女性が業績改善に寄与するワケと日本社会が抱える構造的な課題
日本女子大学名誉教授
大沢真知子さん
日本女子大学現代女性キャリア研究所所長。著書に『女性はなぜ活躍できないのか』。編著に『なぜ女性管理職は少ないのか』。
女性の傾聴力が社会を導く
女性役員の多い企業のほうがパフォーマンスが高いというデータが国内外で示されている。その要因はどこにあるのか。
「男性は率先して実行して〝オレについてこい〟的なリーダーが多いのに対して、女性リーダーはコミュニケーション力が高いので、スタッフそれぞれに問題を聞いて回ります。どうしたらいいと思いますか? と。スタッフも意見を言いやすい。そうやって改善点を発見し、見直していく。
今までのやり方を踏襲する時には男性のほうが有利ですが、変革時には問題を抽出し、直視できる女性のほうが向いている。これは米マッキンゼー社の調査でも明らかになっています」(大沢さん)
しかし日本の女性社長比率はいまだ1割に満たない。この現状を打破するために必要なものは何か。
「大きな問題は、無意識のうちに『女性だから保護しなくては』というバイアスがかかること。例えば、子育て中の女性にかわいそうだから出張を頼まないとか、昇進の意志をその能力があるとわかっているのにたずねないとか。上司は配慮のつもりでも、結果的に女性のチャンスを奪うことになるかもしれない。
女性にも一歩前に出る努力は必要です。ただ現時点では、組織が制度的に後押しする仕組みを作ったほうが効果的でしょう」
これからさらに女性リーダーが増えていく社会を、大沢さんはこう想像する。
「同質的な組織では、上の人が言ったことに『はい!』と同調する人が多いのですが、女性も含め多様な人が『違和感あり』と発言することで、おかしな点を早く発見することができ、よりフェアな社会になる。すると社会が開放的になり、新しいアイデアが生まれやすくなるはずです」
女性役員がいる企業の業績は高い傾向
女性役員がいる企業のほうが、いない企業よりもROE(自己資本利益率)は7%、EBIT(利払い前・税引前利益)マージンは6%高く、パフォーマンスの高さを裏づけている。
出典:McKinsey&Company “Women Mattter:Time to accelerate:Ten Years of Insight intoGender Diversity”(平成29年)
女性活躍の状況は投資判断にも影響
約7割の機関投資家が投資先判断に女性活躍情報を活用する理由として、「企業の業績に影響があるため」と回答。女性活躍推進が長期的に企業の成長につながると考えている。
出典:内閣府「ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究アンケート調査」(令和元年)
男性の育休取得者が増える
男性の育休取得率は、女性役員がいる企業では8%。女性役員ゼロの企業では6%。いずれも低率ではあるが、女性役員のいる企業のほうが男性の働き方の改善がうかがえる。
テレワーク導入率が他企業と比べ5%近く高い
テレワークの導入は女性役員のいる企業は10%、いない企業は5%にとどまる。テレワークにより家事や育児との両立のしやすさ、働き方の選択肢の広がりなどが挙げられている。
フレックスタイム制度も積極的に採用
フレックスタイムの導入は女性役員のいる企業で8%。いない企業で6.7%。テレワークの導入と並行して、より従業員にとって働きやすい職場環境として重要な目安になる。
出典:「女性活躍の推進に関する企業の取り組みと結果」に関するアンケート調査の結果(平成30年)
取材・文/佐藤恵菜
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