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意外なところに潜む世界最大の感染症「歯周病」のリスクと治療法

2021.11.01

日本人の成人約8割が罹患しているとされる歯周病。世界最大の感染症とも言われるこの病気に対して、どれくらいの人が日ごろから意識し、また、予防に努めているのだろうか?

そんな「歯周病」に関する意識調査がこのほど、科研製薬株式会社により、20代から60代までの男女500名を対象にして実施された。なお本稿では、調査を監修した大阪大学大学院 歯学研究科 歯周病分子病態学 教授 村上伸也氏の解説も併せて紹介する。

コロナ禍における歯・口のケア意識とは?

■コロナ禍で歯科医院の“受診控え”をしている人は半数以上!

コロナ禍において、歯科医院の受診をためらうかどうかについての質問をしたところ、現在も「ためらう・少しためらう」と回答した人は全体の53%にのぼった。

さらにコロナ禍以降、口の状態(歯や歯ぐきの健康状態)が悪化したかという質問に対して「そう思う・少しそう思う」と回答した人は、全体の5人に1人(20.8%)。中でも歯科医院の受診を「ためらう・少しためらう」と回答した人は、3人に1人(32.4%)が悪化したと回答しており、コロナ禍の受診控えの影響が伺える結果となった。

■“歯周病”は気になる病気だと感じる人は、8割以上も!

受診控えの傾向にある中、正しい知識をもって歯や口の状態をケアすることが重要。そこで、歯周病が気になる病気かどうか尋ねてみると、「そう思う・まあそう思う」と回答した人は8割以上(84.2%)にのぼった。しかし、歯科医院を定期的に受診しているかを聞いてみると、半年に一回以上受診している人は4割未満(35.6%)と少ない結果に。半数以上(51.8%)が定期的に受診をしていないという実態が明らかになった。

【医師解説】
歯周病は、軽度〜中等度の場合に、顕著な自覚症状が無いまま病気が進行します。歯ぐき(歯肉)の腫れや痛み、歯の揺れ(動揺)を感じる頃には、重度の歯周炎になっていることも少なくありません。気になる症状があれば必ず、もし無くても定期的(少なくとも1年に1回程度)に、歯科医師にご相談することをお勧めいたします。

歯周病に対する勘違いとは?

■歯周病は「歯ぐきと歯を支える骨」の病気…知っている人はわずか1割程度

また、歯周病はどこが侵される病気かという質問をしたところ、1番多かった回答が「歯と歯ぐき(31.8%)」。「歯ぐきと歯を支える骨」と正しく回答できた人はわずか1割(13.6%)にとどまった。歯周病がどのような病気なのか、正しく理解できている人はかなり少ないことがうかがえる。

■歯周病リスクは“40代以上から”と勘違いしている人は、4割以上も……実は10代後半からリスクが発生!

歯周病に罹るリスクに関して、何歳から注意が必要だと思うかという質問に対しては、「40代」という回答が最多(24%)となり、全体の4割以上の人が、40代以上と回答した。しかし、歯周病のリスクは10代後半から発生すると言われており、歯周病ケアは遅くとも20代から必要だと考えられる。

【医師解説】
虫歯(齲蝕)は歯の病気、歯周病は歯を支える歯ぐき(歯肉)や骨(歯槽骨)の病気と明確に区別して理解できている人は、まだ少ないようですね。歯周病は歯ぐき(歯肉)だけが侵されている歯肉炎から始まり、その後、歯槽骨も破壊されてしまう歯周炎へと病気が進行していきます。

痛みのような明確な自覚症状を伴う場合には、かなり進行した歯周炎になっていることが一般的です。中高年の病気と考えずに、早い時期から歯周病の予防・早期治療を意識していただくことが、大切な歯を守るために極めて重要です。

■意外なところに潜む歯周病リスク!

