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コロナ禍で「片思い」の人が増えていた!?

2021.10.21

 あの黄色い看板の店には見覚えがある。見たのはテレビや雑誌だったかもしれないし、ネットの記事だったのかもしれないのだが……。

電車広告について考えながら赤羽界隈を歩く

 JR埼京線に乗る機会があったので、帰路には久しぶりに赤羽駅で降りた。その理由はひとつ。アルコールだ。我ながら浮ついている感じもするのは否めないが。

 夕方6時を過ぎたところだが辺りはすでに暗い。日中はまだ暑い日もあるが、確実に秋は深まっている。駅の東口を出ると街のネオンが眩い。光量的には“コロナ前”にほぼ戻っていそうである。

※画像はイメージです(筆者撮影)

“宣言”が明けてようやく外でもアルコールが飲めるようになったが、ここ赤羽にはまだ“戻って”なかった。1人で気兼ねなく飲める店、具体的に言えば立ち飲みの店が多い赤羽に行ける機会をここのところ窺っていたのである。早い時期に実現できたのは単純に嬉しい。

 なるべく電車に乗らないという生活がすっかり板についてしまい、埼京線に乗るのも久しぶりだった。ほぼ満員の電車も久しぶりだったが、電車内では相変わらず大半の人々がスマホを眺めていて、その割合はもはや8割にも達しているのではないだろうか。

 こうなってくると、電車内の広告の影響力はどんどん低下しているのではないかと思えてくる。最近になって週刊誌2誌の電車内の「中吊り広告」が終了したがこれも当然、スマホが影響していることは間違いない。

 かつてよりも電車内や駅の広告の影響力は低下しているともいえるのだが、しかし少し考えてみれば乗客は電車内の広告をあまり見なくなったぶん、スマホを通じてネット広告を頻繁に見ていることになる。場合によっては人々はこれまで以上に広告と名のつくものを多く見ているのかもしれない。

 駅の東口を出て右の通りを進む。少し歩くと立ち飲み店がいくつか点在する一角がある。まぁ、近郊の酒飲みの向きはよくよくご存知のこととは思うが……。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 インターネットの普及によって若者を中心に“テレビ離れ”が進んだといわれているし、実際にそうだと思うが、電車広告と同じくテレビをあまり見なくなっただけであって、メディアへの接触時間は減るどころかむしろ増えているのかもしれない。少し前まではテレビでしか放映していなかった種類のCMも、今ではネットでも普通に目にするようになっている。

 個人的にもともとテレビをあまり見ないほうなのだが、昨今はテレビ放送各社がニュースなどの映像をユーチューブなどに随時投稿しているので、これまでよりも“テレビコンテンツ”を視聴することが多くなってきているのは面白い現象だと思う。“テレビ離れ”であったはずが、ネットを介してこれまでよりもテレビに近づいているのだ。

 通りを歩いていると、見覚えのある黄色い看板の店が見えてきた。古くからある大衆居酒屋だ。

 この店を紹介した番組か、あるいは記事を見たことがあった。ネット記事かもしれない。昼から営業しているいわゆる“昼飲み”ができる店で、キャベツの卵炒めが名物という内容だったのを憶えている。もし入れるようなら今、この店に入ってみる案もあるが今日は行きたい店があるのでやめておく。

コロナ禍で“パラソーシャル”な関係が深まっていた

 通りを進んで途中から左折して路地に入る。第2候補の立ち飲み店の前を通り過ぎる。珍しくわりと空いているようだ。もし目当ての店が入れそうもなかったらここに入ってみよう。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 さっきの黄色い看板の居酒屋だが、少し記憶を探ってみると確かユーチューブの動画で見たことを思い出した。酒場を中心に飲食店を訪問して紹介するユーチューブチャンネルの動画の1つであの店の紹介を見ていたのである。テレビでも雑誌でもなく、ユーチューブ動画だったというのは、我ながらいかにも今の時代を反映しているといえそうだ。

 今回のコロナ禍もあってか、最近はすっかりユーチューブ視聴が生活の一部に組み込まれてしまっている。特に夜に部屋でアルコールを嗜んでいる時はかなりの確率でユーチューブ動画を視聴している有様だ。中には毎日のように新たな動画をアップしているユーチューバーもいるので、視聴が半ば日課のようになってしまってもいるのだ。

 世の多くと同じく、個人的にも自粛期間中は直接的な人的交流が極端に減ったのだが、その一方でユーチューブ視聴時間が増えたことから、毎日のようにその姿を確認するユーチューバーも幾人か出てくることになった。単純な接触時間と接触頻度を考慮すれば、自粛期間中はこれらのユーチューバーの人々が自分にとって一番身近な人物であったことにもなる。

 テレビをはじめとするメディアに頻繁に登場する芸能人や芸人、あるいは支持しているユーチューバーなどとの一方通行の“片思い”の関係は心理学の世界でパラソーシャル(parasocial)な関係といわれている。そして最新の研究では今回のコロナ禍において、人々のパラソーシャルな関係はより強まったことが報告されていて興味深い。


