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2050年時点の炭素削減インパクトスコアランキング、TOP10に日本企業5社がランクイン

2021.11.19

炭素削減インパクトランキングと脱炭素先進事例

アスタミューゼとベイン・アンド・カンパニーは先進的なESG取り組みを行っているランキング上位企業のケーススタディーを紹介した。

業界別温室効果ガス排出量の全体像

現在温室効果ガスの排出量はその排出方法によって「The Greenhouse Gas Protocol」が定めたスコープ1、2、3という区分けを用いて管理されており、スコープ1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(化石燃料の燃焼など)、スコープ2は他社から提供されたエネルギーの使用による間接排出(電気の使用など)、スコープ3はスコープ1、2に含まれない間接排出(他社から購買する原料の生産・運搬の際の排出、自社の生産した製品を他者が利用した場合の排出、等)と定義されている。

日本のスコープ 1排出量に該当する年間温室効果ガス排出量(2019年)は約11億tCO2(e)。また業界別にみると、電力業界、鉄鋼業界、化学業界の排出量が全体の約50%と大きな割合を占めている。

今後、脱炭素の動きが活発化するにつれて、電力、鉄鋼、化学業界のみならず、業界横断的な脱炭素技術の社会実装が、各国が掲げている二酸化炭素削減目標達成の礎となる。

炭素削減インパクトスコア算出アプローチ紹介

アスタミューゼでは、主に技術的な観点から炭素削減の課題を整理の上、これら課題解決に貢献する技術を俯瞰的に整理し、技術別での「炭素削減ポテンシャル(A)」を定量評価している。

さらに、これら技術を保有する企業別での「技術・特許競争力(B)」を定量評価の上、 (A)と(B)を乗じることで、「炭素削減インパクトスコア」を算定している。

同スコアは事業会社の経営企画部門の方を主な対象として、自社保有技術の炭素削減インパクトの可視化にとどまらず、自社保有技術の用途展開/新規事業探索、有望な炭素削減技術を保有する提携/M&A候補先探索、事業ポートフォリオの見直し等での活用が見込まれる。

以下では、炭素削減インパクトスコア算出アプローチ概要および、同スコアに基づくグローバル企業ランキングを紹介する。

(1)炭素削減に貢献する技術の整理および技術別炭素削減ポテンシャル評価

二酸化炭素、メタンのような炭素を含む温室効果ガスは、人類の様々なエネルギー利活用により排出。こうした炭素の排出量を削減するためには、(a)エネルギー利用を効率化すること、(b)炭素を排出しない代替物を利用すること、(c)排出された炭素を削減すること、が課題となる。

アスタミューゼでは、これらの課題解決に貢献するアプローチ/技術を俯瞰的に整理し、38の技術を特定している。

これらの分析においては、客観的で確からしい技術情報(特許データ)の他、最先端の研究テーマ(公的研究開発投資データ)、有望なビジネスモデル(ベンチャービジネス投資データ)等約7億件に及ぶ同社保有データベースおよび領域俯瞰的なテクノロジーアナリストの知見を活用している。

これら38の炭素削減技術別の削減ポテンシャルは、以下の3要素を乗じることで算出している。

(a)各炭素削減技術が削減貢献できる2020年時点の排出炭素量

(b)2030年/2050年時点での、各炭素削減技術の既存技術比炭素削減率

(C)2030年/2050年時点での、炭素削減技術の社会実装率

なお、これら38の技術別炭素削減ポテンシャルの時系列での推移を分析するため、2030年/2050年の2つの時点でのポテンシャルを定量評価している。

こうしたアプローチで算出した技術別炭素削減ポテンシャルは以下の通りだ。

上記のとおり、2030年時点では水力エネルギー・中小水力発電、太陽光・太陽熱発電、パワー半導体が炭素削減に対するインパクトの高い技術となる(上記「2030年(a)」参照)。

一方、2030年以降2050年までの間には、水素システム・インフラ、CO2吸収・吸着・分離素材、廃棄物・下水汚泥処理等技術のポテンシャルが高まることが見込まれる。(「2030年と2050年の差分(b)-(a)」参照)

(2)炭素削減技術毎の企業別の技術/特許競争力評価

上記で整理した38の炭素削減技術において、企業の技術/特許競争力を可視化するため、アスタミューゼは独自に開発した特許スコアリング手法を活用して技術/特許競争力評価を行った。

評価アプローチとしては、各特許の他社への排他権としてのインパクト評価に加え、地理的な権利範囲(出願国など)、権利の時間的な残存期間などを重みづけし、特許毎にスコアリングをした「パテントインパクトスコア」を算出し、これを企業単位で集計した「トータルパテントアセット」を活用している。

(3)企業別炭素削減インパクトスコアの算出アプローチ

(1)で算出した38の技術別の「炭素削減ポテンシャル」と、(2)で算出した企業別の技術/特許競争力評価を乗じることにより、企業別の「炭素削減インパクトスコア」を算出している。

本リリースでは、2050年時点での企業別炭素削減インパクト総合スコア(企業毎の技術別炭素削減インパクトスコアを合計したスコア)上位20社のご紹介および、同20社の2030年からの順位およびスコアの推移分析結果を紹介しよう。

3.   炭素削減インパクトスコアグローバルランキング上位20社発表

(1)2050年時点の炭素削減インパクトスコアグローバル総合ランキング

2050年時点の炭素削減インパクトスコア総合ランキング第1位はトヨタ自動車であり、電気自動車、水素/燃料電池車等の技術で競争力首位となった。

同社は、自動車関連技術の他、スマートグリッド・スマートシティー、水素アンモニア発電等の技術競争力でもグローバル上位3位以内に入るなど、多様な領域で高い技術競争力を有していることがわかった。

