外国人取締役のみ一人以上存在する企業は3.2%、女性取締役と外国人取締役の両方が存在している企業は4.8%であった。多様性のある社外取締役の人材確保といった観点においては、今後検討の余地があると考えられる。

指名・報酬委員会の実効性強化

社外取締役が委員長を務めている企業は、任意の指名委員会で55.2%、任意の報酬委員会で57.0%であった。指名委員会、報酬委員会の実効性という観点から、社外取締役の委員長任用が増加傾向にある。

また、社外取締役による指名・報酬委員会への委員および委員長への就任に伴って、追加的な報酬を支給する企業が増えてきている。指名委員会で委員長としての加算報酬が「あり」の企業は5.5%、社外委員が委員に就任している場合の加算報酬が「あり」の企業は10.8%であった。

報酬委員会で委員長としての加算報酬が「あり」の企業は6.8%、社外委員が委員に就任している場合の加算報酬が「あり」の企業は11.1%という結果となった。

<調査概要>
調査期間:2021年6月~2021年7月

調査目的:日本企業における役員報酬の水準、役員報酬制度やガバナンス体制、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況等の現状に関する調査・分析

参加企業数:1,042社(集計対象役員総数 19,555名)
上場企業970社(うち東証一部714社)、非上場企業72社

参加企業属性:製造業465社(うち医薬品・化学98社、電気機器・精密機器106社、機械77社等)、非製造業577社(うちサービス108社、情報・通信113社、卸売92社 等)

出典元:デロイト トーマツ グループ

構成/こじへい

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