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人は選択肢が多いほど個人主義になるってホント?

2021.10.23

 ここにタイ料理屋もできるとすればこの駅の半径100メートル以内でたいていのメニューは食べられそうだ。タイ料理にはパクチーがつきものだが、好き嫌いが分かれるこのパクチーを人々は問題なく食べられるだろうか。

パクチーのことを考えながら府中駅界隈を歩く

 所用で東京都・府中市を訪れ、帰路に少し駅の周辺を散策することにした。今にも完全に日が暮れそうで、弱い雨も降っているがこんな機会もなかなかないので周囲をぐるっと一周してみたい。京王線府中駅周辺は再開発が進んでいて足元も良く、駅ビルと隣接したビルを繋ぐ高架の部分も所々にあり雨に当たりにくくなっている。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 それにしても界隈のビルの1階は飲食店だらけである。日が暮れてきたこともあり、そうした店の灯りが余計に目立つ。府中駅に来たのは久しぶりだが、この界隈だけ見ればすっかりグルメタウンの様相を呈している。少し歩いた後にはどこかの店に入って何か食べてから電車に乗って帰ろうと思う。

 ビルの1階の広いフロアに何店もの飲食店が並んで入っているエリアもある。そば屋や串揚げ居酒屋、もつ鍋店、イタリアン、立ち食い寿司、韓国焼肉などよりどりみどりだ。近日中にはタイ料理店がオープンするという告知もある。

 駅界隈で飲食店が集まっているのはここだけではなく、駅の中心から半径100メートル以内に限定しても、かなりの数の飲食店が軒を連ねていることになる。よほどマニアックなものでなければ、この一帯でたいていの料理が食べられるのではないだろうか。

 近日オープンするというタイ料理店がどんな店なのか少し気になるのだが、それというのも今、タイ料理やベトナム料理のフォーが何となく食べたい気分でもあったからだ。

 フォーのことが脳裏をよぎると、まず最初にパクチーの風味がよみがえってくる。パクチーについて個人的に信じ難いのは、絶対に食べられないという人がけっこういそうであることだ。パクチーが問題なく食べられる者にとって、考えてもみなかったほどの数の人々がパクチーは絶対に無理だと表明しているようなのである。

 たとえば定期的に訪れているフォーとサンドイッチに特化したベトナム料理店があるのだが、そこでフォーを注文すると店の人が必ずパクチーが大丈夫かどうかを聞いてくるのだ。

 パクチーが食べられないのにタイ料理店やベトナム料理店にやって来てフォーを注文する人がいることにやや驚きを禁じ得ないが、毎回確認してくるということは、やはりパクチーを入れないで欲しいというリクエストが一定の割合であるということなのだろう。

 にわかには信じられないことではあるが、まぁ、それもひとつの“偏見”だ。好き嫌いの問題のほかにも、アレルギーなどの体質的なケースもあるのかもしれない。信じられないからといって、そこにあるさまざまな理由を無視することはできないのだろう。牛丼店で「ネギ抜き」を注文する人も少数だがいるという話も聞く。

 しかしひとつ言えることは、パクチーやネギを抜く選択肢があること自体は有意義なことである。パクチーが嫌いでもフォーが食べられるというのはある意味で素晴らしいことだ。

 そんなことを考えているとますますタイやベトナムの料理が食べたくなってしまったが、今はそれにこだわらなくでもいいだろう。そろそろ散歩を終えてどこかの店に入ることにしよう。

※画像はイメージです(筆者撮影)

選択肢が多いほど個人主義が強まる

 外食であれば店が対応するかどうかの問題にはなるが、自然の権利としてパクチーが嫌いでもフォーを食べる権利はあるし、玉ネギが嫌いでも牛丼を食べる権利があるのは当然である。店が対応しないのであれば自分でそうした料理を作ったり、誰かに作らせて食べればいいだけの話でもある。

 そして場合によってはもっときめ細かく利用者のリクエストに応えてくれるケースもある。

 たとえば一部のラーメン店などでは、スープの味の濃さから「こってり度」、ニンニクの有無と量、ネギの有無と量、チャーシューの有無、麺の硬さなどに加えて各種のトッピングなど、微に入り細に入った注文フォームでお客の要望に応えている。また某サンドイッチチェーンでは注文時にお客がパンの種類から野菜の量やトッピング、ドレッシングなどを選ぶことが前提となっている。もちろんピーマンを抜いたりすることもできる。

 こうしたことが面倒だという声も聞くのだが、選択肢が用意されていること自体は“親切”であるのだろう。面倒であればすべて「ふつう」や「基本」を選べばよいだけのことである。そしてこうした選択肢が確保されているということは、食べたいように食べるという我々の“健全な個人主義”をサポートするものにもなっていそうだ。最新の研究でも我々はこうした幅広い選択肢が提供されることを通じて、“健全な個人主義”を強めていることが報告されている。


 さまざまな選択肢を持つことは、経済発展のプラスの結果として広く解釈されていますが、この選択肢の急増は、個人の精神、さらには社会全体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