歯周病の直接的な原因は、歯垢(プラーク)と歯垢の中の細菌が出す毒素だが、普段の生活習慣など意外なところに歯周病を悪化させる間接的な因子(リスク因子)が潜んでいる。グラフにある「ストレス」「喫煙」「妊娠」「虫歯」「歯並び・かみ合わせ」「加齢」「遺伝」、実はすべてが代表的なリスク因子。本調査の回答では、働き世代が特に気を付けたい“ストレス”に間接的なリスクがあることを知っている人は5割弱(46.4%)。一方、妊娠と遺伝が間接的な因子であると知っている人は、わずか1割程度にとどまった。

【医師解説】
歯周病の原因は口の中の細菌(デンタルプラーク)ですが、その細菌が溜まりやすい口の環境、細菌に対する抵抗力を弱めてしまうような身体の状態は、歯周病のリスク因子になります。虫歯が直接歯周病のリスクになることはありませんが、歯と歯茎の境界部に出来た虫歯や、適合の悪い詰め物があったり、歯並びが悪いと、細菌が溜まりやすくなる(プラーク停滞因子ともいいます)ので、歯周病のリスクになります。

妊娠期には、性ホルモンバランスの変化により歯周病リスクが上り、さらにストレス、喫煙、糖尿病などは、身体や歯周組織の抵抗力を弱めるのでリスクになるため、歯周病リスクは遺伝的要因も関与していると考えられています。

歯周病治療の遅れに対しては後悔も…

歯周病の悪化や治療の遅れで後悔した経験がある人は、30代以上の4人に1人もの割合でいることがわかった。具体的なエピソードとしては、「歯ぐきが下がってから受診した。もっと早くから検診を受けていれば進みを止められたかも。(滋賀県・50代女性)」、「歯茎が痩せてきたのに通院せず、放置していたらさらに悪化した(山形県・30代女性)」や「早くに歯科に行けば歯を失わなくて済んだ(東京都・30代女性)」など。

実際の自覚症状として「歯ぐきが下がりはじめてから」初めて歯科医院を受診するという人が多く、30代の若い層でも歯周病の予兆を見逃し、後悔している人が多い実態が浮き彫りとなった。

【医師解説】
歯周病によって、一度失われた歯ぐきや骨は元通りにはなりません。そのため、治療の遅れを悔いる患者さんが多くおられるのだと想像します。幸い、中等度の歯ぐきや歯槽骨の破壊に対しては、歯周外科手術の際に成長因子を含むお薬(リグロス®)を投与することで、歯周組織を再生することが可能になりました。保険適用の治療ですので、是非歯科医師にご相談なさって下さい(症状によっては、適応とならない場合もあります)。

【調査結果に対する総評:監修 村上伸也先生】
歯周病という病気は、「世界で最も蔓延している感染症のひとつ」と捉えられており、日本に限らず、多くの国々で罹患率の高さが問題になっています。歯周病が命に関わることは、通常ありませんが、「口が支えるQOL」を生涯高く維持するためには、歯周病の予防・早期治療は極めて重要です。

今回の調査結果から、現状において我が国においてそのような認識が十分なされているわけではないことが示されたようです。かかりつけの歯科医師に、いつでも気軽にお口の健康を相談できる状況が一層整えられることを念じています。まずは正しい歯みがきから、早速ご家族みんなで実践してください。

大阪大学大学院 歯学研究科 歯周病分子病態学教授・村上伸也 氏

専門は歯周組織の恒常性維持機構、歯周病の病態解明、歯周組織再生療法の開発。日本歯周病学会専門医・指導医。現在も教授として研究・教育に従事し、歯科医として臨床現場に立つ。
1988年、大阪大学大学院歯学研究科修了。

米国国立衛生研究所(NIH)研究員を経て、1990年から大阪大学 歯学部に所属。2002年から大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 教授。2016年、大阪大学歯学部附属病院 病院長に就任(2020年3月任期満了退任)。2019年、特定非営利活動法人日本歯周病学会 理事長に就任(2021年3月任期満了退任)。著書は「歯周病なんか怖くない(大阪大学出版会)」など。

<調査概要>
調査名称:歯周病の意識調査
実施時期:2021年9月24日(金)~9月27日(月) 
調査手法:インターネット調査  
調査対象:本人、または同居の家族が医療・製薬業種、または専門家ではない全国20〜60代の男女500人
※集計データの構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合がある。

出典元:科研製薬株式会社
https://www.kaken.co.jp

構成/こじへい


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