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コロナ禍でも快進撃を続ける日本酒D2CブランドスタートアップWAKAZEが海外進出で成功した理由

2021.10.02

「フランスで大変じゃなかったことを探すのが大変」そう言って笑うのは、「日本酒を世界酒に」をビジョンに掲げ、日本酒D2Cブランドを展開するスタートアップWAKAZE代表取締役の稲川琢磨氏だ。近隣住民からの反対や、設備不良、コロナウイルスによるロックダウンなどの苦境を乗り越え、フランスを中心にヨーロッパや北米など怒涛の勢いで事業を拡大している。今年6月には総額3億3000万円の資金調達を実施するなどその勢いはとどまることを知らない。

日本酒をつくるというお酒の仕事をするようになったのか?

10年ほど前にフランスに留学してたんですが、日本といえば寿司とラーメンしか知らない人ばかり。日本の文化や物づくりの素晴らしさを伝えていきたいという思いがありました。祖父が起業しているので、会社を起こすって大変そうだけど面白そうだなって漠然とあって、どこかのタイミングで起業するだろうなと思っていましたし、海外で勝負したい気持ちもありました。

卒業後はボストン・コンサルティング・グループに入社しました。その年の冬にたまたま入ったお寿司屋さんで、すごく美味しいお酒に出会ったんです。それまでは日本酒はあまり美味しくないものだと思っていたのですが、これだったらフランスで事業を起こせるかもしれないと思いました。

日本のメディアでは、海外では日本酒ブームだと言われているけど、実際はブームなんて全然来てなくて(笑)。徐々に浸透はしてきているけど、日本食レストランでも美味しい日本酒を出すところが少なくて、「アルコール度数の高い美味しくないお酒」と思っている人が多い。ちゃんと飲んで美味しいと分かってもらえれば変えられる部分だし、そのギャップがチャンスだと思いました。日本人として、凄く高みを見せるとしたらその領域なんだろうなと。

そこから酒蔵の息子である、WAKAZEの共同創業者の今井と出会って、彼が酒を造って、僕が酒を売るってことで、何かフランスで出来ないかなという話をし始めました。コンサルの仕事をしながら週末起業のような形で、今井の実家で酒を造ってもらって、クラウドファンディングを試してみたりとか。ノルウェーでお酒造りをやっている人に会いに行ったりとか。そういうのをやりながら、創業に踏み切るかは一年間かけて判断しました。あとは、人生の一定の時間を使って、他の人の人生も巻き込みながらやっていくことなので、消えない情熱みたいなのを保ち続けられるのか?というところを「この仲間だったらやっていけるな」と思えたのがすごく大きいです。

初めての酒づくりは順調でしたか?

【山形県の酒造で】

最初は閑古鳥が鳴くような感じで難しかったですね。今みたいにネットでお酒が売れるという環境ではなかったので、その時の飲酒機会もすごく少なかった。あとは、いわゆる委託醸造やると普通のお酒よりも高くなっちゃうんで、すごく売りづらかった。商品に対しても、差別化が出来ているかっていってもそういうわけではなかったので、そういうところがすごく苦しんだ部分ですね。

その後、山形に単身移住したのをきっかけに、山形の酒蔵さんでお酒造りをしてもらうことになりました。洋食とペアリングできる日本酒をコンセプトに、ワイン樽で寝かしたお酒「ORBIA」をリリースしたんですけど、その時のクオリティは正直「あ!イケるな」って思えました。こういうシーンで飲んでもらおうとか、それこそ輸出の文脈も含めて、星付きのレストランとか、パリや香港の有名レストランとかターゲットをすごく明確にして。品質はもちろんのこと、差別化もできいていて、かつ市場になかったので、これだったら!と思って売り出したのは覚えています。

2019年、創業から3年でフランス進出されていますが、文化も違えば設備や気候など醸造環境が異なる場所で苦労が多かったのでは。

【パリの醸造所は住宅地の中】

一番印象に残っているのが、蔵の立ち上げの時に近隣住民からすごく反対されたことです。一億円くらいかけて蔵を立ち上げて、設備も結構出来上がっていたんですが、工事で生じる音で近隣の方から反感をかってしまったみたいで。住宅地なので、どこぞの知らないアジア人が突然来て、工場をつくろうとしているぞと噂になってしまって、市から、「この蔵は営業出来ません」と言われてしまいました。

それからは毎日市役所に通いました。僕の子供が生まれるタイミングだったので、「このプロジェクト上手くいかなかったら大変なんです」だったり、「スタッフ全員が人生背負ってやっているんです」と。まずは話だけでも聞いてくれと一か月通いつづけて、ようやく話を聞いてくれるようになりました。その後、近隣住民20人を集めて、市長が近隣住民をなだめながら、僕がフランス語で蔵の説明や質疑に対応しました書面で回答したり、蔵に見学に来てもらったり、とにかく懇切丁寧な対応をし続けて、やっと理解を得られて。最終的には営業してOKとなりましたが、最初に営業停止を言われた時は目の前真っ暗になりましたね。

近隣住民の方の「WAKAZE」の反応はいかがでしたか?

