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【今月の一冊】アンソリッドに惹かれる人におすすめしたい傑作「キャビネット」キム・オンス

2021.10.24

『キャビネット』キム・オンス

 前世紀のパリに存在した、稀代の蒐集家にして博覧強記のディレッタント、ロミ。訳出された著書の中で一番好きなのが『突飛なるものの歴史』(作品社)です。

〈機械的に反復される慣習の世界に囲い込まれないものがある。それが何かの拍子にひょいととびだしてきて、まるで自明のもののようにそこらに転がっている。これほど不安な、あるいはむしろ不穏といってもいい光景もないだろう。たとえ当の突飛なものがたった一つのオブジェにすぎなくても、その背後には、このオブジェを一部分に組み込んだもう一つの世界システムがひろがっている〉とは、この本に寄せた種村季弘氏の言葉。

 別の世界を見せてくれるかもしれないという「不安」を味わいたくて、現時点の科学では解明できない現象や奇人変人の話を好んで見たり読んだりしてしまう。そんなアンソリッド(突飛なるもの)に惹かれる同好の士におすすめしたい韓国発の小説が、キム・オンスの『キャビネット』なのです。

アンソリッドな人々に囲まれついに事件に巻き込まれ……

 主人公は、艱難辛苦の就活を経て、やっとY公企業の付設研究所に就職できた〈私〉。ところが、ほとんど仕事がない。そんな不条理なまでに退屈な日々にあって、〈私〉は〈十三号キャビネット〉を発見します。中には謎のファイルがびっしり。好奇心から読んでみたところ、それはキャビネットの持ち主であるクォン博士が集めたアンソリッドな人々の報告書。盗み読みしたことの罰として、クォン博士の仕事を手伝うようになって7年──というのが、この小説における〈私〉の現在なんです。

 揮発油を飲んだり、ガラスを常食する人々。小指でイチョウの木が育っている男。どうしても猫になりたい男。口の中に小さなトカゲを飼っていて、そのトカゲに舌を食べられた女。恥ずかしい過去を書き換え新たな記憶による現在を創り出すメモリー・モザイカー。何か月も、時には何年も時間を失ってしまうタイム・スキッパー。完璧な男性器と女性器を併せ持つネオヘルマフロディトス、宇宙人の子孫を自認する人々、etc.etc.クォン博士によって、〈シントマー〉と名づけられた〈変化した種の兆候を示す〉存在のエピソードが数多く報告される合間に、〈私〉の過去と現在を挿入。最終的に、このファイルによって〈私〉が厄介事に巻き込まれ、恐ろしい目に遭うというサスペンスも用意されていて、読みごたえたっぷりの物語になっているんです。

 でも、おもしろいだけじゃありません。わたしが思うこの小説最大の美点は、こんな語りで示されています。〈我々は、自分が知っている生き方以外にも非常に多くの生き方が存在しうることを認めない。いくら突拍子もなく無謀に見えても、それが(中略)彼らが自分なりに考案した必然的な秩序であることを知らない。知らず、認めようとしない〉。

 アンソリッドがもたらす、慣習に曇った目を浄化する異化効果を否定しない世界を、この小説は希求しているんです。ダイバーシティーがただのお題目に終わらないためにも、大勢の人に手に取ってほしい。これは読んでおもしろい問題提起作なのです。

『キャビネット』

『キャビネット』キム・オンス

著/キム・オンス 訳/加来順子
論創社 2750円

豊﨑由美
わたしは、だから、かつて北京市内をチョコボールのキャラクターの着ぐるみに入って走り回ったりした江頭2:50が大好きなのです。彼は日本が世界に誇るべきアンソリッドと思います。

いつまでも若い自分でいるために【編集部イチオシの3冊】

『自転車に乗って』

著/忌野清志郎、江戸川乱歩ら27人 河出書房新社 1870円

『自転車に乗って』

■ サイクリングは健康にも良いのです

練習した日々、その心地よさ、遠出の楽しさ……。自転車にまつわるエッセイ、詩、漫画など27の短編を集めた1冊に、自身のあの頃を思い出す。本書をカバンに入れて、出かけた先で読書。そんなサイクリングも楽しそう。

『SUPER AGERS 老化は治療できる』

著/ニール・バルジライ、トニ・ロビーノ 訳/牛原眞弓 CCCメディアハウス 2200円

『SUPER AGERS 老化は治療できる』

■ 80歳で青春の日々が実現する!?

老化を病気のように抑え、改善し、治しさえできるという。百寿者の生活の研究をベースに、解明している老化を遅らせるシステム、さらに長寿のための健康法まで紹介。80歳なんてまだまだ若い。そんな日も遠くない⁉

『お天道様は見てる 尾畠春夫のことば』

著/白石あづさ 文藝春秋 1815円

『お天道様は見てる 尾畠春夫のことば』

■ 赤とかオレンジの服が元気の秘訣!

〝スーパーボランティア〟の尾畠春夫氏。貧困だった幼少時代、ボランティアを始めた経緯など、氏のこれまでを綴る。その行動力もだが、「自分の夢よりも、人の命が大切」をはじめ、散りばめられた氏の哲学にグッとくる。

文/編集部

※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2021年8月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。

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