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「冷や飯人事」に遭った人が将来、社長に就任する可能性はあるのか?

2021.10.07

■連載/あるあるビジネス処方箋

報道によると、自民党の役員人事や組閣人事で首相が総裁選で競い合った議員に冷や飯を食わせる処遇を行ったという。「冷や飯人事」と言えば、ある男性を思い起こす。今回は、その人を紹介したい。

男性は現在、創業60年を超える社員数百人の会社(出版業)で社長をする。2年半前に就任した。2000年から2010年までは課長で、課長数十人の中では反主流の立場にいた。他の課長は部下が5~8人いるが、男性は2人。この約10年間は「飼い殺し」に近い状態で、大きな仕事は課内でほとんどなかった。顔色は悪く、覇気がなく、暗い雰囲気を漂わせる。

2000年以前は、中核の部署で編集長(課長)として15人ほどの編集者を束ねていた。1990年代に自らが編集者として関わった本が大幅に売れた。半世紀を超える社史の中でたったひとりの快挙と言われる。だからなのか、プライドが高い。40歳前後の時に20歳上の担当役員と激しくぶつかった。これを機に役職を解かれ、冷や飯を食わされるようになる。

一時期、私はこの会社から仕事を請け負っていた。男性とも何度か話をした。お酒を2人で飲んだこともある。誠実で、ひたむきな性格に見えた。だが、人間関係処理能力には課題が多い気もした。

ところが、10数年経つと、500人前後の社員のトップに立った。なぜ、こんな逆転劇が可能になったのか。当然のごとく、前の社長たちが推したからなのだろうが、人事のあり方も影響を与えていると思う。私の観察にもとづく要因を挙げよう。

まず、社員の離職率が高いことは見逃せない。30年以上にわたり、ほぼ毎年、新卒採用試験を行い、1年で数名が入社。3年間で約10人になるが、30歳までにほぼ全員が辞める。35歳まで残るのは約10人のうち、1~2人。40代になると、ほとんどが管理職になる。役員になるのも、倍率からすると難しくはない。冷や飯を食う立場になったとしても、主流に戻ることは可能だ。

リストラを繰り返してきた歴史もある。20年間で数回行い、40~50代の社員(管理職と一般職)15~20人を退職させた。男性の同世代の社員が大量にいなくなり、リベンジができる環境が一段と整っていたとも言える。

頻繁な組織改革と人事異動があることも大きい。「新体制」と称して組織改革を繰り返してきた。約20年で5回ほどに及ぶ。その都度、500人のうち200人が対象になるくらいの配置転換を行った。この規模の経営刷新を行うと、状況に素早く適応し、高い業績を残す優秀な人材とそうでない人の差が明確になる。管理職の数はもともと少ないがゆえに、優れた人はどんどんと際立つ。

社外にも目を向けてみよう。この業界は市場や環境の変化に鈍く、1960~80年代型のビジネスモデルや仕事の仕方が今なお浸透している。それを変えようとする機運は、業界や社内にほとんどない。この会社は従来どおりの方法で業績はある程度、維持できている。古い体質のままだから、他の業界から優秀な人が転職してくる可能性が低く、強力なライバルが現れにくい。

男性の仕事へのひたむきな姿勢も書きそえておきたい。冷や飯を食わされていた頃、本業に関する分野の知識を獲得する努力を怠らなかった。その知識をまとめて、2冊の専門書を書いたほどだ。これほどの知識は、仕事に好影響を与えていたに違いない。前述した通り、誠実な人でもあった。真摯に仕事に取組み、内に秘めた闘志をもっているかに見えた。

男性は数少ない中での競争に勝ち、社長の座をつかんだとも言える。地味ながらコツコツと実績を積み、信用を取り戻した。冷や飯を食わせたと言われる役員たちは、はるか前に退任している。社長に就任したこの2年半は、社員10人前後に聞く限りでは評判がいい。「社内が明るくなった」「イントラを使い、説明を繰り返すからわかりやすい」。こういう声を聞くと、覇気がなかった2000年~2010年の頃を思い起こし、会社の人事の怖さをあらためて思い知る。

読者諸氏の職場で冷や飯を食わされている人はいるだろうか。みじめに見えるかもしれないが、もしかするとその人が20年後に社長になっているかもしれない。会社の人事はつくづくわからないのだ。

文/吉田典史

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