「すごく美味しい!」と言ってくれましたね。そこはプロダクトの力で信頼を得られたのかもしれません。それが食品じゃなかったら反対され続けていたかもしれませんね。お酒が人の輪を繋ぐじゃないですけど、理解が得られやすかったっというのはあったかもしれない。オープン後も定期的にうちのお酒は振舞っています。社員BBQをやる時は「BBQの匂いが出るかもしれないけどごめんね」ってお酒持ってたり。一番怒っていたおばあさんも、お酒を届けて、定期的にコミュニケーションをとっていたら、気が付いたらうちのお酒を勝手に持っていて、営業してくれるようになったりとか(笑)。今はすごく仲良くなっています。

【WAKAZE代表取締役の稲川琢磨氏】

他にも、電気工事が一年遅れたせいで冷却器が一年くらい使えなかったし、フランスに来てから大変じゃなかったことを探す方が難しいですね。ようやく2020年2月に1本目の酒の発売までこぎつけて、メディアでも取り上げてもらって、ミシュランの星つきホテルや飲食店50店舗に商品をいれてもらいました。「さーいくぞ!」ってなった瞬間に、その翌月にいきなりロックダウン。フランス側は売上が殆どなくなるっていう状態です(笑)。営業停止まではいかなかったんですけど、造る意味がないって状態まで追い込まれまれました。

そこで思いっきりデジタルにシフトさせたんです。逆にそうでないと生き残れなかったんですよね。デジタルをちゃんとやってきた会社ではなかったのですが、メンバーがみんなすごく前向きで。卸はなくなっちゃたけど、デジタルを勉強して頑張ると言ってくれて。そこでついてきてくれた感謝はすごくありますし、そのおかげで結果的には業績も想定されたラインに乗ることが出来ました。それが3.3億円の資金調達に繋がりましたし、そういった意味ではいい機会だったかなと思います。

リピート率もすごく高く、約40%の人が3ヶ月に1回リピートしてくれる状態です。それも1回当たり3本買うのが平均的な本数。そうすると1か月に1本飲んでいるということですよね。やっぱり1回買ってもらうのは簡単なんですが、そこから2回目、3回目と買ってくれるかどうかというのがプロダクトに対する信頼だと思うので、そこは今出来ている部分かなと思います。

なぜ「WAKAZE」はフランスを中心にヨーロッパで受け入れられたのでしょうか?

日本でもようやくESG投資が叫ばれるようになってきましたが、ヨーロッパだとサスティナビリティやエコロジーなど、そういう文脈がすごく大事。ういう中で、うちの場合は、米も日本から持ってこずに現地の米を使っているんです。ヨーロッパ内で造ってることによって、フットプリント、つまりものを作るための資源を抑えられる。ものをあまり運ばない。地産地消っていう文脈がコンセプトとしてすごく刺さっていて、「メイドインフランス」をうたえる部分がすごく共感を呼んでいると思います。

もう一つが、究極のローカライズですよね。フランス現地の原材料でフランス現地で造ることで、手に取りやすい価格で提供できています。今まではこっちだと日本酒が1本50〜60ユーロだったものが、20ユーロで提供できています。3分の1ほどの価格です。お酒の味わいについても、現地で受け入れられるものを僕らはつくることができていると思います。僕たち、めちゃくちゃヒアリングをやるんですよね。例えばパリに出て行って、数十人の方にヒアリングをして、それを全部分析しまとめて、味を再設計するチューニングの機会を定期的に設けています。

【WAKAZEメンバー】

来月からイギリスに進出することが決まっていますし、北米からの問い合わせも増えています。今度入るイタリア人のメンバーも、イタリアで蔵を立ち上げたいって人なんですが、色んな国から「自分で蔵を立ち上げたい」という人が蔵を見に来るんです。そういう人たちが各国に蔵を立ち上げて、多様性のあるお酒のマーケットがフランスを中心に出来上がってくると面白いなと思っています。新しい市場をつくって、その市場を10倍、100倍と伸ばしていくというのが僕らのやるべきことだと思っています。

【取材協力】
株式会社WAKAZE 代表取締役CEO 稲川 琢磨さん

取材・文 / Kikka

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