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中国恒大の経営危機が経済や金融システムに及ぼすリスク

2021.11.28

『中国恒大』は秩序ある長い企業再編プロセスへ

中国大手不動産企業である『中国恒大』の経営危機が顕在化してからおよそ2カ月が経った。これまでのところ、同社の社債の利払いや償還は行なわれてはいるものの支払いは遅れており、債務不履行となる可能性がある。

しかし、過去に中国で経営危機に陥った企業は政府主導の資産売却によって徐々に再編されるケースが多く、今回も経済や金融システムに与える影響は限定的と考えている。

そんな中、三井住友DSアセットマネジメントはマーケットレポート「『中国恒大』は秩序ある長い企業再編プロセスへ」を公開したので紹介しよう。

『中国恒大』の債務は不履行となる可能性

9月ごろから、中国の大手不動産企業である『中国恒大』(チャイナ・エバーグランデ)の債務が不履行に陥るとの懸念が高まり、同社の株価や社債価格が急落した。

同社は好調な中国の不動産市場を背景に債務を膨らませ、電気自動車開発や病院経営、プロサッカーチーム運営など事業拡大にも積極的だった。その拡張的な方針も原因となり経営危機に陥っている。

『中国恒大』は9月下旬以降、社債の利払いを遅延させている。最終的には一カ月の猶予期間の終了間際に支払われているため債務不履行にはまだ陥っていないものの、綱渡りの資金繰りが続いている。

こうしたことから、大手格付会社のS&Pは、『中国恒大』の債務は不履行に陥る可能性が極めて高いとしている。今後は猶予期間内にも支払いが行なわれず、『中国恒大』の社債が債務不履行となるケースが出てくる可能性がある。

『中国恒大』は秩序ある長い企業再編プロセスへ

しかし、債務の不履行というだけでは『中国恒大』という事業体がなくなるわけではない。今後、『中国恒大』はすでに完成した住宅の引き渡しや、中断している開発の再開などで混乱が生じないことを最優先に、資産売却によって秩序ある長い企業再編のプロセスを経るものと思われる。

中国人民銀行の易綱総裁は10月17日、『中国恒大』の問題が経済や金融システムに及ぼすリスクを当局は封じ込めることができると述べた。

また、中国銀行保険監督管理委員会は10月21日、『中国恒大』は個別のケースであり、経済の安定によって裏付けられている中国企業の全体的な信頼性を損ねることはないと主張した。

金融当局の一連の発言からは経済や金融システムへの影響は防ぐ方針が確認できる。そのため、債権者である銀行が融資を引き揚げる可能性は低く、清算を伴う倒産が予想外のタイミングで発生する事態には至らないと見ている。

『中国恒大』は債務の支払いのために資産の売却を進めている。10月には、最終的に話がまとまらなかったものの、傘下の不動産管理会社を別の不動産会社に売却する交渉を進めていた。

11月には、傘下のインターネットサービス会社の株を売却。また、創業者である許家印氏は香港にある豪邸やプライベートジェット、美術品などを売却している。

同氏の個人資産は一時は日本円で4兆円を超え、昨年は中国5位の富豪とされていた。現時点で同氏の資産は大きく目減りしていると思われるが、当面の資金繰りを支える一助にはなっている。

参考になるのが、『中国恒大』と同じく積極的な経営方針で知られた海航集団(HNAグループ)。同社は中堅航空会社を経営していたが、ドイツ銀行やホテル大手のヒルトンなどに多額の出資を行なう投資事業で知られていた。

その方針が裏目に出て2019年ごろから経営危機に陥り、同年には最初の債務不履行を起こした。しかしその後は中国の破産法で定められた手続きのもとで公的管理下に入り、最初の債務不履行から2年たった2021年10月に更生計画案が裁判所の承認を得ている。

【今後の展開】中国の経済や金融システムへの影響は限定的

今後予想される『中国恒大』の企業再編プロセスが中国の経済や金融システムに及ぼす影響も限定的だと考えている。

『中国恒大』は、例えば米リーマン・ブラザーズなどと異なり金融機関ではなく、金融仲介や貸し出しによる信用創造を行なっているわけではないため、経済への直接的な影響は限定される。

『中国恒大』向けの貸し出しの債務不履行が金融機関に与える影響も限定的と見ている。2021年6月時点の財務諸表によると同社の債務は約2兆元(日本円でおよそ35兆円)だが、そのうち住宅の受け渡しのための前受け金や開発のための未払い費用がおよそ3分の2で、金融機関からの借り入れは社債を含めても3分の1ほど。

中国の銀行貸出総額は2021年10月時点で262兆元なので、管理可能な規模と考えられる。

中国の不動産市場は高成長を続けており、しばしばバブルとの懸念が指摘されてきた。しかし、中国の新築住宅価格の上昇率は名目GDPを下回っている。不動産市場と同様に、中国全体の名目GDP成長率も非常に高かったことにも留意が必要だ。

中国の不動産に対する需要が強い中では、『中国恒大』が保有する不動産は同社の顧客や他の体力のある会社に売却され、債務返済に充当されると考えられる。

『中国恒大』と同じく積極的な方針で知られた企業の中には経営が危ぶまれている会社もあるが、保守的な経営で知られる大手国有不動産企業の株価はむしろこのところ下げ止まりから持ち直しに転じつつある。

結論としては、今後『中国恒大』は秩序ある長い企業再編プロセスに至ると考えられる。その過程で同社が債務不履行に陥る可能性はあるが、その影響は限定され、経済や金融システムに影響する可能性は低いと見ている。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。

関連情報:https://www.smd-am.co.jp/

構成/DIME編集部

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