
コロナ禍で多くのコミュニケーションがオンラインにシフトした。そんな中、チャットやメールなど、テキストコミュニケーションが増えている。しかし、テキストコミュニケーションは、冷たくなりがちで誤解を生みやすいといった問題がある。そこで今回は、テキストコミュニケーションのデメリットを埋めるための対策やワザを有識者に聞いた。
文字だけのコミュニケーションのデメリットを埋める解決策
社内や社外の関係者とのチャットやメールなどの文字だけのコミュニケーションには、さまざまなデメリットがある。ニュアンスが正確に伝わりにくかったり、冷たい印象や攻撃的な印象になりやすかったり、気持ちや本意が伝わりにくかったりすることでミスコミュニケーションが生まれることもある。
これらの対策にはどんなことがあるだろうか。
今回話を聞いたのは、オンラインアウトソーシングサービス等を手がける株式会社ニットの西出裕貴氏だ。社内のオンライン自走型コミュニティを運営する、オンラインコミュニケーションに詳しい。日頃から、どのように人々のオンラインテキストコミュニケーションを作り、自身も実行しているのか。
文字だけのコミュニケーションにおける主なデメリットについて、解決策を西出氏に聞いた。
【取材協力】
西出裕貴氏
社内において、オンラインでの自走型コミュニティの運営を担当し、コミュニティノウハウを活用したカスタマーサクセスや組織活性の戦略から実行まで従事。メンバーが主体となって1年間で42のオンラインコミュニティがたちあがるなど、400名のリモートワーカーをつなぐ自走型コミュニティの立上げ・運営に取り組む。また生産性向上やテレワークの研修設計・講師も実施を担う。
https://knit-inc.com/
1.ニュアンスが正確に伝わりにくい
「ニュアンスが正確に伝わりにくいのを避けるためには、テキストコミュニケーションとオンラインで会話するのを使い分けること。どうしてもテキストコミュニケーションしかできないという場合は、書き方を調整しましょう。具体的には『結論、背景、お願い』の順番に分かりやすく書くこと。受け取り手の、内容の習熟度と関係性によって、丁寧に書くかどうかも決めるのをおすすめします」
2.冷たい印象や攻撃的な印象になりやすい
「冷たさや攻撃的なのを避けるには、さまざまな対策があります。まず絵文字や『!』、チャットのリアクション機能などを使うこと。また、『カモ』の法則というものがあります。これは相手に何かを指摘するときほど、最後に、『カモ』付けること。そうすることで、柔らかい印象になります。例えば、『この分析データ、間違ってます』→『この分析データ、間違ってるかも』などです。
また、結論だけを書かないというのもおすすめです。決定事項だけだと、冷たく感じるためです。背景や想い、考えた経緯などをきちんと書くこと。相手への配慮の気持ちが大事です。
叱ったり、ネガティブな情報などは、口頭で伝えるようにします。グループチャットでは絶対に書かないこと。チャットで書くと、想像以上に冷たい印象になったり、みんなにも大公開になるケースもあるためです」
3.気持ちや本意が伝わりにくい
「感情の言葉を意図的に入れましょう。例えば『すごい!』『ありがとう!』『わー、助かる!』また、意図的に褒めることもおすすめです。例えば、『すごいですね!』『天才!』『勉強になります!』など。本音で話す感を出すのも有効です。例えば、『実は、…』『正直、…』などです」
テキストコミュニケーションの一工夫で関係性がよくなったエピソード
実際、上記のようなテキストコミュニケーションを工夫したことで、関係性がよくなったエピソードがあるという。
1.「ぶっちゃけ…」という相談が来るようになった
「『1回も会ったことがないんですけど…』『西出さんにしか言わないんですけど…』といったような内密な相談がくるようになりました。個別チャットで励まし続けることで勇気が湧いてきたようで、グループチャットでも活き活きとできるようになっていって、評価もアップ。関係性は良好になりました」
2.みんなの前で褒めてメンバーのモチベーションアップ
「褒めるときに、みんなの前で全力で褒めています。すると、メンバーのモチベーションがグッと上がります。絵文字を使えば、口頭で伝えるよりもむしろ感情表現は、より豊かにすることができます」
テキストコミュニケーションの失敗を防ぐコツ
テキストコミュニケーションは、今後も続いていくだろう。そこで、テキストコミュニケーションで関係が失敗している人や、改善したい人に向けて、コツをアドバイスしてもらった。
1.良いことはテキスト、悪いことは口頭
「先ほどもお伝えしましたが、良いことはテキストで伝えても良いですが、悪いことは口頭で伝えることです。これは鉄則です。悪いことをテキストで書くと、言われたほうはズシンときます。やはり相手への配慮が重要です」
2.丁寧に書く
「テキストが丁寧であるだけで、心理的安全性が各段に違ってきます。相手への配慮のある内容を入れたり、相手が気軽に質問しやすい内容にします。そして関係性によって、相手によって、書き方・ボリュームを変えましょう。関係性ない人ほど、丁寧に書く。背景や想い、仕事の進め方など、きちんと明記したほうが良いですね」
3.読み間違い・とらえ間違いはするものという前提で
「こちらがどれだけ丁寧に書いていても、相手は読み間違いやとらえ間違いはするものです。その前提でコミュニケーションを取り、間違いがあれば、丁寧に書き直すなどしましょう」
4.ビジネスチャットでは積極的に反応することから
「ビジネスチャット等でコミュニケーションを取るときに、コミュニケーションを活発にしたいと思っても、何からはじめたら良いか分からない、という場合は、まず、積極的に反応しましょう。グループチャットなどでメッセージを送ったはいいが、誰からもリアクションがない場合は、とても悲しいものです。自分から積極的にリアクションを取っていくことでそのうちコミュニケーションが活性化していくでしょう」
今後も、テキストコミュニケーションは必要性が高い状況は変わらないだろう。そのデメリットをしっかりと意識しながら、工夫をしていくことが重要だ。ぜひヒントにしてみよう。
取材・文/石原亜香利
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