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クレーマーを自社のファンへ!プロが指南する「悪質クレーマー」の対処法

2021.09.19

最近、「カスタマーハラスメント」という言葉をよく耳にする。顧客・取引先から受ける嫌がらせや、不当な要求、過度なクレームのことを指す。

株式会社エス・ピー・ネットワークが実施した「カスタマーハラスメント(カスハラ)」についての実態調査では、コロナ禍に関係なくカスタマーハラスメントは増加傾向にあるという。程度の差こそあれ、顧客からの問い合わせに戸惑う人が多いようだ。

そこで、電話によるカスタマーサービスを長年経験してきたクレーム対応コンサルタントに、モンスター客やクレーマーなどにどのように対応したしてきたのか、そのテクニックについて聞いた。

注意すべき「カスタマーハラスメント」の基準

大手旅行会社のお客様相談室で、長年に渡って電話やメールなどで寄せられる顧客の意見や要望に対応してきた益田麻実氏。現在、クレーム対応コンサルタントとして研修や講演活動を行っている。

益田氏は、これまで経験してきた中で、カスタマーハラスメントと呼ばれるものを受けたことはあるのだろうか?

【取材協力】

益田麻実氏
大手旅行会社で「顧客満足度向上」をミッションとしたお客様相談室に在籍して3000件超のクレーム対応に携わる。現在はクレーム対応コンサルタントとして企業研修や講演、メディア出演などを中心に活動している。
http://nega-posi.com/

「悪質クレーマーに対処した経験は何度もありますが、カスタマーハラスメントと呼ばれるケースは記憶にありません。それは、私が常にお客さまのお申し出を真摯に受け止めてきたため、ときに暴言を吐かれてもそれを『嫌がらせ』とは認識しなかったからだと思います。善良なお客さまでも、ひどくお腹立ちであれば、つい無茶な要求や強い言葉を投げつけてしまわれることもあるのだと知っておくことはプロフェッショナルな姿勢を保つ助けになります。

昨今では、クレーム対応において自身が不快を感じるとすぐに『カスハラだ!』と安易に決めつける傾向が多いと憂えています。クレーム対応には『未熟な対応はお客さまのご意見をクレームに変え、クレームを言いがかりに変えてしまう』ということわざがあります。不快なことをすべてハラスメントと結論づける前に、お客さまの声にしっかり耳を傾け信頼を取り戻すためのクレーム対応ができているかどうかを自省するべきだと考えます。

会社を代表して、誠意ある姿勢で理性的に対応しているにも関わらず、不当な要求を執拗に繰り返されるようであれば、そこで初めてハラスメントの兆候を懸念してもいいのではないでしょうか」

カスタマーハラスメントと即座に決めつけるのは、プロとして、またお客様への対応として気をつけたほうがよさそうだ。

最悪の「モンスター客」対応のエピソード

(画像はイメージ)

ところで、これまで益田氏が経験してきた「これは最悪だった」というモンスター客はどんな相手だったのか。またどのように対処したのか、その方法を教えてもらった。

「私がクレーム対応コンサルタントして独立起業してから10年近く経ちますが、今でも忘れられないケースがいくつかあります。その中でも特に鮮やかに思い出されるA氏のケースをご紹介します」

●クレームの内容

「私が勤務していた会社のB支店が、ある学会の大会事務局運営を担当することになりました。大会当日の会場で、A氏の参加費の事前振込記録が確認できなかったため、受付担当者が当日の現金払いを案内したところ、A氏が『振り込んだはずだ!』と激高しました。A氏は30分近く受付担当者を罵倒し続けた後、『埒が明かないので受付を担っているB支店の責任者と話をしたい』と申し入れ、すぐにB支店に足を運ばれ、支店長と副支店長を相手に一時間以上にわたってご自分の主張を繰り返し続けました。また、その間も学会の大会責任者に電話して、同じ主張を強い調子で申し入れました」

●対応方法

「解決の糸口が見つからず、ほとほと困り果てたB支店の支店長から私に相談連絡があったのは、受付時のクレーム発生から数時間が過ぎた頃でした。

私の対応ポイントは以下の通りです。

1.まず、今後の対応窓口はすべて益田に集約するよう関係者に徹底しました。もし支店や学会にA氏から電話連絡があった場合は『貴方さまの対応はすべてお客さま相談室の益田が担当します。何かおっしゃりたいことがあれば、益田までご連絡ください。それでは失礼いたします』と丁寧な口調で伝え、質疑応答には応じず電話を切るよう指示しました。

