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50周年を祝う記念展開催中!今、読むべき漫画家・諸星大二郎が放つ唯一無二の魅力

2021.10.03

『妖怪ハンター 』 カラー原画 1998年
©諸星大二郎

人は、諸星大二郎にハマるか、ハマらないかで二つに分けられる。

……いきなり断定形を使う安いテクニックで気をひくつもり?、と思われそうだが、これは本当にそう思っていることだ。

要するに、なんだかよくわからないもの、言葉に出来ない奇妙な感覚、いわゆる「ワンダー(驚異、不可思議)」。

そういうものにどうしようもなく心惹かれるか、そうでないのか、というのは思った以上にはっきりと分かれるものなのだと感じる。

もちろんそのどちらが正しいというわけではないけど、楽しめるのなら楽しんでほしいという想いで、この原稿を書いている。

というわけで「諸星大二郎」である。

モロボシではなく、モロホシである。

誰にも真似できない唯一無二の絵柄、現実から異界へと一気に跳躍する奇想、画業50周年を迎えた孤高の漫画家。

現在、その50thアニバーサリーを祝う記念展が全国を巡回していて、三鷹駅からほど近い「三鷹美術ギャラリー」に異界への扉がぽっかりと口を開けて旅人を待っている。

そんな記念すべきタイミングに諸星先生の作品について書く、ということだが、書きはじめてこれが実に荷が重い。

モロホシ漫画の存在は、自分にとって大きすぎたのだ。締め切りを過ぎてもちっとも書き進まないのが、そのたしかな証拠だ。

書きたいことが多過ぎるが、その全てを書くには文字数も足りないので、本稿では「今、読むべき諸星大二郎入門ガイド」という形でギュッとお届けしたい。

受肉する奇想、『暗黒神話』

「諸星作品で一作」となると、どうしてもこれを外すことができない。

いわゆる同業者に人気のあるミュージシャンを「ミュージシャンズミュージシャン」と呼ぶが、諸星先生もまたクリエイターから絶大な支持を集める「クリエイターズクリエイター」でもあり、特にこの作品の影響を語る後進は枚挙にいとまない。

わずか6週の連載期間で発表されたこの漫画は、それほどの衝撃を持って迎えられたのだ。

1976年より『週刊少年ジャンプ』に連載された(諸星先生がジャンプに連載していたと言うと驚かれるが、初期の代表作はジャンプ連載)、古代史を巡る壮大なミステリー漫画『暗黒神話』。

古墳の壁画、馬頭観音、スサノオ石像、馬頭星雲……、各領域に点々と存在するまったく関係がないはずの「馬」にまつわるキーワードたちが、クライマックスでついに結合し、一つの巨大な肉体のようにうねり出し神話的領域へと突入していく様は、空前絶後の一言。

本来なら、こんな縦横無尽な越境を見せつけられたら、読者は「こ…、こんなの絵空事だっ」と認識してはじき出されてしまうはずなのだが、これを見事にまとめあげ、読者を巻き込んだままStationからStationへ飛躍を繰り返す様は、まさにDAVID BOWIEの『Station to Station』で歌われる「Magical Movement(魔法的移動)」と言ったところ。

この「絵空事を受肉させる力」こそが、他の追随を許さない諸星作品の神話的なパワーだ。

『暗黒神話』は、単行本1冊にまとまっている点、2017年には加筆された『完全版』も発売されている点から、ハードルの低さも含めて諸星世界入門に最高の一作。

『暗黒神話』より「天の章」本文原画 1976年
©諸星大二郎

となりのモロホシくん、『栞と紙魚子』シリーズ

諸星作品もう一つの魅力は、そうした奇想から繋がった異界が、隣町で実際に起きた事件のような実感と平温感を持って読者に肉薄してくるところだ。

そんな「となりのモロホシワールド」を最も楽しめる作品が、『栞と紙魚子』シリーズだろう。

このシリーズは、言ってみれば「諸星流・日常系」。

「胃の頭町」を舞台に、そこに暮らす人々の暮らしと、日常の中で起こる奇妙な出来事を描いたコメディ作品といった趣で、少女ホラー漫画誌『ネムキ』に掲載されたという意味でも諸星作品の中で異色作に位置する。

この漫画の特徴的なところは、胃の頭町を襲う多種多様な怪異の方にはない。

じゃあどこにあるのかというと、むしろそれを受容する町民たちの方にあるのだ。

例えば、第一話。町のゴミ捨て場で生首を見つけてしまった主人公の女子高生・栞。

ここから血も凍るようなホラー展開がはじまりそうなシチュエーションだが、胃の頭町ではそんなことは起こらない。

なんとこの栞、好奇心に負け、生首を拾って帰宅、友人の紙魚子が持ってきた「生首を飼う方法」という本を参考に、生首の飼育を始めるのだ。キ…、キミの方が怖いよ!

