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W杯カタール大会出場を大きく左右する10月の2連戦、森保一監督は〝理想の上司〟になれるか?

2021.10.07


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2連戦を前に厳しい表情を浮かべる森保監督(写真提供=日本サッカー協会)

酷暑のジェッダでサウジアラビアとの第一関門を乗り切れるか?

「今回の10月の2連戦というのは、僕たちにとって『この2試合で(2022年カタールワールドカップ行きが)決まる』と言っても過言ではないくらい大事な試合。サウジアラビアとオーストラリアとの直接対決で勝つこと自体、6ポイント分の価値がある」

8月末に名門・アーセナルの一員になった冨安健洋が語気を強めたように、日本時間82時開始のサウジアラビア戦(ジェッダ)と12日のオーストラリア戦(埼玉)は日本代表の命運を左右する天王山。92日のアジア最終予選初戦・オマーン戦(吹田)を落としている以上、ここで2連勝しなければ、本大会切符を自動的に得られる2位以内確保が遠のくのは間違いない。

最悪の事態をも回避しようと、森保一監督とコーチングスタッフは先週末の2日にいち早く現地入り。選手たちも欧州組中心に3日から続々と敵地に乗り込み、最高気温37度・最低気温27度という酷暑の地で環境適応に努めてきた。

すでに10度前後まで気温が下がっている英国在住の南野拓実(リバプール)や古橋亨梧(セルティック)らにしてみれば過酷に違いないが、彼らがフル稼働できる状態かどうかを指揮官にはしっかりと見極めてもらうしかない。

「主力固定」になりがちな森保采配への懸念


絶対的主力と位置付けられる長友佑都と大迫勇也(写真提供=日本サッカー協会)

しかしながら、森保監督は以前から「主力固定」の傾向が顕著。そこはチームにとって1つのネックと見られてきた。

就任当初からの選手起用を振り返ると、守備陣はGK権田修一(清水)と酒井宏樹(浦和)、冨安、吉田麻也(サンプドリア)、長友佑都(FC東京)の最終ラインを基本的に固定。重要局面では5人の力に頼ってきた。

ボランチにしても、2018年ロシアW16強戦士の柴崎岳(レガネス)に絶対的信頼を寄せ、昨季ドイツ・ブンデスリーガ1部でデュエル王に輝いた遠藤航(シュツットガルト)とのコンビに重点を置いている。2列目は状況によって変化させるケースもあるが、絶対的1トップ・大迫勇也(神戸)も不動。それは2019年アジアカップ(UAE))から一貫している。大迫が負傷離脱した時だけは浅野拓磨(ボーフム)やオナイウ阿道(トゥールーズ)ら別の人材を抜擢しているが、「イザという時は大迫」という姿勢は崩していない。だからこそ「大迫依存症」は長年の課題と目されてきたのだ。

「計算できる人材を使い倒したい」という安定志向は今夏の東京五輪でも見られた。日本は全6試合を戦い、4位に甘んじたが、オーバーエージの酒井、吉田、遠藤を出場停止などアクシデントが起きない限り、とことんまで起用し続けた。その結果、疲労困憊の遠藤がラストの3位決定戦・メキシコ戦で2失点に絡むという信じがたいミスを犯した。攻撃陣にしても久保建英(マジョルカ)と堂安律(PSV)の二枚看板を絶対視し、彼らの決定力に頼り続けてきたが、2人が封じられた後はゴールが奪えなくなった。結局、最低ノルマと言われたメダル獲得を逃すことになったのである。

「石橋を叩いて渡る」というリーダーは一般社会にも多い

このような戦いぶりを見て、監督交代を提言するメディアやサポーターも日に日に増えている。9月のオマーン戦敗戦後にも解任論が噴出。日本サッカー協会の田嶋幸三会長が「信頼が揺らぐことはない」と火消し発言をしたものの、まだまだ火種がくすぶっているのは確かだ。最終予選の今後の展開次第では何が起きるか分からない。

森保監督は「石橋を叩いて渡る」タイプのマネージメントを好み、過去3年間実践してきたが、似たような例は一般社会でもよく見られる。「伸び盛りでやる気満々の若者が何人かいたとしても、組織をまとめる側としては計算できる経験豊富な面々に責任ある仕事を任せた方が確実」と考える経営者や管理職が多いからだ。となると、若者のやる気が削がれ、人材が育たず、組織も沈滞した空気が流れるという悪循環に陥る可能性が高い。「経験者を立てつつも、若い人材を伸ばしながら使う」というのは、どんな組織でも難しいテーマに他ならないのだ。


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4日のジェッダ初練習で指示を与える森保監督(写真提供=日本サッカー協会)