これは『あっちではああ言われた、こっちではこう言われた』と指摘された場合に、発言内容や状況確認をする時間がかかるのを予防するための対策です。特に愉快犯の場合、企業側を事実確認に走らせ、言った言わないの責任の追及などで収拾がつかなくなることを楽しむために混乱を招くような行為にでます」

2.受付や支店でA氏は何度も『いま現金払いしたとして、もし後で「やっぱり振り込んであった」とわかったらどう責任をとるんだ』とおっしゃっていたと報告を受けていました。

私がA氏に電話対応したときも同じお申し出をされたので『後になって振込記録が確認できた場合には、可及的速やかに返金手続きをいたします。その上でご不快な思いをさせてしまったことを重々お詫び申し上げます』とお答えしました。『事前振込みと当日支払いと、一時的にでも二重払いを強制したことの責任はどう考えるんだ』と重ねてのご質問をいただいたので、『二重払いを確認した時点で、責任をもって可能な限り迅速に返金させていただきます』と原則論をお答えしました。

それでもまだ『もしこうならどうする?』の投げかけがあったので、『仮定のご質問にはお答えいたしかねます。ケースバイケースで、その都度の対応を検討してまいります』とお答えしました。

お客さまからの仮定の質問は、お答えできるところはお答えすれば誠意ある対応となりますが、すべてに返答するのは難しい場面があります。その場合は『仮定のご質問にはお答えできかねます。ケースバイケースで対応してまいります』とお伝えすればよいと思います。

半日以上にわたって対応した私との電話が終話した直後、A氏はお客さま相談室に改めて電話をかけてこられ、『お前のところの益田ってやつに、「たいしたもんだ」と俺が言っていたと伝えとけ』と一方的におっしゃって電話を切られたというオチがつきました。

後日、A氏は参加費を振り込んでいなかったことが確定したことも付け加えておきます」

悪質なクレーマーか善良な客かを判断する方法

今回の事例のようなモンスターとまでいかなくとも、クレーマーという存在がいるといわれる。そうしたクレーマーに対して、どのように対応するのかのマニュアルはあるのだろうか。どのような流れで対応するのかを聞いた。

「クレームとは本来、『お客さまが被った損害や不利益に対する正当な要求』を指します。損害や不利益が発生していないのであれば、それはお客さまの主観的な不平不満から生じる苦情、つまりコンプレインに当たります。

日本では対応に困る人を『クレーマー』とひとまとめにしがちですが、その申し出内容は客観的事実に基づいて自身が被った損害に対する正当な要求なのか、それとも主観的な思い込みから生じた文句なのか、はたまた悪意ある言いがかりなのかを正しく判断しないと、対応を誤り、企業ブランドを損ねる結果となりかねません。

しかしながら、序盤対応ではクレームなのかコンプレインなのか、悪質な言いがかりなのかは判断できません。善良なお客さまでも感情が高ぶれば暴言を吐いたり無茶な要求をしたりする瞬間があるからです」

●善良なお客と悪質な人物を判断するには

「善良なお客さまなのか、それとも悪質な人間なのかを判断するには、まずは私が提唱する『お客さまの信頼を取り戻すクレーム対応』のプロセスに沿って対応する必要があります。

1.序盤対応でお客さまの心を開き、
2.中盤対応でお客さまの主訴を聴きとり、
3.終盤対応で企業が提示する解決策にYESと言っていただくためのノウハウを駆使して円満解決を目指します。

どんなに感情的にこじれたハードクレームだとしても、善良なお客さまであれば、ほどほどのところで解決します。ところが、円満解決など求めていない悪質な輩は執拗に無理難題をふっかけ、不当要求を押し通そうとします。

『このラインを越えたら悪質クレーマーとみなす』という基準を組織としてお持ちになることをおすすめします。基準の例として、企業に混乱を招くことを目的とした複数部署への申し出、本題から離れて次々に変わる申し出内容、コンプライアンス的に不可能な特別待遇の要求、マスコミに言うSNSで公開するなど異常な頻度の強弁、自己責任を棚に上げ企業責任を執拗に追及するなどがあります」

●悪質クレーマーとみなしたら

「相手を『悪質クレーマー』とみなしたのであれば、健全な企業としては対応ではなく排除しなくてはなりません。『お客さまを排除していいの?』と驚かれるかもしれませんが、悪質クレーマーはお客さまではありません。要求が異常値を示す不当要求行為者であり、日常業務に支障をきたす業務妨害行為者であるという共通認識が必要です」

1.決別宣言をする

「悪質クレーマーを排除するにあたって無視という手段を選ぶのは愚策です。『無視された!』と企業対応の無礼失礼を執拗に責め立てる材料を与えることになるからです。無視するのではなく、正面から最終通告をしてください。『これ以上は対応いたしかねます』と決別宣言するのです。私は実際に『すでにご提案申し上げた解決策でご了承いただけないのであれば、私どもといたしましてはこの先のお話はできかねます』という文言を使っていました。他にも何パターンかあるのですが、シンプルな一例をご紹介いたしました」

