新型コロナウイルス感染症の世界的な流行から1年以上が経ち、人々の生活・暮らしが大きく変わりつつある今、住まいにも大きな変化が押し寄せている。
先日、長らく続いた緊急事態宣言が全国的に解除され、徐々に街にも人が戻りつつあるが、生活様式がコロナ以前に戻ることは想定しづらく、コロナ後のいわゆる「新しい生活様式、ニューノーマル」は今後さらに定着していくことが予想される。
そのような社会背景の中で、暮らしはどのような変化をしているのか、ルームクリップはRoomClipに投稿された写真や行動データをもとに、第6回目のレポートを発表した。
キッチン家電の多様化が加速中。新定番と、変化に迫られるその周辺
食のライフスタイル多様化に伴って増えた「家電」
RoomClipにおいてキッチンの総投稿数における「家電のジャンル名がタグ付けされた写真の投稿率」は5年間で約63%増加した。また、深層学習による物体検知で家電が写っていると判定されたキッチンの写真の投稿水準も相関して上昇している。
投稿されるキッチン家電も「多様化」
キッチンにある家電の数が増えた中で、どんなアイテムが増加したのでしょうか?そこで、キッチンにおいて投稿された写真にタグ付けされた全ての家電のジャンルを2016年と2021年(9月まで)で比較した。
(1)一般家電量販店3社におけるキッチン家電の全カテゴリー名をリスト化
(2)2016年から2021年の各年でRoomClipのキッチンの場所タグ投稿における(1)のリストに含まれる名称のタグ、全投稿を集計
結果、使用されていた家電ジャンル名のタグは2016年は24種、2021年は36種で、1.5倍に増加していた。
合わせて各年のキッチン家電の投稿全体における家電1種ごとの平均投稿率を算出し、その平均投稿率を上回る家電が何種あったかを集計した。
こちらの結果は2016年は5種、2021年は10種と2倍に増加。つまり、多くの家庭で、定番化しているキッチン家電の種類が増えていると示唆される。
新しくタグ投稿率が平均値を上回った家電を見ると、現代の新三種の神器としても名前があがる「食洗機」や、時短調理に欠かせない「電気ケトル」「電気圧力鍋」などが特徴的だ。
変化に伴い「積極的にタグ付けされる」ブランドが登場
視点を変え、キッチンで投稿される家電ブランドについても参照した。
2010年代後半にキッチン家電の投稿が増加する中、2018年にバルミューダはもっともRoomClipで投稿されたキッチン家電ブランドとなり、それ以降も現在まで首位を維持している。
これはあくまで「タグ付けされたブランドの1位」であり市場シェアとは異なるが、多様化するライフスタイルに伴ってキッチン家電も多様化する中で五感や体験の価値に寄り添うプロダクトをリリースしたブランドが業界のポジションを得ることは、その後の各ブランドの動きを見ても示唆的と言える。
コロナ禍を経てさらに普及が加速したキッチン家電は?
キッチン家電の多様化が進む中、コロナ禍はそれにどんな影響を与えたのかについて投稿の推移から確認した。
2016年より数値が連続的に上昇する家電で、さらに2019・2020年間で上昇率が激しかったTOP3が下記グラフに挙げる「電気圧力鍋」「炭酸水メーカー」「ホットプレート」だ。
いずれもコロナ禍以前から一定の関心が集まる中、コロナ禍の巣ごもり消費需要によりブレイクしたジャンルと言える。
置き場所がない。コンセントが足りない。使いたい場所にない。家電の多様化によって求められる住まいの変化
これまで大きく“スタメン”の変わることのなかったキッチン家電の多様化は、使用する住まいの中でいくつかの痛みも抱えている。トピックをいくつか紹介しよう。
設置スペースの不足
これまでキッチン家電はいわゆるカップボードやそれに類する役割の棚に置かれてきたが、従来定番とされてきた家電より種類も数も多くなり、置き場所が不足しているケースが見られる。特に賃貸では顕著だ。
近年の新築・リノベのキッチンではあらかじめ多数の家電を置くことを考慮したレイアウトも事例として見られるケースが増えてきた。
コンセントの不足:数
家電の増加に伴って必須となるのがコンセント。「キッチン」「コンセント」に関するコメントでのやり取りや検索はいずれも上記のグラフの通り上昇トレンドをたどっており、悩みを打ち明けたり参考例を探す動きが見られる。
置き場所の問題と同様に、従来想定されているたくさんの家電が置かれた結果、コンセントも不本意な形での増設を余儀なくされている状況だ。
コンセントの不足:場所
コンセントの問題はキッチンのみに限らない。ホットプレートのケースを代表に、食事や調理の場所がダイニング・リビング・ベランダなど、家のそこかしこに拡大していることも考慮が必要だ。
キッチン家電をはじめとして、今後の住まいづくりにおいて、ライフスタイルの変化に伴った所有アイテムの変化を見つめることは重要な着眼点となりえる。
構成/ino.