日本企業はトヨタ自動車以外にも、グローバルランキング上位10位以内に三菱重工、日立製作所、東芝、本田技研の4社がランクインした。

これらの企業が高い競争力を有する領域は多岐にわたるが、水素(水素システム・インフラ、水素・アンモニア発電等)、自動車(電気自動車等)、エネルギー(水力エネルギー/中小水力発電等)関連技術に加え、CO2吸収・吸着・分離素材、パワー半導体等を中心に、日本企業が高い技競争力を有していることがわかった。

なお米国では、グローバルで第2位のGeneral Electricが同国企業最高位となり、炭素の地層注入/海底貯留や、高効率火力発電技術で高い技術競争力を有している。

また、欧州企業ではSiemensが最高位(グローバルで第4位)となっており、水素/アンモニア発電、エネルギーマネジメントシステム、風力等の領域で、世界でもトップクラスの技術競争力を保有している。

(2)2030年から50年にかけてのインパクトスコアの時系列推移分析

2030年と2050年を比較した結果、上位3社(トヨタ自動車、General Electric、三菱重工)の顔ぶれには変化がなかったが、2030年から2050年にかけて順位を上昇(または下落)させることが見込まれる企業もある。

例えば、本田技研は2030年の17位から2050年には9位と大きく順位を上昇させることが予測される。

この背景としては、2030年から2050年にかけて炭素削減ポテンシャルが急速に高まると見込まれる水素システム・インフラや水素・燃料電池車関連技術において、同社が高い競争優位性を有していることが貢献している。

4. ランキング上位企業のケーススタディー

「脱炭素」は多くの企業にとってリスクとして捉われておりますが、企業が保有する技術を活用する事により、新たなビジネスの機会創出にもなり得る。

例えば、GPIFの2019年ESG活動報告によると、気温が2℃上昇するシナリオ下では、技術面での新たな機会創出が見込まれるため、脱炭素は日本企業に対するリスクより、成長機会が上回る可能性があると発表している。

脱炭素を含むESG施策を成長機会、すなわち企業価値向上につなげる為には、大きく4つの要件がある。

それらの要件とは、①明確なターゲット、②ターゲットの達成に必要な「攻め」と「守り」のESG施策、③ESG施策を実行する為のオペレーティングモデル、④ESG施策の成果の対内・対外的コミュニケーションを含む効果の刈り取りだ。

上記の要件を満たすことで、ESGの推進と企業価値向上を実現したドイツの製造メーカー、Siemensのケーススタディを紹介しよう。

Siemensは1847年にドイツで創業した製造メーカーで、現在は生産設備、情報通信、防衛、交通、家電、システムソリューション等、幅広く事業を展開している会社だ。

Siemensは2014年にVision2020という経営方針を発表し、その中で従来のマネジメントモデルを発展させ、サステイナビリティを包括した新たな事業戦略を提唱した。

さらに、2015年に、製造メーカーにとってマテリアリティの高い脱炭素に向け、主要競合より一歩先んじて、2030年までにスコープ1及び2に加え、温室効果ガス排出量ニュートラルの実現を目標として掲げた。

以降、ESG推進を成長戦略の一つの柱とし、ターゲットの達成に向けた施策、組織設計、コミュニケーションを策定・実行している。

「攻め」の施策においては、スタートアップの支援や外部パートナーシップによる新たな技術・サービスの開発に特化した子会社であるネクスト47を設立しており、小規模電力網用デジタルソリューションの開発や、エアバス・ロールスロイスとハイブリッド電動飛行機「E-Fan X」の共同開発を実施。

また、産業機器の電化・効率化などを含む顧客へのデジタルソリューション提供に向け、産業用ソフトウェア開発会社であるMentor Graphics Corporationを2017年に買収し、「守り」の施策として、ガス・電力事業を分社化し、2025年までに持ち株比率を25%までに減らし連結対象からの除外を目指すなど、ポートフォリオの脱炭素化を推進している。

上記の脱炭素施策を含むESG推進を実行する為に、Siemensは上級管理職や取締役会の報酬とESG目標の達成度合いを連動させることで、ESG推進にインセンティブを設けている。

また、各事業、地域の連結子会社CEOは責任領域に対してESG活動目標を設定し、KPIを管理することが必須となっている。

Siemensは既に2015年比でスコープ1及び2、そして温室効果ガス排出量を半減させることに成功しており、EV/EBITマルチプルは2014年1月から2020年1月にかけて1.2倍上昇(主要競合企業中央値は0.7倍)、同期間のEBITマージンは1%上昇(主要競合企業中央値は-1.6%)している。また、DJSI、MSCI、CDP、FTSEなどの多くのESG認証機関から高く評価されている。

Siemensは2021年6月に事業戦略の一部となる”DEGREE”フレームワークを発表し、脱炭素(Decarbonization)に加え、倫理(Ethics)、ガバナンス(Governance)、資源効率性(Resource efficiency)、公正さ(Equity)、雇用環境(Employability)の領域におけるターゲットを掲げ、ESG推進を強化している。

改めて、今後脱炭素の流れは世界的に加速することが見込まれ、炭素インパクトランキングにて上位ランクを誇る日本企業にとっては大きなビジネスチャンスとなる。

構成/ino.

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