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2050年のカーボンニュートラル実現で日本の産業、経済はどう変わるのか?

2021.11.20

2050年のカーボンニュートラル実現がもたらす日本産業への経済的影響

日本は2050年のカーボンニュートラル実現を見据え、2030年までに二酸化炭素排出量を2013年比で46%削減するという目標を掲げている。

これはEU(2050年までにカーボンニュートラル、2030年までに2013年比で44%減)、イギリス(2050年までに1990年比で少なくとも100%減、2030年までに2013年比で55%減)、アメリカ(2050年までにカーボンニュートラル)、中国(2060年までにカーボンニュートラル)などの主要経済大国と足並みをそろえた高い目標となっている。

アスタミューゼ × ベイン・アンド・カンパニーは共同で日本企業におけるESGに関する論文を発表した。「脱炭素」が日本の各産業に与える影響とは?

カーボンプライシング(炭素価格)の導入が産業に与える影響(電力、鉄鋼、化学業界)

2030年、2050年の温室効果ガス削減目標を達成するために、日本政府主導で導入が検討されている施策の1つがカーボンプライシングになる。

カーボンプライシングとは、主要な温室効果ガスである二酸化炭素の排出に税金などの形で負担価格を設定する仕組みであり、企業に対して二酸化炭素排出に伴う経済的な負担を背負わせることで、二酸化炭素排出量の削減努力を促す。カーボンプライシングの手法としてはカーボンオフセット、炭素税、排出量取引制度(ETS)などが存在している。

日本はすでに地球温暖化対策税という名称で炭素税を導入しているが、その炭素価格は289円/tCO2(e)であり、主要諸外国と比べると非常に低い水準だ(図表3)。

現在、経済産業省、環境省、国会の間では自主的なカーボンオフセットや強制的な炭素税/ETSといったカーボンプライシングの導入に関する議論が進められている。

国連のレポート「United Nations Handbook on carbon taxation for developing countries」によると、パリ協定目標(世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して摂氏1.5度に抑制)達成には2020年時点で炭素価格4400~8800円/tCO2(e)、2030年時点で炭素価格5500~11000円/tCO2(e)の設定が必要とされており、今後日本でも同水準の炭素価格が導入される可能性がある。

カーボンプライシングが導入された場合、二酸化炭素排出量(tCO2(e))×炭素価格(円/tCO2(e))の分だけ企業の費用が増加し、利益率にマイナスの影響を与える。

温室効果ガス排出量の多い電力、鉄鋼、化学の主要企業に対して現状の排出量のままかつコスト転嫁を実施できなかったと想定した場合で、4400~8800円/tCO2(e)の炭素価格が適用されたと仮定すると、電力業界では10-19ppt、鉄鋼業界では5-11ppt、化学業界では2-4pptの営業利益率減少が見込まれる。

ベインの試算によると、これらの3業界の利益率の減少は、合計で約50兆円弱の企業価値の棄損につながる。実際にはこれら以外の業界でもカーボンプライシングの導入によるコストの増加は発生することから、資本市場においてはかなり大きな影響が出ると想定される。

主要企業の温室効果ガス削減目標と削減状況(電力、鉄鋼、化学業界)

前述した温室効果ガス排出量の多い業界における主要企業もカーボンニュートラルの達成に向けて動き始めている。

多くの企業は2030年までに向け明確な温室効果ガス削減目標を設定し、目標達成が十分可能なペースで温室効果ガスの削減を続けている。

一方で、政府が掲げる業界ごとの2030年までの削減目標(電力:42%削減、鉄鋼、化学:37%削減、2013年比)や、2050年のカーボンニュートラル目標を達成できると見込まれる企業は限られている。

既存の取り組みを延長するだけでは十分な温室効果ガス削減は難しいと考えられ、2050年のカーボンニュートラルを実現するためには「脱炭素につながるイノベーション」が非常に重要であると考えられます。

「脱炭素につながるイノベーション」は必ずしも電力、鉄鋼、化学のような炭素集約型産業のみではなく、日本全体でのカーボンニュートラルの実現に欠かせない要素となる。

また、リスク面に注目の集まりやすい脱炭素だが、各企業が「脱炭素につながるイノベーション」の開発・商業化に取り組むことにより、サステイナビリティ面での差別化等、競合に対する競争優位性を確立し、企業の成長機会につなげることも可能となる。

構成/ino.

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