果たして森保監督は現時点で「理想の上司」なのか。この先、周囲が認める最高のトップになれるのか。それを測る指標として参考にしたいのが、東京都千代田区の総合人材サービス企業・ランスタッド株式会社の研究機関である「ランスタッド・リサーチインスティテュート(RRI)」の調査だ。

同社が2018年に行った「理想の上司と職場環境に関する調査」を見てみると、2069歳の一般企業勤務のビジネスパーソンが「理想の上司像」として上げたのは、①人として尊敬できる、②決断力がある、③視野が広い、④マネージメント能力に秀でている、⑤感情的でなく論理的であるが上位5位を占めていたのだ。

森保監督は「人として信頼できる」の第一条件はクリアしているのだが

この5条件を森保監督に照らし合わせてみると、①の人として尊敬できるに関しては、多くの選手や関係者が認めている。

2018年夏の就任時。彼は吉田、長友、槙野智章(浦和)らロシア組11人に電話をかけ「こういうビジョンがあるから力を貸してくれ」と打診。歩み寄りの姿勢を鮮明にした。その思いを受け取った選手たちも「この人のために頑張ろう」と決意を固め、3年という時間を積み重ねてきた。

当時のメンバーである青山敏弘(広島)や槙野らはすでに代表から遠ざかっているものの、現主力勢との絆は依然として強固だ。その1人である柴崎はコロナ禍とスペイン2部での戦いに配慮して、202011月から約1年間代表招集を見送られてきたが、最終予選に入って「キミが必要だ」と呼び戻された。その大きな期待に応えようという気持ちは、9月の中国戦(ドーハ)のパフォーマンスからも色濃く感じられた。

11人との対話というのは、ベテラン、若手問わず、森保監督が非常に大切にしている点。久保や冨安、堂安のような20歳そこそこの若手ともコミュニケーションを欠かさない。選手と密な意思疎通を重ねることで、「森保さんは人として尊敬できる」と多くの人間が感じるような関係性は生まれている。その基盤があるからこそ、オマーン戦に敗れた今もチーム一枚岩となって最終予選に挑み続けていられるのだ。

⑤の感情的でなく論理的という点も、敗戦後のメディア対応などから感じられる部分。2002年日韓W杯を率いたフィリップ・トルシエ監督やロシアW杯前に電撃解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ監督(現モロッコ代表)のように批判を浴びるや否や、逆ギレするような指揮官も過去にはいたから、森保監督の冷静さと潔さは際立つ。「自分の采配やチームの戦い方を反省し、分析して、前向きに改善していこう」という真摯な姿勢も好意的に受け止めていいだろう。


オナイウ阿道(右)や田中碧(右
2人目)、浅野拓磨(同3人目)のようなフレッシュな人材抜擢はあるのか(写真提供=日本サッカー協会)

「決断力」の課題を克服し、「理想の上司」へ飛躍を!

けれども、②の決断力、③の視野の広さ、④のマネージメント能力3条件はやや物足りなさが見て取れる。とりわけ②の決断力に関しては、懸念材料が少なくない。メンバーを思い切って何人か入れ替えたり、新戦力をごぼう抜きで起用したり、斬新なフォーメーションを採用するといった大胆さが欠けているように映るからだ。「システムを変えた方がいいといったことは監督とも話している」と遠藤航はコメントしていたが、そういう意見をすぐに取り入れない頑固さも森保監督の足かせになっているのかもしれない。

エキセントリックなフランス人として知られたトルシエは中村俊輔(横浜FC)や小野伸二(札幌)を352の左ワイドに抜擢するなどの斬新な采配が光ったし、ハリルホジッチ監督もロシアW杯切符を獲得した20178月のオーストラリア戦(埼玉)で山口蛍(神戸)と井手口陽介(G大阪)の守備的な2人をインサイドハーフに並べるという驚きの布陣を採った。「今、いい選手は迷わず使う」という思い切りのよさを示すことで、チームの流れが何度もガラリと変わった。そういう大胆さ、修正能力、試合中のアレンジ力というのは森保監督の課題。追い込まれた時ほど、視野の広さ、マネージメント能力も問われてくるのだ。

そんなハードルをサウジアラビア・オーストラリアとの天王山で越えられれば、「理想の上司」の評価を得られ、チームもカタールW杯に大きく近づくのは間違いない。が、逆に失敗すれば、失職という最悪の結果も起こり得る。「つねに天国と地獄のはざまで揺れ動く」という意味では、一般社会の経営者や管理職より厳しい立場に立たされている指揮官だが、何とか最大の関門を突破してほしい。

W杯ベスト8という悲願達成の道を途絶えさせることだけは絶対に許されない。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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