そう、とにかく胃の頭町の人々は、怪異に対する耐性値が異常に高く、「ちょっとコンビニ行ってきます」感覚で異界へ出向き、「そういうことあるよね」と日常に戻っていく。

ついには、外部からやってくる怪異たちよりも、住人たちの方がぶっ飛んでいるという逆転現象が起きてしまう。

この奇妙だが心地よい湯加減が、じんわりと脳を溶かしていき、読者はいつ間にか胃の頭町の住人になってしまうのだ。

シリーズものだが1話完結なので、気軽に読めるのもオススメポイント高い。アニメ化希望。

『栞と紙魚子 』 カラー原画 2015年
©諸星大二郎

さらに潜れ!モロホシフローチャート

上記の二作をオススメしたところで、次はモロホシ漫画のどんな要素があなたの琴線に触れたかによって、オススメする作品を変えていきたい。

諸星先生は、『西遊妖猿伝』の長期連載を除いては基本的に短編を散発的に発表する作家で、シリーズ作品が様々な単行本に散らばって収録されていたり、一部重複した傑作選がたくさん出ていたりする。

諸星大二郎『西遊妖猿伝 』 カラー原画 1998年
©諸星大二郎

お目当の作品を探そうと思うと少し混乱するかもしれないので、こちらを参考にモロホシ探報してもらえたら幸いだ。(ちなみに、最終的にはどうせ全部揃えたくなると予言しておく)

まず『暗黒神話』を構成する実在の遺跡や遺物をフックとした伝記ミステリー路線が気に入ったなら、間違いなく『妖怪ハンター』シリーズを読んでほしい。

「異端の考古学者」稗田礼二郎を語り部に、各地に残る遺跡や伝承が示す異世界への繋がりを検証し暴き出していく、諸星先生の代表作の一つ。

こちらは諸星作品の中でも特に人気が高く、40年以上にわたって断続的に新作が発表されているため作品数も多いが、まずは電子書籍でも入手でき名作揃いの『妖怪ハンター 地の巻』あたりから。

ちなみに、こちらを原作として超進化した映画、塚本晋也監督『ヒルコ / 妖怪ハンター』もオススメ。原作とは似ても似つかぬ映画だけど、最高なんです。稗田礼二郎を演じるのは、ジュリーこと沢田研二さん。

さらに、『暗黒神話』の壮大な神話的世界に惹かれたのなら『海神記』『巨人譚』といった神々の息吹を感じさせる大作を、民俗学から連なるスーパーナチュラルな土着的世界観を求めるなら『マッドメン』を。

『マッドメン』より「変身の森」扉絵原画 1981年
©諸星大二郎

そして、『暗黒神話』的なアプローチの直接的な次作である『孔子暗黒伝』も忘れずにチェックしてもらいたい。諸星先生は、前述の『西遊妖猿伝』や、『諸怪志異』など中国を舞台とした作品も多数発表しているので、こちらの路線を掘り下げるのも良い。

『栞と紙魚子』のような現実と隣り合わせの異界を覗き見たいなら短編集『ぼくとフリオと校庭で』がオススメ。傑作エピソード多数、エヴァの元ネタと言われる巨人も出てくるぞ。

また、独特の乾いたユーモアとペーソスを求めるなら『遠い国から』シリーズの不思議な世界観に触れてみてほしい。こちらは『夢みる機械』という単行本がオススメだが、入手しやすい『遠い世界』という傑作選にも収録されているのでそちらでも。

では、良きモロホシライフを。もし、モロホシ世界に引き込まれたのなら、きっとあなたとも胃の頭町で会えるでしょう。

by (楽曲のタイトルに二度も諸星作品を引用させていただいたミュージシャン)タカハシヒョウリ

デビュー50周年記念 諸星大二郎展 異界への扉

・会期:10月10日(日)まで
・会場:三鷹市美術ギャラリー
・開館時間:10:00~20:00(入館は19:30まで)
・休館日:毎週月曜日
・観覧料:一般600円、65歳以上・学生(大・高)300円 ※中学生以下および障害者手帳等をお持ちの方は無料
・詳細ページ:https://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/event/20210807/

・会期:10月23日(土)~12月26日(日)
・会場:足利市立美術館
・開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
・休館日:毎週月曜日、11月4日(火)、11月24日(金)
・観覧料:一般710円(560円)、高校・大学生500円(400円)、中学生以下無料
・詳細ページ:https://www.pref.tochigi.lg.jp/culture/event/1134.html

文/タカハシヒョウリ
ミュージシャン、文筆家、作家。特撮ファン。
ロックバンド「オワリカラ」ボーカルギター。
サブカルチャーへの造詣と偏愛的な語り口から、執筆や番組出演多数。
近年は円谷プロ公式メディアでも連載。
クリエイティブチーム「操演と機電」を結成し、10月には『ウルトラ怪獣もののけ絵巻展』を開催。

編集/福アニー

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