「パラソーシャルな関係は、スクリーン上の人々と私たちが築く社会的な感情的絆です。架空の人物や有名人との間の私たちの認識されたつながりは、私たちの実際の友情と非常によく似た様相で発達し、維持され、解消されます」と(論文執筆者の)ボンド博士は言いました。

 パンデミックが発生したとき、ボンド博士は研究の幅を広げて、社会的距離と検疫行動がスクリーンを眺めて家で過ごす時間をどのように増やしたか、そして娯楽メディアで過ごす時間が現実のオフラインの友人との関係と、メディアに登場する人物とのパラソーシャルな関係の両方をどのように変えたかを調べました。

 調査によると、人々がさまざまなソーシャルメディアプラットフォームで友だちと交流する時間が長くなるほど、実際の友だちとテレビでしか知らない友だちを区別することができなくなります。

※「University of San Diego」より引用


 米・サンディエゴ大学のコミュニケーション研究の専門家で准教授のブラッドレー・ボンド氏が2021年5月に「Journal of Social and Personal Relationships」で発表した研究では、パンデミックの期間を通じて、人々のメディア登場人物とのパラソーシャルな親密さは時間の経過とともに増加し、お気に入りのメディア登場人物がより意味のある存在になったことを示唆している。つまり今回のコロナ禍で我々は芸能人やユーチューバーなどとの一方通行の関係がより親密に感じられるようになったのである。

 2020年4月から6月の間に2週間間隔で実施された4つの調査で構成された研究の結果では、パンデミック下の準隔離生活においても人々はSNSやZoom(ズーム)を活用するなどして総じてソーシャルな関係を維持することができていたのだが、その一方でメディアのキャラクターや有名人との関係が大幅に増加したことが示されることになった。

 ボンド博士は、我々のパラソーシャルな関係は「対面の状況で友人と過ごす時間が少ない人々と、ビデオ会議アプリのように画面上で実際の友人と過ごす時間が長い人々の間で最も成長した」と述べている。今回のコロナ禍の自粛生活においてお気に入りの芸能人やユーチューバーが増え、より頻繁にコンテンツを視聴するようになったという人が増えていたのである。

情報の洪水に晒され行ってみたい店ばかりが増えていく

 目当ての店に到着した。老舗の立ち飲み店である。けっこうなお客の入りだ。さっそく店に入る。

 店の人から入口で検温するように言われ、自分の顔をタブレットのディスプレイに映すタイプの端末で体温を測られ、無事に“正常です”と音声が流れて入店を許可される。

 なんとカウンターが1人客で埋まっていて、その後ろに並んでいるスタンディングテーブルの1つに着くよう店の人に促される。席に着くなりさっそく焼酎ハイボールにアジ刺身、煮込み、豚もつやきのタンとカシラを注文。現金でその都度支払うシステムだ。トレイの上に千円札とポケットにあった小銭を置いておくと、お店の人がお代をそこから持って行ってくれる。

 ドリンクと肴がやってくる。さっそく気分だけでも乾杯してジョッキを傾ける。この瞬間が部屋で飲むのと最も異なる外飲みの醍醐味だ。美味い。不特定多数が集うソーシャルな環境の中で飲む酒の味は、部屋で1人で飲む酒とはまったく違う体験となる。社会生活の延長線上としての飲酒行為がここにはあるのだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 ご存知のように赤羽は上野と並んで酒飲みが昼間から集う街でメディアの取材も多く、前出のケースのようにユーチューバーも多く訪れている街だ。人気の某グルメ系ドラマにも赤羽の飲食店がいくつか登場している。

 コロナ禍で外で飲むことがままならなかった中、ユーチューブの視聴時間が増えれば飲食店紹介動画を通して気になる店ばがりが増えていくことになる。先ほどの黄色い看板の居酒屋のように勝手な親近感を“片思い”で抱くこともありそうだ。

 そして最近では民放のユーチューブチャンネルに投稿されている飲食店ドキュメンタリーも見ることが増えてきて、さらに行ってみたくなる店が増えてきている。こうした情報に触れると都内だけでも気になる店がとめどもなく増えてきてしまう。東京にはいかに多くの人気店があるのかを痛感する次第だ。

 4人の団体のお客が入ってきた。それぞれ検温を済ませて店の人の指示でスタンディングテーブルに陣取った。仕事が終わったその足で来たらしく、仕事終わりの一杯が実に美味しそうである。その一杯はもちろん、ユーチューブを眺めながらの家飲みでは味わうことはできない。

 チューハイはすぐになくなってしまったのでお代わりを注文した。ブリの刺身とワカサギのマリネ、やきとん2本を追加する。次のチューハイを空けたら一杯だけ日本酒も飲みたい。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 情報過多の世の中で行ってみたい店が次々と出てくるが、ともあれこうやって今夜実際に訪れた店ではじっくりと酒と肴を味わいたものである。あともう少し、この程よい人込みの中で酔いを味わうことにしよう。

文/仲田しんじ

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