2.窓口を一本化する

「宣言後は対応窓口を一本化します。輩が社内のどこに申し立てても、『この件は〇〇が担当ですので、そちらにお申し出ください』と全社で統一対応します」

3.恥をかかせない

「忘れないでいただきたいのは、悪質クレーマー相手でも『恥をかかせない』こと。顔や声の表情でマウントをとった感を出すと、相手を無駄に逆上させてしまいます。目的は相手を凹ませることではなく、被害を最小限にケースクローズすることです」

4.悪質クレーマーを育てないノウハウの習得も必要

「安易な金品対応で悪質クレーマーを育てない・増殖させないという、組織全体での強い決意が求められます。その勇気ある決意を行動に移すには、実践的で具体的なノウハウの習得が欠かせません。ぜひ体系的に学ぶ機会を設けていただきたいと思います」

クレーム対応でファン化したストーリー

通常、受けるクレームといえば、クレーマーではない善良な顧客からのものが多いだろう。適切な対応したことで、そのお客がすっかり自社のファンになったというケースは多いという。益田氏は次のように話す。

「『二度と貴社を利用しない覚悟で電話をしたけど、益田さんに話を聴いてもらって良かった。益田さんがいる会社だから、これからも利用します。ありがとう』と、最後は感謝で終話したケースは何度もあります。

中でも、毛筆でしたためられた達筆の御礼状と高価な菓子折りを私宛に送ってくださったお客さまが忘れられません。いまだにそのお手紙は大事に保管しています」

●お申し出内容

海外旅行の帰りの飛行機にデジカメを置き忘れてしまった。今回の旅行以外にも思い出深い画像がいっぱい入っている。なんとか取り戻したくて、旅行を申し込んだ店舗に相談に行った。「忘れ物をして…」と言いかけた瞬間、「お金がかかります」と言葉をかぶせるように言われた。こちらの困った状況に耳を傾けるより先にお金の話をするのかとびっくりした。ずいぶんと情け知らずな対応に力が抜け、相談する気が失せた。そちらでは、こういう対応があたりまえなのか知りたい。

●背景

接客担当者はなぜこのような対応をしたのか。

過去、忘れ物の調査確認や取り寄せ手配は無償で行っていたが、負担増しに伴い、各種サービスの有償化が実装された。しかし店舗によって手数料を収受したり収受しなかったりと対応のバラツキや手数料の取り忘れが多発。これを問題視した本社は、各店舗に対し「手数料を明示しているサービスについては必ず手数料を収受すること」と厳しく指導していたため、接客現場では「手数料の収受漏れがあってはならない」という追い詰められ感から、お客さまの心情に配慮するより先に、忘れないうちに手数料のことを口に出してしまった。

●益田氏の対応

「航空会社に忘れ物の確認をしたところ、デジカメが見つかったので着払いでお客さま宅へ発送するよう依頼しました。

該当店舗にお客さま対応について事実確認をし、店舗側の状況に理解を示しつつ、お客さまの心情を伝えてCS向上について啓蒙をうながしました。

お客さまに連絡し、忘れ物が見つかったことと発送手配が完了したこと、到着予定日と伝票番号をお伝えしました。あわせて、店舗の失礼をお詫びし、店舗側の状況を説明し、今回の根本原因が本社の責任であるとお詫びしました。また、お客さまが今後も気持ちよくご利用いただけるよう該当店舗を指導したので、気が向いたらぜひまたご利用いただきたいとお願い申し上げました」

「お客さまと終話後、該当店舗へ対応結果を報告し、今後のお客さまフォローを指示しました。

解決の指針:
・お客さまの心情への共感
・社内事情の説明
・企業ルールの押しつけをお詫び
・社員個人ではなく企業の責任
・客観的問題(忘れ物)の迅速な解決
・ご指摘への感謝
・該当支店へのフォローアップ指示

受電からトータル2時間程度で上記対応を完了したと記憶しています。クレーム対応においては『迅速かどうか』は信頼回復の大きなアドバンテージになるので、このケースは特にお客さまに感動を与えたのではないかと考えます」

顧客のクレームは、顧客の心情理解や対応手順などの適切な対応をすることで、顧客を魅了することもできる。「カスハラ」だと即断する前に、自身の見極め力と対応力を培っておくほうが得策といえそうだ。

【参考】
株式会社エス・ピー・ネットワーク「カスタマーハラスメント実態調査(2021年)」

取材・文/石原亜香利

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