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DXが進む中でどこまでクラウドに預けるべきか?

2021.11.16

TOKYO2040 Side B 第九回『DXで組織の魂ごとクラウドに預けてしまう前に』

 今年に入ってから、銀行や携帯電話といった生活に根ざした大規模システムでの障害について、立て続けに報道されました。

みずほ銀行、ATM130台一時使えず 今年6回目の障害

ドコモの通信障害 回復も一部でつながりにく 通信網は3時間後に復旧 利用制限で影響長引く

 本誌連載の小説『TOKYO2040』でも、第七、八、九話でそれぞれ、コミュニティバスに乗降する際の認証ができなかったり、刑事が警察のシステムでデータが見つからないことを煙に巻くように言ったり、職員が庁舎に入る際にエラーが起こったりと、断続的ながら規模の大きい障害が自治体のシステムで起きている様子を描いています。

 民間企業や行政でDXが進むにあたり、社内システムの入れ替えや、人がしていた業務をデジタル化したり、クラウドやIT系プラットフォームのサービスを導入したりする場面も増加しています。

 そんなさなか、デジタル庁が「ガバメントクラウド」で、米企業のサービスを利用するというニュースが話題となりました。

デジタル庁のクラウド事業、採用したのは米アマゾンとグーグル…350の要件満たし

便利な反面、クラウドならではの問題も

 これについては、国の重要なデータやそれを扱うシステムを米企業の提供するサーバーに格納してよいものかどうか。機密保持や国防の点で問題であるとする見方や、国内IT産業の喚起や将来に向けての人材育成に繋がらないという意見まで、幅広い観点で論じられています。

 規模によりけりではありますが、自社でシステムを開発し、サーバーやネットワークインフラを確保して運用するというのは、費用や人材の面でかさむと考えられ、クラウドへの移行が流行しています。

 そしてクラウド上でシステム開発をするよりもさらに効率的とされているのが、出来合いのクラウドサービスを利用し、必要なカスタマイズは「ノンコード」すなわち専門的なプログラマー無しで行うというものです。

 少しオンラインゲームの話をします。昔話ではありますが、15年ほど前にパソコン用オンラインゲーム運営の事業をしていまして、その頃はクラウドという概念が無かったので、データセンターにサーバーを100台ほど、リースで揃えて運用していました。いわゆるオンプレミスです。

 トラブルが発生し、遠隔操作を受け付けない状態になったり、ハードウェア障害の疑いがあったらエンジニアが現地入りをして解決をします。深夜にアラートが発生して、朝方まで作業し、駅前のハンバーガー屋で朝食セットを食べて会社に出勤、ということもありました。

 あるときは、データセンター利用料がかさむことから、安いプランのラックへ引っ越しさせることになり、事業部のスタッフ総出で一日がかりでサーバーを物理的に移動し、セットアップから再始動まで三日かけたこともありました。

 これはネットサービスの黎明期ならではの出来事で、三日分の売上げを飛ばしてでも引っ越したほうが長期的に考えて得だったのでそのような決断をしたのですが、今となっては、あの時クラウドのサーバーを利用できていたら、コストや資産管理での苦労をそれほどしなくて済んだかもなぁ、と思う次第です。

 オンラインゲームが、パソコンだけでなくスマートフォンでも楽しめるようになり、ゲームタイトルの多様化の裏には、オンプレミスからクラウドへ、という運用の変化もあったわけです。

 ですが、便利な反面、クラウドならではの問題も起こるようになっています。それはクラウドの大規模障害です。サービス企業の別なく、複数のスマホゲームタイトルが遊べなくなる……。そんな障害について耳にしたことのある方もいらっしゃるかと思います。

 ゲームプレイヤーたちはSNSで「サーバーが落ちてるらしい」「あのゲームもこのゲームもできないのはAWSで障害が起こっているからだ」「海外のプレイヤーは遊べてるみたいだ」などと発信し、現状を確認し合ったりします。

 サービス企業も、こうなってしまうとお手上げです。契約の上で利用しているため、復旧を祈るしかありません。

 クラウドサーバーが復旧したあと、運営チームは速攻で異常がないかをテストプレイしなければなりませんし、プレイヤーのデータが壊れたりしていないかもチェックが必要です。プレイヤーが買っていた有料アイテムが失われていないか、買っている途中に接続が切れたりしていた人はいないか、ヒヤヒヤものです。

 さらに、復旧を知らせるために公式サイトに告知文を掲載したり、SNSのオフィシャルアカウントにも投稿。一番頭を悩ませるのはいわゆる「詫び石」で、プレイできなかった分のお詫びとして、アイテムやポイントを配付する慣習があります。契約しているクラウドに問題があったというのに、お詫びはサービス企業の持ち出しです。

クラウドへの移行は流行ではあるが、議論は必要

 オンラインゲームのことを書きましたが、ゲームでなくともクラウドサービスを利用している企業はこういった「なんとなく理不尽な展開」を感じたことがあるかもしれません。

 オンプレミスにはオンプレミスの、クラウドにはクラウドの、メリットがあり、デメリットがあります。どちらも障害を経験してみると「何事も起こらなければ起こらないほど、インフラエンジニアが活躍をしていた証拠である」というのがわかるのですが、障害が起こってから「人を配置し、城の守りを固めておけばよかった」と後悔しても始まりません。

 これからDXを進めていこうという企業や組織では、イニシャルコスト、ランニングコストといった費用面、ネットワークインフラやサーバー機器の調達のしやすさやメンテナンス性、事業にあった構築がその仕組みでできるかどうか、大切なデータを冗長性やセキュリティといった様々な面で守ること、そして、日本は地震が多いので万一の災害時にどのようなことが想定できるか……。丁寧な比較検討を進めている途中で、偉い人が「そもそも自社の大事なデータを他の企業に預けるとは何事だ!」と言い出してちゃぶ台がひっくり返されることも充分あり得ます。

 そこに、規模が大きくなればなるほど、冒頭に挙げましたニュースのように、国防や国内需給やら人材育成を含めた組織の長期運営も絡んできますので、どこまでいっても結論が出ない命題ともいえます。

 これまでの連載で触れてきたことと同様に、DXやデジタル化においては、単なるツール選びではなく、一体どんな業務の変革が起こるのか、それに相応しいシステムはどんなものか、そしてその手前の作業として、現在の業務やそのフローを洗い出しておくべきです。

 本誌連載の小説でもこれまで、起こってきた事象の裏に何があったのか、20年後の未来までにDXそのものに傾倒するあまり見落としてことがあったのではないか……etc. 引き続き描いていきますので、ご期待ください。

文/沢しおん
作家、IT関連企業役員。現在は自治体でDX戦略の顧問も務めている。2020年東京都知事選に無所属新人として一人で挑み、9位(20,738票)で落選。

このコラムの内容に関連して雑誌DIME誌面で新作小説を展開。20年後、DXが行き渡った首都圏を舞台に、それでもデジタルに振り切れない人々の思いと人生が交錯します。

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