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自主的なサービス残業は退職時に残業代を請求することはできる?

2021.11.11

周囲の目が気になって退勤しづらい、仕事が多すぎて残業しなければ終わらない……

こうした状況では、会社側の指示がなくても自主的に「サービス残業」が行われがちです。

実は、自主的なサービス残業についても、残業代が発生するケースがあります。

もし自主的なサービス残業が常態化していて、仕事が割に合わないと感じ始めている方は、一度弁護士にご相談ください。

今回は、自主的な残業と残業代の関係性につき、労働基準法のルールを踏まえて解説します。

1. 残業代が発生する「労働時間」の定義は?

労働基準法上、残業代は「労働時間」について発生します。

「労働時間」とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と判例上定義されています(最高裁平成12年3月9日判決)。

上記の定義からは、会社の具体的な指示によって残業している時間が、労働時間に含まれることは明らかでしょう。

しかし実際には、「指揮命令下」の要件はもう少し広く解釈されており、自主的なサービス残業をしている時間についても、労働基準法上の「労働時間」に該当するケースがあるのです。

2. 自主的な残業に残業代が発生する主なケース

自主的なサービス残業をしている時間が、残業代の発生する「労働時間」に当たるのは、会社の明示的な指示がなくとも、従業員が会社の指揮命令下に置かれていると評価できる場合です。

具体的には、サービス残業を会社が「黙認」していると言えるかどうかがポイントとなります。

自主的なサービス残業が労働時間にカウントされるケースの典型例は、以下のとおりです。

2-1. 業務量が多すぎる場合

会社からあまりにも多くの業務を指示され、定時で終わらなかった分について自主的に残業をした場合には、残業代が発生する可能性が高いです。

従業員のキャパシティを超える仕事量が課されているにもかかわらず、それを定時の範囲で終わらせるように会社から言われたとしたら、それは無理強いと言うほかないでしょう。

従業員に対して多くの業務をこなすように指示する場合には、会社としては、残業が発生し得ることも当然織り込んでおくべきです。

したがってこの場合、会社が残業について黙示的に指示をしていた、または少なくとも残業を黙認していたと評価でき、自主的な残業であっても残業代が発生すると考えられます。

2-2. 自主的な残業が常態化している場合

自主的な残業が常態化しているにもかかわらず、会社がその状態が放置している場合には、残業代が発生する可能性が高いです。

毎日のように従業員が自主的な残業をしている場合、その事実を適切に把握することは、会社側の負う労務管理上の責務と言うべきでしょう。

従業員が残業代を請求してこないからといって、それにかまけて従業員にサービス残業をさせ続ける会社の行為は、決して正当化されるものではありません。

この場合、少なくとも会社が残業を黙認していたものとして、自主的な残業にも残業代が発生すると考えられます。

3. 残業の申告制が採用されている場合は?

残業時間をコントロールするために、従業員の残業を申告制としている会社が存在します。

会社が残業の申告制を採用する目的は、主に以下の2点です。

・残業代の支払額を抑え、人件費を抑制するため
・労働基準法や36協定に定める残業の上限時間を超過しないようにするため

残業の申告制が採用されている場合、「会社が認めてくれなければ、残業代は請求できない」と思い込んでしまうかもしれません。

しかし、残業代が発生する「労働時間」に当たるかどうかは、従業員が会社の指揮命令下にあるかどうかという客観的な基準によって決まります。

言い換えれば、残業代を請求できるかどうかは、残業の申告制が採用されているかどうかとは全く関係がありません。

申告制を理由として、残業代を請求しにくい印象を持ってしまっては、会社の思うつぼです。

サービス残業が常態化している場合には、たとえ残業の申告制が採用されているとしても、会社に対する残業代請求をご検討ください。

4. 退職時に残業代を請求する際には、消滅時効に注意

在職中に残業代請求を行うと立場が悪くなりそうなので、退職時に請求したいと考える方も多いところです。

退職時に残業代を請求する場合には、残業代請求権の消滅時効に注意する必要があります。

以下の時効期間が経過し、会社から消滅時効を援用された場合には、残業代を請求できなくなってしまうのです。

消滅時効の完成を阻止するためには、民法で定められた時効の「完成猶予※」または「更新※」の措置を講ずる必要があります。
※残業代請求権の発生時期が2020年3月31日以前の場合には、完成猶予→停止、更新→中断

消滅時効にかかりそうな未払い残業代が存在する場合には、対応方針について検討するため、一度弁護士にご相談ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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