(研究チームの)マダン氏はこの選択の顕著性だけで個人のエンパワーメントを含むさまざまな強力な心理的能力の効果をどのように持つことができるかを示しています。

「選択することを考えるだけで、人々はより自立し、自分の利益についてより関心を抱くようになります。それは人々をより個人主義的にします」

※「Virginia Tech」より引用


 米・バージニア工科大学の研究チームが2021年7月に「PNAS」で発表した研究では、選択肢が多い状態と個人主義とのポジティブな関係を4つの研究によって浮き彫りにしている。我々は選択肢が多く与えられているほど、“健全な個人主義”が強まる傾向があるということだ。

 アメリカ、シンガポール、インドの計1288人から収集したデータを分析した結果、選択肢が潤沢に与えられた環境では、文化に関係なく、人々は自分自身を独立していると考えるようになり、差別や偏見に立ち向かい、より積極的になり個人主義が強まることが示された。これはその個人にさまざまなプラスの効果をもたらす可能性をはらむという。

 ある調査によると、平均的なアメリカ人は朝に何を食べるか、何を着ていくかなどの些末な意思決定を含めて毎日約3万5000の決定を下しているという。そして過去30年間で、平均的なスーパーマーケットの商品数は平均約9000から約4万7000に増加しているということだ。

 我々の日常はまさに選択と意思決定の連続なのだが、研究によればそれは個人にとって悪いことではないという。選択肢に囲まれて意思決定を行うことで独立心が育まれ“健全な個人主義”が培われていくというのである。フォーからパクチーを抜き、牛丼やラーメンからネギを抜くという選択肢が増えていくことで、我々は自分を独立した存在であると感じ、生活が充実することになる。

多すぎる選択肢の中から四川料理店を選ぶ

 あまりゆっくりもしていられない。駅ビルの隣のビルも1階がレストラン街になっているようだ。入ってみよう。

 ビル入口の壁にある施設案内を見るとなんと2階と3階にも飲食店があるようだ。うどん、そば、ラーメン、ステーキ、天丼、海鮮丼に回転寿司、四川料理やカレーやとんかつなど、ここもよりどりみどりである。飲食店の大半は1階にあるみたいだが、3階までの店を含めると30軒近くあるようだ。とりあえず1階を回ってみよう。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 それにしてもなんという選択肢の多さだ。隣の駅ビルの飲食店も候補に入れるとすればさらに凄い数になる。しかもその駅ビルの2階にもいくつかの飲食店があるのだ。

 どの店に入ったらいいのか本当に迷うところだが、こうした状況に直面してみれば確かに主体的にならざるを得ない。カフェや居酒屋は今は除外するにしても、大半の店は入ってみるのにやぶさかではない。とりあえず店の感じを見てみてから“健全な個人主義”を発揮して決めなければならない。

 こうした場合、サイコロを持っていれば簡単に決められそうだし、たとえば今この瞬間に腕時計を見てデジタル表示の秒針の数字で決めるという手もないわけではない。しかしそうして決めた店に入ってあまりいい思いを感じなかった場合、後悔がより強いものになりそうだ。

 海鮮丼の店にもなかなか魅かれるものがあったのだが、とりあえず1階の店はすべて見てみようと思う。

 たこ焼き店はテイクアウト専門店のようで順番待ちの列ができていた。この店は中では食べられないので施設案内の飲食店には含まれていないようだ。長崎ちゃんぽんの某チェーン店にも食指は動いたが、今ここで食べなくとも新宿や池袋でも食べられるので候補からは外れる。

 その隣にある四川料理の店はあまり見たことのない店舗だった。ここは良さそうだ。お客もそこそこ入っている。ここにしよう。

 テーブル席に案内されると、分厚いメニューが置いてあった。麻婆豆腐や担々麺、炒飯や餃子など一通りの料理があり、豚足やエビチリやよだれ鶏、各種の炒め物などかなりのレパートリーである。麻婆カレー麺というこの店オリジナルのメニューもアピールされている。

 迷った挙句に入った店で、今度は何を頼むのか迷うことになってしまった。しかし定食メニューがあるのを見つけると、その迷いは8つに絞られた。別にここで晩酌をするわけでもない。昼食兼夕食をかき込んで腹を満たすだけである。定食メニューの中から「イカと鶏肉辛口炒め」を注文する。

 今回のコロナ禍で外食産業はどこも大変なことになっていると思われるが、いよいよこれからが巻き返しということだろうか。個人的にも当然、夜の飲食店でアルコールを注文することが増えることは間違いない。今はノンアルにしておくのだが。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 さっそく料理がやってきた。美味しそうだが思った以上のボリュームだ。しかもライスとスープはおかわり無料ということだ。やや濃い味つけだが激辛ではない。イカと鶏肉に加えてピーマン玉ネギもたっぷり入っていて、確かにご飯がすすむタイプの料理である。美味しい。

 こうして幅広い選択肢の中から店を選び、その中で選んだメニューは自分でも納得のいく食体験になるということだろう。今回は“アタリ”であり“成功”だったといえるが、もし“ハズレ”だったとしてもこのプロセスを踏んでのことであれば後悔は少ない。

 自分本位の外食は確かに個人主義の色合いが濃い行為だが、それはあくまでも“健全な個人主義”である。与えられた選択肢を吟味しながら今後も外食を楽しんでいきたいものだ。

文/仲田しんじ

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